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【ネタバレあり】男女のすれ違いで誰も幸せにならない構図は今も70年前も同じじゃんって切なくなった『宗方姉妹 デジタルリマスター版』

【個人的な満足度】

「午前十時の映画祭14」で面白かった順位:6/6
  ストーリー:★★★☆☆
 キャラクター:★★★☆☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆

【作品情報】

   原題:-
  製作年:1950年
  製作国:日本
   配給:新東宝
 上映時間:112分
 ジャンル:ヒューマンドラマ
元ネタなど:小説『宗方姉妹』(1950)
公式サイト:https://asa10.eiga.com/2024/cinema/1325/

【あらすじ】

※公式サイトより引用。
何事にも保守的な節子(田中絹代)は、自由奔放に生きる妹の満里子(高峰秀子)と同居して面倒を見ている。夫・亮助(山村聰)が失業中なので節子はバー勤めをしているが、満里子には皮肉屋の夫に黙って仕えている姉のことが理解できない。

京都にいる父・忠親(笠智衆)が余命いくばくもないと知った節子は、妹にはそのことを伏せ、二人で京都に赴く。そこで節子は初恋の相手であり、今は家具店を営んでいる田代(上原謙)と再会する。

【感想】

※以下、敬称略。
午前十時の映画祭14」にて。1950年の日本映画。世界の小津安二郎が監督した正反対の性格の姉妹のお話です。本人がよければいいのかもしれませんが、「本当にそれで幸せなのか?」という若干モヤる終わり方が気になる映画でした。

<当時は相当やべぇやつに見えたんじゃないかという満里子>

この映画、メインは保守的な姉の節子と奔放な妹の満里子のやり取りで構成されています。姉夫婦の在り方に疑問を持ち、首を突っ込んで引っ掻き回す満里子の奔放さが見どころではありますが、いかんせん作られたのが74年も前のこと。男女のパワーバランスや家庭の描かれ方は現代と大きく異なるので、当時の人からしたら満里子のキャラクターは相当に異質なものに映ったのではないでしょうか。

まず、満里子は姉夫婦と同居している上に、姉の夫のことが大嫌いなんですよ。職に就かず、毎日飲み歩き、それでいて家のことはすべて妻に任せっきり。コップの水にしろ、シャツのボタンのしつけにしろ、「おい」の一言。今なら間違いなくSNSで大炎上するような夫像ですが、当時としてはこれが普通だったんでしょうね。そりゃ満里子も自分の姉が奴隷のような扱いを受けているのを見たら嫌悪感を抱くのはわかりますが、それなら「あたし出て行く」と言って一人暮らしすればいいのではとも感じます。まあ、当時は嫁入り前の女性が一人暮らしするという概念がなかったのかもしれませんし、そもそも満里子は働いていないからお金がなかったのかもしれないけど。しかも、ここが実家ですからね、他に行く当てがないですよ。

<切ない想いが消えない節子>

節子は節子で実は相思相愛ながらもすれ違いによって結ばれなかった田代という男性がいるんですよね。いっしょにいるときは好きかどうかわからず、いざ自分が別の人とお見合いになったときに好きだったということに気づいたらしいんですけど。お見合いを断ろうにも、ちょうどそのときに田代はフランスへ行ってしまい、連絡が取りづらい状況になっていました。なので、仕方なく(?)節子は今の旦那と結婚しましたと。蓋を開けたら上記の通り、失業して仕事もせずに飲んでばかりのどうしようもない男だったんですけど(笑)

<おせっかいすぎる満里子の性格>

そこで満里子が姉のために一肌脱ぎ(?)、田代と姉をくっつけようと画策します。しまいには自分も田代のことを好きだから結婚してくれという始末。もちろんそれは嘘ではあるんですが、少なくとも家族として田代と姉がいっしょにはなりますからね(今の旦那はどうするんだって話ですがw)。正直、いくら姉妹とはいえ勝手に姉夫婦の関係に割って入るのはだいぶうざったいなとは感じます。それが姉想いゆえなのか、自分の快適な生活のためなのかはわかりませんけど。僕だったら「ほっといてくれ」と言っちゃいそうですが(笑)ただ、きっと節子も100%「このままでいい」とは思ってはいないはずなんですよ。でも、当時の時代背景とか自身の性格とかもあって、隠された想いを外に出すことはありませんでした。だから、満里子のおせっかいも現状を少しでも変えるには必要だったかもしれません。で、そこからのラストがものすごく衝撃的というか、唐突すぎてちょっと面食らいましたね。以下、ネタバレとなりますので、まだ知りたくない方はここでページをそっ閉じしてください。




















<みんなが幸せになるのは難しいのかも>

最終的に、節子は夫と離婚することになり、田代からも「いっしょになろう」と言われるんですが、ここで夫がまさかの急死をするんですよ。しかも職が決まったばかりだったと言うのに。ある晩、夫はいつもの通り酒に酔って帰ってきたんですが、ぶっ倒れてそのまま絶命してしまうんです。心臓麻痺ってことになっていましたが、節子はどうもその死が怪しいと感じて、最後の最後で暗い影を落とした結末に釈然としない様子。そんな状況で再び田代といっしょになっても幸せになれないと感じて、結局、田代とも別れちゃうんですよね。。。あんなにいっしょになりたいと思っていたのに。。。

節子の夫の死因はそれ以上深掘りされません。他殺でも自殺でもなく、単に事故というか不運な死だと思います。ただ、彼は満里子にもいろいろ言われ、女性が強く言えない時代の中で、姉妹そろって自分への愛や信頼がないことにショックというか、そういう関係性にしてしまったことへの罪悪感みたいなものはあったんじゃないでしょうか。彼の中ではいろいろ思うところがあって、精神的にまいっていたことは確かなので、変な酒の飲み方をしてあのような結果になったんじゃないかなと僕は思います。

田代は節子の影も含めて受け入れようとしましたが、節子は「自分の納得いく形にしたい」ということでそれを拒否します。うん、この姉妹、性格は正反対だけど、自分がやりたいようにやるっていう点では似ていますね(笑)彼女らの父親は非常におおらかな人で、「自分の好きなようにやったらいい」という感じだったので、そういう人柄が娘たちに影響したんじゃないかなと勝手に思ってますけど。それにしても、なかなかみんなが幸せになるって難しいですね。別に直接誰が悪いっていう話でもないので、ちょっとやるせない気持ちにもなります。

<まさかの血縁関係に驚き>

あとこの映画、今でいうベテラン役者さんたちの親や祖父母が出ているのも見どころです。田代を演じた上原謙は、あの加山雄三の父親。そして、田代の友人である頼子を演じた高杉早苗は、あの香川照之の祖母。今考えるとすごいキャスティングじゃないですか?昔の映画を観ていると、こういう血の繋がりを発見できるのも楽しみ方のひとつですね。

<そんなわけで>

男女のすれ違いが甚だしいモヤモヤする終わり方の映画でした。今から70年以上も前の作品にも関わらず、男女の色恋沙汰ってのはいつの時代も不変だなと感じます。とはいえ、個々のキャラクターは印象に残るものの、話は最後の唐突な展開までは割と淡々と進むので、個人的にはそこまで刺さりませんでした(笑)

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