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金魚のゆらぎ

狛犬が鎮座するところを、カワウソのようにも

みえます。台座には獣と彫ってあります。

雲紋のような巻き毛の模様があるところをみる

と、狛犬が台風かなにかで欠けたようにもみえ

ます。

この狛犬は、出雲狛犬と呼ばれていて

今にも飛びかかろうというポーズのため、

「構え獅子」型という狛犬です。

出雲石で作られましたが、この材質はもろい

ため、風化が早いそうです。

狛犬は神社に奉納された空想上の守護獣です。

起源は古代オリエントにまで遡るという説も

あります。インドを経由して中国に伝わり、

遣唐使が仏教とともに伝えたもので、

平安時代後期に日本独特の獅子・狛犬という

形に変わりました。


この狛犬に似た霊獣が、中国の獬豸(かいち)

という空想上の霊獣です。

獬豸は、羊のような一角獣で人目につかない

場所でひっそりと暮らしており、人間の前に

現れることはめったになく、人間の世界で

正義が行われているときにだけ、姿を見せる

そうです。現在の情勢を考えると、当分のとこ

ろ姿を現しそうにありません。


梅雨が明けてすっきりと晴れて、境内には

ときおり風がそよぎます。

古来、東山道・東海道を行き来する人々は

ここで旅の祈りをしたそうです。

金魚のように、鳥居や狛犬、樹木のところを

いく通りも回遊してみました。

狛犬の陽があたるところと影になっているとこ

ろ、樹木のところなどを向きを変えてぐるぐる

と廻ってみました。

回遊式庭園は、飛び石に沿って堅固に定まった

順路で歩きますが、ここでは宇宙の揺らぎの

ように、道を定めずに歩いてみるここちにな

ります。

いにしえから旅人が多く訪れるせいか、境内の

配置には風通しの良さを感じます。


京都では、うっすらと青い、湖のなかを過ご

しているように感じることがありますが、

京都盆地は、数万年前に湖の底に沈んでいた

土地が隆起して出来た台地といわれていること

がわかりました。

水色は、万葉集で「水縹(みはなだ)」と

呼ばれていた色が、今の水色のことだとされて

います。「はなだ」は青の古名です。

湖のような色は、水縹よりは、白藍に近い感じ

です。白藍は、平安時代の延喜式にもみられ

ます。


宝物館には、唐櫃(からびつ)や伊勢海老を

描いた盃などが展示されています。

近くには能の小鍛冶の聖地である合槌稲荷

があります。

ここは刀匠・三条小鍛冶宗近が信仰していた

稲荷の祠堂といわれています。

宗近は平安中期の人で、刀剣を鋳るのに

稲荷山の土を使ったといわれています。

宗近は稲荷大社に祈願し、稲荷明神の化身

である狐とともに、鍛治壇で宝剣を打ったとい

う伝説が小鍛冶として能の演目に残されて

います。

現在でも、これらの演目を上演する際には

関係者による参拝が行われるそうです。









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