出ている人全員が演技お化けだった『沈黙のパレード』
【個人的な満足度】
2022年日本公開映画で面白かった順位:23/140
ストーリー:★★★★★
キャラクター:★★★★★★★★★★
映像:★★★☆☆
音楽:★★★★☆
映画館で観たい:★★★★★
【作品情報】
製作年:2022年
製作国:日本
配給:東宝
上映時間:130分
ジャンル:ミステリー、ヒューマンドラマ
元ネタなど:小説『沈黙のパレード』(2018)
【あらすじ】
天才物理学者・湯川学(福山雅治)の元に、警視庁捜査一課の刑事・内海薫(柴咲コウ)が相談に訪れる。行方不明になっていた女子学生が、数年後に遺体となって発見されたのだ。
内海によると、容疑者は湯川の親友でもある先輩刑事・草薙俊平(北村一輝)がかつて担当した少女殺害事件で、完全黙秘をつらぬき、無罪となった男・蓮沼寛一(村上淳)。蓮沼は今回も同様に完全黙秘を遂行し、証拠不十分で釈放され、女子学生の住んでいた町に戻って来た。
町全体を覆う憎悪の空気…。そして、夏祭りのパレード当日、事件が起こる。
蓮沼が殺された。
女子学生を愛していた、家族、仲間、恋人…全員に動機があると同時に、全員にアリバイがあった。そして、全員が沈黙する。湯川、内海、草薙にまたもふりかかる、超難問…!
果たして、湯川は【沈黙】に隠された【真実】を解き明かせるのか…!?
【感想】
映画『ガリレオ』シリーズ第3作目。原作小説は未読なんですけど、今作はとにかく出ているキャストの方々の演技が全員素晴らしかったのが一番の推しポイントです。
<やっぱり映画版は面白い『ガリレオ』シリーズ>
この作品を観るに当たって、過去の映像作品はすべて網羅しました。全部観たからこそ言えるんですが、『ガリレオ』の映画シリーズ、本当に面白いと個人的には思います。もちろん、テレビドラマ版もいいですよ。テレビドラマ版は、科学的なトリックを用いた犯行とその立証に焦点が当たっていて、ポップな雰囲気があります。45分に収まったテンポのいい展開はとても観やすいですしね。
一方、映画版は全体的に暗い雰囲気ではありますが、ストーリーもキャラクターも濃厚なんですよ。映画の方では科学的なトリックの解明自体はほとんどありません。むしろ、科学的なトリックを使わず、けっこうアナログな形での犯行が目立ちますね。だから、湯川先生がいきなり数式を書き出すお決まりのシーンもありません。その代わり、犯人の動機や人物背景が深掘りされていて、ヒューマンドラマとしてメチャクチャ楽しめるんですよ。第1作目の『容疑者Xの献身』は、ラストの堤真一と松雪泰子のやり取りにおける2人の演技が凄まじくて、そこだけで僕の中での作品の株が爆上がりました。
第2作目の『真夏の方程式』は、父の娘に対する愛に涙が止まりませんでしたね。同じく娘を持つ身としてとても感情移入してしまって。そこらへんの感動物語よりも、よっぽど泣けます。『ドラえもん』じゃないですが、テレビドラマ版と映画版ではだいぶ雰囲気が異なりました。
<キャスト全員の演技が引き込まれる>
今作でも濃厚な人間ドラマは健在です。蓮沼が殺された事件を巡って捜査を進めるんですが、もともと彼が殺したとされる女子学生に関わる人々全員に動機があることが判明するんです。でも、全員にアリバイがあり、さらに事件についてはみんなが沈黙してしまい、捜査が難航するというのが今回の流れ。そんな彼らひとりひとりの迫真の演技がとても素晴らしくて!女子学生に対する愛情と、それゆえに募る蓮沼に対する憎悪。この2つの感情がむき出しにされて、苦悩の表情を浮かべる演技に打ちのめされました。こんなにも心の苦しみを表現できるもんなんだと、スクリーンに釘付けになりますよ。特に、ずんの飯尾和樹さん。バラエティ番組で見せる顔とは正反対の、娘を失い希望を潰された父親の役どころには圧倒されましたね。
<ヒューマンドラマとミステリーの絶妙なバランス>
そして、物語の終盤で驚愕の真実が明らかになります。一件落着したかと思いきや、その先にまだ秘密があるっていう展開も、この映画の面白い要素のひとつですね。犯人や犯人を取り巻く人々の人間ドラマはヒューマンドラマの色が強いですけど、その犯人が誰なんだというところで、しっかりミステリーを作ってくるのが、この作品のウリですね。映画版の過去2作品では最初から犯人に検討がつくのに対し、今回は終盤になるまで真相がわからなかったので、より引き込まれるストーリー展開だったと思います。
<そんなわけで>
今年公開された実写の邦画の中ではトップレベルで面白かったと思います。原作を読んでいるとまた違った感じ方になるのかもしれませんが、映像作品オンリーの自分としては十分に楽しめました。感動的なヒューマンドラマの中に、きちんとミステリー要素も際立たせるオススメの作品です。
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