丸岡雅弘

フォークシンガー/東京(下北沢と吉祥寺など)を中心に活動しています。エッセイも書きます…

丸岡雅弘

フォークシンガー/東京(下北沢と吉祥寺など)を中心に活動しています。エッセイも書きます。毎日を安寧に、それが祈りです。

最近の記事

きっとここではないどこか

......2024年1月から2月の終わり、きっとここではないどこかにて。 ------------ どこを見ても静止したままの人生だ 冷たい指先に春が滲む ふと見上げた青空に公団住宅 ぼんやりした貘の食べる蒸しパン じわりじわりと染みて大根の色 死ねば皆同じ空の雲 間伸びした青空に慰められる 草臥れた骨を外して三千里 ゴールテープより君を選んだ雲の一筋 強風世界でじっと待っているよ 睡魔は静かに口を湿らせる 寺山修司を見る目が血走る 僕は春のぬる

    • かもしれない、日常

       昨日の夜、解剖学の養老孟司さんがブータンに行く番組を見た。  寝る前になんとなく見ていたのだが、さりげなく出てくる言葉が、妙に心に響いてしまった。  先生曰く、「日常の重要性は、歳を取れば取るほど分かってくる」のだという。「人生ってそんなに大したもんじゃないよ。」  解剖学という大したことをして、『バカの壁』という大した本を書いた人が言うのだから、なんとなく説得力がある。  人生で何かを成し遂げても、富豪になっても、地位や名誉を勝ち取っても、大したもんじゃないのかもし

      • 心地よく生きる

         2023年もあっという間に終わり、2024年がやってきた。今年は年男で本厄の年。どうなっちゃうんだろう。  とは言いつつ、年越しはなんとサウナで迎えてしまった。毎年大晦日には下北沢のARTISTというライブハウスで、演者だけの年越しオープンマイクに参加するのだが、見事に飲み過ぎてしまった。なんとかして都内のサウナに潜り込み、フラフラのまま年をまたぎ、気分が良いままにLINEで新年の挨拶をして寝た。  気づいたら朝7時半。初日の出も見れず、二日酔いのしんどさだけが残った。

        • 2023年5月24日(水)

           休日、昼下がり。  冷たい雨がアスファルトを打ち、神田川は見事に増水していた。飯田橋にある河畔のレストランはさながら、周遊するフェリーの船内を思わせた。  ある人は言った。 「社会に必要とされる人間になりなさい。あなたの価値は、社会にどれだけ貢献するかで決まるのです。責任を持って行動した分だけ、あなたはその対価をもらえます。社会で生きるとは、つまりそういうことなのです。」  僕はその言葉を中央線の中で反芻する。外では東京のビル群が雨に湿っている。着倒してクタクタにな

        きっとここではないどこか

          2023年5月3日(水)

           全く雲のない五月晴れを、布団に寝ころびながら見ている。ひんやりとそよぐ薫風が、熱った頭を撫でてくれる。つい穏やかな気持ちになって、何か物でも書くかとパソコンに向かう。  この4月からのおよそ1ヶ月間、ちゃんと自分のパソコンに向かうことがなかったと気づく。落ち着いた穏やかな気持ちで、自分の好きな事に向き合っていなかったと気づく。それくらい、新社会人にとってのこの一ヶ月は、緊張と勉強と忙しなさの連続だった。おかげで体調を少し崩している。  入社して3日間は、社会人としてのマ

          2023年5月3日(水)

          エイプリル・フール

          どんなに桜が散っても 僕のコップの底には 透き通った砂が沈澱している 光を通してもまだ純粋な きれいな思い出 嘘のない星の砂 新芽が青く萌えて 風は湿度を含み始めて 夜の底まで澄み渡る青空に 僕は立っている それはそれは、きれいな きれいな夢 日の当たる穏やかな場所を 見つける旅 辛いときも、悲しいときも みんないる そばにいる 僕も、そこにいる 春なんて遠い未来だと思っていた 気づけば、薫風が吹き抜けて またひとつ、やさしさを覚えた それはそれは綺麗で、 美しくて、

          エイプリル・フール

          2023年3月13日(月)

           起きるとそこは、友人の車の中だった。  昨日ライブをして、言っちゃあれだがリハーサルから呑んでいたのだが、うまく出来た手応えもあって、つい飲み過ぎてしまった。つい飲み過ぎたというか、僕の体はアルコールを必要としていたので、必然的に飲んでしまった感じはある。僕は馬鹿だ。  観に来てくれた後輩や同期と一緒に、終電も気にしないで飲み直し、人の家に泊まった。しかし春の魔法というのだろうか、彼の家には寝るスペースがなく、仕方なしに車で一晩を明かしたという訳だ。何をやっているのだろ

          2023年3月13日(月)

          劇団ヅッカ#1『祭典:RAKUDA』に寄せる断片

           この熱量、気迫、煩悶する若者の空気感はなんだろう。  世界は鮮やかで、重層的で、示唆に富んでいる。我々は知らないうちに、偶然と必然の網目の中を生かされている。彼らもまた、そのことに気づいている。そして我々は、その「運命」から逃げることはできない。  劇団ズッカによる#1『祭典:RAKUDA』は、観客たる私の心に大きな印象を植えつけた。まさに非常事態としての「ハレ」だった。誰の心にも忘れられない日付、3月11日が終わった深夜1時にこの文章を書いている。  死は誰のそばに

          劇団ヅッカ#1『祭典:RAKUDA』に寄せる断片

          言葉にしてしまうと、その時の繊細な感情が崩れてしまうような、そんな旅もある。旅の意味が理解できた時に、繊細な感情が成仏して、言語化できるようになるのだろう。旅の思い出を咀嚼するために、まだまだ時間が人生の規模で必要な気がする。

          言葉にしてしまうと、その時の繊細な感情が崩れてしまうような、そんな旅もある。旅の意味が理解できた時に、繊細な感情が成仏して、言語化できるようになるのだろう。旅の思い出を咀嚼するために、まだまだ時間が人生の規模で必要な気がする。

          2023年2月27日(月)

           穏やかな春の陽気、気温は14度くらい。  3月にあるゼミ旅行のためにPCR検査をしなければならないのだが、今日は気持ちが乗らなくて降りるべき駅を通り過ぎてしまった。そしてかねてからやりたかった「ぷち旅」を敢行すべく、三軒茶屋へ行った。  本当に気持ちの良い快晴だった。歩くには丁度いい。三軒茶屋から豪徳寺まで、2時間ちょいくらい歩いた。途中史跡や寺社仏閣を巡り、世田谷という土地のディープな歴史を堪能することが出来た。それについては後日レポートしたいと思う。  結局のとこ

          2023年2月27日(月)

          2023年2月26日(日)

           風の強い日、気温は10度くらいで晴れ。  髪の毛を切った。もう少しで聖子ちゃんヘアーにできるな、と思ったけど、それよりスッキリしたい気持ちが勝った。閉塞気味な毎日に風を通す。  僕に足りない感情は、「怒り」だと思った。だからと言ってムカついたことがある訳ではないが、僕は今まで他人の「怒り」の感情を、上手く避けて生きてきた。と言うよりは、「怒り」に対して無関係であろうとしていた。「怒り」はあまりにもストレスフルだからだ。  でも心に牙を持つことは、能動的な生には必要不可

          2023年2月26日(日)

          鎌倉・地獄と極楽の旅 感ずること、思い出すこと(後編)

           鎌倉の旅から数日が経った頃、私は今回の旅行記を書くために、改めて巡った場所に関する情報を検索して集めていた。鎌倉の霊界を巡って、なんだか「夢幻能」みたいだね、などとみんなで話していたことを思い出して、これは書かなければいけないと思っていたが、なかなか繋がりが見えなかったのである。それで調べていたら、こんな記事を見つけた。  それは月影地蔵にまつわる伝説についての記事である。載っていたサイト自体は個人ブログのようで、形式から見ると古い情報のようだ。しかし今回の旅行記を書くに

          鎌倉・地獄と極楽の旅 感ずること、思い出すこと(後編)

          鎌倉・地獄と極楽の旅 感ずること、思い出すこと(前編)

           2023年1月13日午前10時大船駅笠間口、我々の旅はここから始まった。  鎌倉散策と称して、鎌倉の旧跡や伝説を巡り、土地の神と出会う日帰り旅行である。尚、私の尻は2時間の在来線により、すでに痛い。  一行は大学の先生と生徒四人の、いわばゼミの行事である。新年初めての会合でもあり、なかなか楽しみで眠りが浅かった。  挨拶も早々に、まず粟船山常楽寺へ向かうため、バスに乗った。曰く、寺を見た後は歩くので、ここで体力を温存しておこう、とのことである。この時私は軽い気持ちで、

          鎌倉・地獄と極楽の旅 感ずること、思い出すこと(前編)

          点灯式

          眠りの中で讃美歌がきこえた ぼやけた人々の声 今日は季節がひとつ、進むらしい 教室の電灯の中で、詩が書けそうな気がして ペンを持った 重いまぶたには夢のいくつかがあって 体が痺れてくるのは 昨日、良い気になって酒を飲んだから 一緒に飲んだ彼らは悪くない 僕の散文的日常がむくんでいる 讃美歌が止み、教室には教授の声 眼精疲労と、その奥にイルミネーションが光る ただ、僕はまだ見ていないのだが 鼻の奥で冬の匂いがした うすら翳る夕暮れの校舎に 誰もいないことが 本当であ

          生まれた国

          見覚えのない手紙が届いた 文字も名前もない短い手紙が届いた 白んだ空は音も立てず 冬の陽だまりが記憶のページをめくる 味も香りのないコーヒーがひとつ 誰かの後ろ姿が磨りガラスの外に 終わらない夕暮れと空のジョッキーと 煙草の吸い殻と音のないテレビ どこかの土地では涙も枯れて 灰色の国鉄は時代を巡る 荒れ果てた僕の肌の上で 傷だらけの鳩は核の海を啜る 目もない足もない暗闇がやってくる 終わらない夕暮れは僕の頬を殴る 本当にこれで、本当にこれで良いのかと 言われなくても分か

          生まれた国

          深酒

          飲みすぎた、皆様 悪いのは誰のせいでも、ないのです  よろめいて、転んで 幼年ぶりの、擦り傷 痛いと思うわけでもなく 服についた、土を払う 薄曇りの夜空に 疲れた、と言ったきりで 誰の言葉も、忘れてしまった明日が また、戸口を叩く 飲みすぎた、皆様 悪いのは誰のせいでも、ないのです