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突然我が子がいなくなった喪失感によって正気が保てない石原さとみの演技が凄まじかった『ミッシング』

【個人的な満足度】

2024年日本公開映画で面白かった順位:18/58
  ストーリー:★★★★★
 キャラクター:★★★★★★★★★★
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★★★

【作品情報】

   原題:-
  製作年:2024年
  製作国:日本
   配給:ワーナー・ブラザース映画
 上映時間:119分
 ジャンル:ヒューマンドラマ
元ネタなど:なし

【あらすじ】

※公式サイトより引用。
とある街で起きた幼女の失踪事件。あらゆる手を尽くすも、見つからないまま3ヶ月が過ぎていた。

娘・美羽(有田麗未)の帰りを待ち続けるも少しずつ世間の関心が薄れていくことに焦る母・沙織里(石原さとみ)は、夫・豊(青木崇高)との温度差から、夫婦喧嘩が絶えない。唯一取材を続けてくれる地元テレビ局の記者・砂田(中村倫也)を頼る日々だった。

そんな中、娘の失踪時に沙織里が推しのアイドルのライブに足を運んでいたことが知られると、ネット上で“育児放棄の母”と誹謗中傷の標的となってしまう。世の中に溢れる欺瞞や好奇の目に晒され続けたことで沙織里の言動は次第に過剰になり、いつしかメディアが求める“悲劇の母”を演じてしまうほど、心を失くしていく。

一方、砂田には局上層部の意向で視聴率獲得の為に、沙織里や、沙織里の弟・圭吾(森優作)に対する世間の関心を煽るような取材の指示が下ってしまう。それでも沙織里は「ただただ、娘に会いたい」という一心で、世の中にすがり続ける。その先にある、光に―。

【感想】

我が子が突然行方不明になったとき、自分だったらどうなってしまうか。そんなことを考えさせられる映画でした。ちなみに、これは犯人を捜す話でも、事件解決を追う話でもなく、愛する者がいなくなったときの残された人々の生き方を描いた作品なので、とても重い内容な上にモヤモヤしまくりです。子供がいる方は覚悟を持って観た方がいいかもしれません。

<石原さとみの振り切った演技が圧巻>

これはもう予告の時点でわかっていたと言いますか、もはやそれを観るためにこの映画を観に来たといっても過言ではないんですが、とにかく石原さとみの演技に圧倒されました。いなくなった我が子の情報を少しでも集めようと駅でビラ配りを行い、事件を取り扱ってくれる番組の記者に頼る日々。状況が進展しないまま時間だけが過ぎていくことに焦ると同時に、SNSでの誹謗中傷に苛立ちを募らせていました。だから、精神状態は常に不安定で、相手のちょっとした言動に怒り、デマだろうが何だろうが娘に関する情報が入ると、炎天下の砂漠で水を求めるかの如く食らいつきます。その姿からは痛々しさではなく、「人間ってこんなにまでなってしまうのか」というその変貌ぶりにただただ驚きます。もう本当に心に一切の余裕のない極限状態に陥った人間そのものでしたね。中でも、非協力的な弟にキレ散らかすシーンや、娘が見つかったというデマ情報に踊らされて精神が崩壊するシーンは特に強烈なインパクトでした。

これ何が辛いって、娘が生きているか死んでいるかもわからず、単に行方不明っていうところですよね。比較の対象にはなりませんが、例えば、LINEやメールのレスも、ダメならダメでそう返してくれればいいのに、ノーレスだと不安になるじゃないですか。この「どうなっているのかわからない」っていう状況が精神を蝕んでいくんですよ。。。

<石原さとみ以上に難しい役どころじゃないかと思った青木崇高>

人の感情の出方って様々だなと思えるのもこの映画のポイントです。確かに石原さとみの演技は鬼気迫るものがあって圧倒されるんですが、個人的には夫役の青木崇高の方が難しい役どころだったんじゃないかって思ったんですよね。なぜなら、彼だって辛い状況であるのは変わらないのに、一切取り乱すことなく、むしろ常に冷静で淡々としていたからです。それが妻からすると「温度差があるよね」と癪に障る部分にもなっちゃうんですけど。でも、温度差なんてとんでもない!彼は彼で気が気でないんです。その証拠に、ホテルの外でタバコを吸っているときに娘と同い年ぐらいの女の子を見て、目を真っ赤して懸命に涙をこらえるシーンがあるんですよ。彼も言っていましたが、夫婦そろって取り乱してもいいことありません。だから、彼は爆発しそうな気持ちを抑えて一歩引いた立場にいるんです。なんてできた人間なんでしょう。僕が当事者だったらそんな判断できません。。。

<実は心の内に抱えるものがある中村倫也>

上記の夫婦のキャラクターというか演じた役者の演技が見どころの本作ですが、実は記者役の中村倫也もいいんですよね。彼は視聴率を狙う局の方針よりも、当事者の気持ちを第一に考える優しい人物。なんですが、スクープを連発して社内表彰されるだけでなく、キー局への転職が決まった後輩の活躍に思うところがある様子。夫婦に寄り添う姿勢はものすごく大事なんですけど、やっぱり心のどこかでは華々しく活躍したい気持ちがあるんですよね~。言葉では後輩の実力を認めていますし、「勝ち負けとかそういう話じゃない」っていうような態度でいるんですけど、結局は負け惜しみなんだろうなって。彼の目指すキャリアと実情に乖離がある理由までは描かれていませんでしたが、おそらく、彼の報道姿勢は人としては正しいけれど、キャリアとしては必ずしも正解ではないので、そこのミスマッチが大きいのではないかと思いました。いや、もしかしたら何か別の理由があるのかもしれませんが、、、なんか彼を主人公にしたスピンオフ作品作れそう(笑)

<そんなわけで>

娘の失踪を通じて人間の在り方を描いたとても見ごたえのあるヒューマンドラマでした。非常に重い内容ではありますが、その分面白いというか心に刻み込まれる映画だと思うのでオススメです。もし僕が当事者になったら、石原さとみのように感情が全部外に出てしまうかはわかりませんが、居ても立ってもいられないだろうな。。。


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