見出し画像

映画ターミナルのような話①

20〇〇/11/24 深夜。
滞在していたアソークから空港へ向かう。
空港ではいつものように 時間をつぶして搭乗するだけ。


「私も旅慣れたものだわ。フッ…」


自惚れながら気だるく搭乗手続きを済ませると、あとは居心地の良さそうなベンチを探す。

バンコクから北京へ



バンコク~北京~大連~福岡

格安航空券らしい、慌ただしそうなチケットだった。

とにかく酷く疲れていた。
昨日、大失恋をしたばかりだった。

「世界で1番、痛くて恥ずかしい思いをして死ねばいいのに」
昨日までの恋人の裏切りを呪いながら 機内に乗り込むとすぐに眠りについた。

爆睡してる間に早朝の北京に着き、降りてトランスファーのカウンターへ進む。

既に黄色人種の長蛇の列。


チケットを見ると、私の乗り継ぎは小一時間しかない。
間に合わないかもしれない。

一旦、並んで進み具合いをチェックしてみる。
・・・20分。
まったく動かない。


… 絶対、間に合わない。



空港スタッフらしき人を捕まえて事情を説明し、最前列の人に交渉して割り込ませてもらう。(旅の恥はかきすて)

いざ、トランスファーのスタンプもらう時になって私のチケットを見たおじさんが

「あれ?あんたはあっちだよ。あんた一回、ドメスティックで大連だよ」

「えぇぇ? そのままじゃないの? ドメスティックって… 中国入国するの?」

「そうそう、一回、あっちのイミグレーション通って、別のビルから乗って国内移動だよ。」

「えぇー?!」

抜かった…。私としたことが。
旅慣れたとかって自惚れたことを恥じる。

イミグレーションカウンターを見ると、こちらより更に長蛇の列。

(うわぁ。。もう今の時点で30分しかない。。。乗り遅れるね、これ。。。)

また係員に話をし、再度、長い列の横を、「ごめんなすって」と手刀を切りながら人生最高の申し訳ない顔をして、最前列に割り込む。

意外と皆様、物分りがよく「どうぞどうぞ」って譲ってくれた。

入国スタンプを押しながらお兄さんが半笑いで
「あと15分だよ、走れ、あっち!」って。

「わかった!謝謝!!」
ダッシュして指定されたビルへ連絡している電車に飛び乗る。

ハァ… ハァ… 。暑い。
レザージャケットを脱いで腰にまきつける。

… 誰も居ない。
競走馬のような私の荒い息だけが聞こえるロビーに
ポツネン… 。

乗り遅れたのか…?
… いや、あと3分ある。

とにかく「無駄に広い」空港内を走り回って、
やっと係員を発見した。

頭の隅で、第1村人発見!のテロップが入る。

「こ … ここ、どこぉ~~?」チケットをみせて、自分の行き先を告げると、この寒い中、汗だくの女を訝しげに見ながら
「この地下よ」と答えてくれる。

チッ… 地下ァァ……
膝から崩れ落ちそうになるのを踏みとどまり、全力の2段飛ばしで階段を駆け降りた。

滑り込みセーフかと思いきや 着いた先には軽食をとる人や、眠たそうに寝そべる子供が 落ち着いた様子で窓の外を眺めていた。

私がうろちょろ走り回ってる間に 飛行機がディレイしていて、走らずとも十分、間に合っていたのだった。

つづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?