最強のスーツとマシンを手にした探偵映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』
【個人的な評価】
2022年日本公開映画で面白かった順位:6/40
ストーリー:★★★★★
キャラクター:★★★★★
映像:★★★★★
音楽:★★★★★
映画館で観るべき:★★★★★
【ジャンル】
スーパーヒーロー
DC
バットマン
サスペンス
スリラー
アクション
【原作・過去作、元になった出来事】
・漫画
『バットマン』(1939-)
・映画
『バットマン』シリーズ(1989-1997)
「ダークナイト・トリロジー」(2005-2012)
『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(2016)
『ジャスティス・リーグ』(2018、2021)
その他、テレビドラマ、アニメ、ゲームなど。
【あらすじ】
優しくもミステリアスな青年ブルース・ウェイン(ロバート・パティンソン)。悪と敵対する"バットマン"になって2年が過ぎた。
ある日、権力者を標的とした連続殺人事件が発生。犯人を名乗るリドラー(ポール・ダノ)は、犯行の際に必ず"なぞなぞ"を残していく。警察や世界一の名探偵でもあるブルースを挑発する史上最狂の知能犯リドラーが残した最後のメッセージは――
「次の犠牲者はバットマン」
社会や人間が隠してきた嘘を暴き、世界を恐怖に陥れるリドラーを前に、ブルースの良心は狂気に変貌していく。リドラーが犯行を繰り返す目的とは一体――?
【感想】
バットマンが単独主人公の実写映画としては累計で第8作目。とはいえ、過去作との繋がりは一切ないので、本作がバットマンデビューだとしても問題はないですね。いやー、本当に心待ちにしていましたよ、新生バットマン。それにしても、なんでこんなに作り直されているのかわからないぐらいに、バットマンの映画は多いですよね。クリストファー・ノーラン監督の「ダークナイト・トリロジー」は傑作だったので、"DCエクステンデッド・ユニバース"以外ではこれ以上作られないかなーなんて思ってましたが、それでもまたこうやって新しいバットマンが生まれていますからね。それだけ、バットマンの見方がいろいろあるっていうことなんでしょうけど。
<これは探偵映画です>
今回一番言いたいのはここなんですよ。探偵映画っていう。バットマン自身は歴史あるスーパーヒーローですよ?最初にコミックに登場したのは1939年なので、もう80年以上も前のことです。それだけ長い間、スーパーヒーローの代表として親しまれてきましたし、僕も今となってはマーベルのファンですけど、一番最初に観たスーパーヒーロー映画はスーパーマンとバットマンですからね。
でも、この映画がスーパーヒーロー映画かと言うと、そうじゃないんですよ。スーパーヒーロー映画って、特殊能力を持ったヒーローたちが、敵と壮大な戦いを繰り広げるっていう流れがおなじみじゃないですか。それこそ、80年代~90年代に作られた『バットマン』シリーズや他のDCヒーローとクロスオーバーする”DCエクステンデッド・ユニバース”のバットマンは、そうやって敵をボコボコにしていく話でした。それに対し、「ダークナイト・トリロジー」は、バトルよりも人間ドラマの方に重きが置かれていて、従来のヒーローモノとは一線を画す作りだったのは記憶に新しいです。
個人的には、敵とド派手なバトルを繰り広げる話の方が爽快感あって好きなんですけど、今回のバットマンはまた全然違う内容で。それが最初に書いた探偵映画ってところです。今回のヴィランがなぞなぞを出してくるリドラーということもあってか、従来のように敵を倒す話ではなく、暗号を解いて犯人を捜す話だったんですよ。持ち前の圧倒的な知識と観察力を駆使しながら、犯人を追いかけていくサスペンススリラーです。その途中にあるちょっとしたバトルや、ド迫力のカーチェイスはかっこよかったんですけど、それでも過去作と比べるとアクションシーンはかなり抑えられていたと思いますね。ここは好みが分かれるところかもしれません。
<若くて暗い新卒2年目のバットマン>
本作ではバットマンが現れて2年が過ぎた時期。言ってしまえば新卒2年目というところでしょうか。だから、この世界にバットマンはすでに"いる"状態なんですよ。彼は一体何者で、どういう経緯でバットマンになったのかっていう説明は一切ありません。なので、直接的な話の繋がりはありませんが、彼がバットマンになる経緯を知っておきたい場合には、『バットマン ビギンズ』(2005)が一番原作に近いと思うので、興味があればぜひそちらをご覧ください。今回のネタバレになるようなことはまったくないのでご安心をば。
バットマンことブルース・ウェインの設定としては、億万長者、慈善家、プレイボーイと三拍子揃った人物です。マーベルのトニー・スタークを思わせますが、本作ではこれまでのブルース・ウェインの中で一番じゃないかってぐらい暗いんですよ。もともとバットマンの世界観って、腐敗して治安が悪すぎるゴッサム・シティが舞台ってこともあって、作品全体としてどんよりしていますが、それを踏まえても暗すぎました。作中、一度も笑顔を見せませんからね。
きっと、ゴッサム・シティから悪を撲滅しようとバットマンになってまだ2年だから、心の余裕がないんじゃないかなって思います。表の顔であるブルース・ウェインと、裏の顔であるバットマンの使い分けがうまくできていないのかなって。でも、そこが今回のブルース・ウェインの魅力かなと思うんですよ。今回は若き日のブルース・ウェインを描いています。だから、まだちょっと青さというか、擦れてない部分が残っているんじゃないでしょうか。殺された両親の復讐もまだ胸に秘めつつ、姿が見えないリドラーから次々に出されるなぞなぞに苦戦。どんどん増えていく犠牲者と、改めて痛感するゴッサム・シティの腐敗っぷり。若者がそんな現実を目の当たりにしたら、精神的にも肉体的にも辛いはずです。それでもあきらめずに犯人を追い続けられるのは、まだ若い証拠じゃないかなと。
<実在の殺人犯をモデルにしたリドラー>
今回のヴィランであるリドラーは、原作とは異なる設定です。名前も変わっていますしね。かつて『バットマン フォーエヴァー』(1995)ではジム・キャリーがコミカルな演技を見せていました。今回のリドラーと全然違いますよね(笑)
(『バットマン フォーエヴァー』(1995)より引用)
本作におけるリドラーは、シリアスで凶悪な殺人犯となっています。しかも、アメリカで実際に起こった現在でも未解決の"ゾディアック事件"の犯人像をモデルにしているらしいですよ。
彼はゴッサム・シティの市長をはじめ、正義のシンボルとされている人たちを次々に殺していきます。なぜなら、正義だと思われていた彼らこそ、その裏では薄汚いことをやっていたから。リドラー自身、幼い頃に嘘や裏切りに絶望した経験があります。だから、今回の殺人にはリドラーなりの想いがあっただろうし、社会の歪みを正そうとするする彼なりの正義があったのかもって考えると、今回の映画、というよりバットマンという作品がとても深いなと感じますね。
<そんなわけで>
敵をボコボコにするスーパーヒーロー映画を想像していくと、だいぶ方向性が違うことに驚くかもしれません。でも、ゴッサム・シティの闇を正そうとするバットマンの、苦悩しながらも奮闘する探偵映画として、個人的にはとても楽しめました。『アヴェ・マリア』をメインに添えたBGMもよかったですし、ぜひ映画館で観て欲しい作品です。
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