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2023年5月3日(水)

 全く雲のない五月晴れを、布団に寝ころびながら見ている。ひんやりとそよぐ薫風が、熱った頭を撫でてくれる。つい穏やかな気持ちになって、何か物でも書くかとパソコンに向かう。

 この4月からのおよそ1ヶ月間、ちゃんと自分のパソコンに向かうことがなかったと気づく。落ち着いた穏やかな気持ちで、自分の好きな事に向き合っていなかったと気づく。それくらい、新社会人にとってのこの一ヶ月は、緊張と勉強と忙しなさの連続だった。おかげで体調を少し崩している。

 入社して3日間は、社会人としてのマナーを学んだ。思いの外規律が多い。そして常に相手のことを思いやっている。自分は常に下から出なくてはならない。いかにも日本的だと感じた。つまりは日本人らしいことを、さらにフォーマルにやれ、ということだ。何も悪いことではない。でも海外ではどうなんだろう、と少し思ったりもした。

 それからあとは、技術研修三昧だ。職種がエンジニアなので、プログラミング言語やITについての基本的な知識を幅広く学ぶ。ほとんど知識のない状態の僕としては、理解するまでに相当頭を使った。同期や講師の方に解説してもらい、ようやく理解しては覚える、ということを朝から晩までほぼ毎日繰り返した。受験勉強再来、という感じである。

 休日は午前中に勉強をして、午後は友達と飲んだり、卒業したサークルの新歓に顔を出したりした。帰りが終電になったり、気分が良くなって徹夜したり、誰かの家に行くこともあった。自己責任ではあるが、休めていない。なんだかずっと睡眠不足だった。今考えれば、楽しかったのだからそれでいいのだ。もしも明日死ぬとしたら、いい気持ちで逝きたいものだ。

 そんなこんなで、ゴールデンウィーク一日目、僕は体調を崩している。本当はしゃっきりした頭で午前のうちに勉強や課題をやり、午後は遊ぶ予定だった。メリハリのあるゴールデンウィークを、と思っていたが、どうもそうはいかないようである。

 少なくとも今日は、頭も体もぼんやりしているから、勉強という感じではない。養生しないといけない。喉は痛くないが、鼻が詰まっている。澄んだ初夏の匂いを感じられないのが悲しい。とにかくダラダラしながら、好きなことをする。夜になってもしも楽になったら、できることから少しずつやっていく。それしかない。

 こんなに気持ちのいい日には、外に出たくなる。少しおしゃれして、電車に乗って、好きな人に会いたくなる。公園に行って、映画を見て、酒でも少し飲んで、たっぷり睡眠を取りたくなる。しかしそんなゴールデンウィークは、今のところ叶いそうにない。あ、睡眠くらいは叶うかもしれないが。

 開け放った窓から、また薫風が吹き抜けていく。レコードプレイヤーから流れる「I Shall Be Released」が、青い空に響いて、消えた。


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