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メカコレ Vol.1 「ランダー&レインジャー」(映画”インターステラー”より)

はい、こんにちは。今日は記念すべき第1回目のメカコレシリーズという事で。このシリーズでは、映画やアニメ、ドラマや小説に登場をしたメカについて話します。記念すべき第1回目は、映画「インターステラー (2014)」に登場をした、「ランダー」と「レインジャー」についてです。「インターステラー」に関連して、この作品の監督であるクリストファー・ノーランについての特集もあるので、そちらも伏せてお読み下さい。

https://note.com/martyyamazaki114/m/md37b97030072

さて、ランダー、レインジャー?何ぞや?という人達。

この2つの宇宙船です。

ランダー

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レインジャー

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両機はNASAによって製造された、恒星船「エンデュアランス」を母船とするSSTO(Single-Stage-To-Orbit=単段式宇宙輸送機)つまり、単独で宇宙に行けてしまう宇宙船です。

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ドーナツ型の恒星船「エンデュアランス」にくっつく、「ランダー」と「レインジャー」(真ん中辺り注目)

どちらの宇宙船のデザインもとても洗練されており、単に宇宙を旅させる目的で使用されたのはめちゃくちゃ勿体無いくらいなんですが、(21世紀のSF映画に登場をした宇宙船の中でトップクラスにカッコいいです。)今回はこれらの宇宙船の名前、デザイン、特徴、その他諸々について頑張って語ります。まずはランダーから。

ランダー

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名前の由来は恐らく、かつてのアポロ計画で使用された月着陸船の英語名、"Lander"でしょう。本来であれば、着陸船の総称を「ランダー」というのですが、今回の場合、月着陸船のことを指していると考えて良いかもしれません。

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月着陸船

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月着陸船は、劇中にも模型として登場をしています。

デザインの特徴として、その従来の宇宙船らしくない、平面を基調とするシルエットから、ノーランが度々過去作でもその作品を登場させているミース・ファン・デル・ローエフランク・ロイド・ライトの影響を受けている可能性が高いです。ミース・ファン・デル・ローエとは、近代建築の三大巨匠の1人と呼ばれるドイツ出身の建築家。フランク・ロイド・ライトはアメリカ出身の同じく近代建築の三大巨匠の建築家の1人です。ノーランは自身を映画監督ではなかったら建築家になりたかったと認めるほどの人物。「インターステラー 」のみならず、彼の映画にはモノや建物のデザインへのこだわりが垣間見えます。(この辺に関しては、「クリストファー・ノーラン学:建築」で詳しく話す予定です。)

以下、ご本人のコメント。

“The only job that was ever of interest to me other than filmmaking is architecture,”

出典:Carolina A. Miranda (2018). How Christopher Nolan used architecture to alienating effect in ‘The Dark Knight’ from LA Times https://www.latimes.com/entertainment/arts/miranda/la-et-cam-architecture-of-dark-knight-20180823-htmlstory.html

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ノーランの過去作、「ダークナイト (2008)」に登場をしたシカゴにあるAMAプラザ(旧IBM ビルディング)。設計はミース・ファン・デル・ローエによって行われました。

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同じくノーランの過去作「インセプション (2010)」の冒頭には、フランク・ロイド・ライトがデザインをした”バレルチェア”が登場をしています。

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バレルチェア

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特徴的なミニマルなデザインは、「インターステラー 」に同じく登場したCASEやTARSといったロボットのデザインにも、インスピレーションの1つとして影響を与えているかもしれません。

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ちなみにCASEやTARSの元ネタは、「2001年宇宙の旅 (1968)」に登場をした、「モノリス」とも言われています。

劇中にてランダーは主に資材などを運ぶ輸送船として利用をされているのですが、そのゴツい風貌や用途、着陸脚無しで着陸出来る堅牢性(上から二つの写真参照)は、どこかロシアや共産圏の兵器を思わせます(あくまで例えです)。実際、ノーラン作品の常連である、プロダクションデザイナーのネイサン・クロウリーはランダーを「ヘビーなロシアのヘリコプター」と比較をしたらしいです。

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また、船体には宇宙空間における姿勢制御用のRCS (Reaction Control System→プシュプシュ煙が出るやつ。)が搭載されており、翼が無いにも関わらず飛行を出来ている事や、大気圏を堂々と単独離脱してしまっているかなりのハイパーメカです。まじでコイツとレインジャーが活躍する宇宙戦記モノを観たい。

レインジャー

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薄い!カッコいいですね。ランダーと違ってスマートなデザインです。劇中冒頭では、主人公のクーパー(演:マシュー・マコノヒー)がテストパイロットとなって試験飛行をしていました。「スターウォーズ」に登場する宇宙船、「ミレニアム・ファルコン」のような、まさに「ヒーローシップ」といった印象を受けます。

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ミレニアム・ファルコン

名前の由来は恐らく、ランダーと同じく、月探査計画の「レインジャー計画」からのレインジャー号でしょう。本当に月が大好きなんですね。

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レインジャー探査機ブロック1

ノーラン氏、好きが高じたのか、劇中でレインジャーが地球を離れる時は、「アポロ計画」で使用されたサターンV型ロケットの先端にくっついて飛び立ってます。未来なのに、1960年代の化石レベルの技術を使ってるし、そもそも単独で大気圏離脱出来るんだからそんなロケットいらないのに。

でも、カッコいいからいいんです。

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サターンV型ロケット

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(この状態からどのように分離して、母船であるエンデュアランスにドッキングしたのかは正直謎です。)

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デザインは、スポーツカーのようなボディに、現在のスペースシャトルの白と黒を基調とするカラーリング、そして耐熱材などを足したような感じですね。

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ランダーと同じく、しっかりRCSの穴が付いています。

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機体に付いている大気圏内での機体制御に使う(と思われる)”翼”らしき物の後ろには、太陽光パネルが付いています。

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前部にある横一本の隙間は、吸気口ですかね?

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ランダーとは違い、着陸脚が付いています。

内装はランダー、レインジャー共にサポートロボットでもあるCASEやTARSが操縦士と副操縦士の間にマウント出来るようになっています。この、ロボットが宇宙船と合体するというのは、「スターウォーズ」シリーズのアストロメクドロイドがファイターと接続出来る事へのオマージュでしょうか。

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                  "WHoaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa" by R2-D2

とまあ、二つの宇宙船について簡単に書いてきた訳ですが、一つ、大きな疑問があります。相対性理論や、ウラシマ効果ペンローズ過程など、かなり硬派なSF考証を取り入れている事で有名な「インターステラー」ですが、ランダーやレインジャー、エンデュアランスの飛行メカニズムに関しては一切明かされていません。「重力を自由に操る事が出来ない」世界のはずですから、反重力装置が開発されている訳でもなさそうですし、船体の半分以上が居住可能スペースとなっている船に、どのレベルのエンジンが搭載されているのかも分かりません。ましてや、翼らしきものが殆ど見受けられないデザインで、どうやって揚力を稼いでいるのかも疑問ですし、揚力でも反重力でもなかったら、どうやって飛行をしているのかめちゃくちゃ疑問です。しかし、ノーランは、ある面では徹底したリアルを追求しつつも、ある面であえて到底実現は出来ないであろう、架空のファンタジーを入れる事で「映画らしさ」の実現を可能にしているんだと思います。今ある物の延長線上の物を登場させることは、現実感は感じられますが、それは必ずしも映画には必要ないものです。その塩梅を理解しているからこそ、ノーランは評価されているのかもしれません。と、信じる事にします。

次回は同じく「インターステラー 」から、「エンデュアランス」について書きます。



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