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【自伝小説】最南端の空手フリムン伝説

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フリムンという言葉は沖縄の方言で、バカ・愚か者という意味で使われる。この物語は、日本最南端の石垣島に生まれ、後に全日本空手道選手権大会を制する田福雄市氏の空手人生、そしてフリムン…
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2023年10月の記事一覧

【自伝小説】第1話 幼少時代(1) |最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島  

【自伝小説】第1話 幼少時代(1) |最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島  

空手フリムンとは?

フリムンという言葉は沖縄の方言で、バカ・愚か者という意味で使われる。この物語は、日本最南端の石垣島に生まれ、後に全日本空手道選手権大会を制する田福雄市氏の空手人生、そしてフリムンな半生(または反省)を描いたノンフィクション作品である。
(記:月刊まーる編集部)

序章

 巨木がひしめく森で視界を遮られ、天を仰いだその視線の先から僅かに覗く星空に思いを馳せる。そんな表現が適切

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【自伝小説】第1話 幼少時代(2) |最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島

【自伝小説】第1話 幼少時代(2) |最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島

RAIN

その日は突然やってきた。

その日、仕事は休みであったが、働き者だった父は残った仕事を片付けたいと、祖母が止めるのも聞かずに一人で職場へ向かったのだという。

生憎その日は雨だった。

仕方なく雨ガッパに身を包み、木材を切断する仕事に没頭していた父。そんな作業中、運悪くその雨ガッパが機械に挟まり、そのまま巻き込まれてしまったという。休日のため周囲には誰も居らず、助けも呼べずただ悪戯に時

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【自伝小説】第2話 小学校時代(1) |最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島

【自伝小説】第2話 小学校時代(1) |最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島

屋根より高い鯉のぼり

 毎年5月5日(こどもの日)になると思い出すことがある。少年が、まだ低学年の頃の話しである。

祖父がなけなしの給料をはたいて買ってきた小さな鯉のぼり。それを門柱に縛り付け、少年に誇らしげに見せていた時の事である。

貧しかった我が家に、まさか鯉のぼりが泳ぐ日が来るとは夢にも思わなかった少年は、心の底から大喜び。祖父の腰に手を回し、歓喜した。

祖父もさぞやご満悦だったこと

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【自伝小説】第2話 小学校時代(2) |最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島

【自伝小説】第2話 小学校時代(2) |最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島

血ぃーごーごー事件

 突然、辺り一面に悲鳴がこだました。そこは某小学校のグラウンド。少年野球チーム、「武蔵」の本拠地だった。まだ5年生ながら、そのチームのキャプテンを務めていた少年。

その日は練習日ではなかったが、気の合う仲間たちと休日を楽しんでいた時に事件は起きた。

 当時、その学校のバックネットは、4m程の角材に緑色の網を縛り付けただけの即席ネットであった。そんな弱々しいバックネットに、

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【目撃談】第2.2.1話 血ぃーごーごー事件の目撃談|そのとき私は空手フリムンを目撃した!|by 花屋・福木屋@石垣島

【目撃談】第2.2.1話 血ぃーごーごー事件の目撃談|そのとき私は空手フリムンを目撃した!|by 花屋・福木屋@石垣島

本編は下記バナーから読めます

血ぃーごーごー事件の目撃談

ごーごー事件!やはり自伝に加えられるべき出来事だったか。あの光景、惨状は死ぬまで頭から離れないだろうな…。

爺さんに理不尽に怒られている雄市があまりにも不憫だった。

爺さんの剣幕に自分も震えあがっていたので、血ミドロの雄市が自転車で帰る姿は薄目を開けて見るのが精一杯だった。

砂利道をヨタヨタしながらだんだん小さくなっていく後ろ姿は

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