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裁判を通じて暴かれる家族の恥部に、裁判沙汰だけは起こさないようにしたいと思った『落下の解剖学』

【個人的な満足度】

2024年日本公開映画で面白かった順位:21/23
  ストーリー:★★★☆☆
 キャラクター:★★★☆☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆

【作品情報】

   原題:Anatomie d'une chute(Anatomy of a Fall)
  製作年:2023年
  製作国:フランス
   配給:ギャガ
 上映時間:152分
 ジャンル:ミステリー、ヒューマンドラマ
元ネタなど:なし

【あらすじ】

※公式サイトより引用。
人里離れた雪山の山荘で、男が転落死した。はじめは事故と思われたが、次第にベストセラー作家である妻サンドラ(ザンドラ・ヒュラー)に殺人容疑が向けられる。現場に居合わせたのは、視覚障がいのある11歳の息子だけ。

証人や検事により、夫婦の秘密や嘘が暴露され、登場人物の数だけ<真実>が現れるが──。

【感想】

雪山の山荘で起こった男の転落死。これは事故か事件か。そんなミステリー感漂わせる雰囲気を出してはいますが、中身は家庭内トラブルが暴かれるヒューマンドラマのような内容でした。

<裁判を通じて描かれる知られざる夫婦仲>

この映画、いわゆる法廷モノを期待していくと面食らってしまうかもしれません。例えば、被害者の死を巡って登場人物が全員容疑者みたいな。複数のミスリードをしつつ、まさかのトリックによって明かされる真犯人みたいな。そういう映画ではないんですよね~。もはや事件の真相とか裁判の勝敗とか二の次です。僕も最初は自殺か他殺か気になって観ていましたが、途中からどうでもよくなりました(笑)というのも、この映画で描かれているのは事件の真相を追うスリルではなく、どの家庭にもありそうな夫婦仲にまつわるいざこざだからです。

<タイトル通り、解剖していくと見えてくるもの>

家事の分担や子供に割く時間、自身のキャリアなど、証人や検事によって次々と公になっていく一家。あまり他人に見せたくないような、ある意味家庭の"恥部"みたいな部分が、裁判員や傍聴者などの第三者に晒されるのは正直キツいですね。。。まさに、タイトル通りですが、「落下を解剖していったらいろいろ見えてきました」って状態です。裁判沙汰になったら自分もこうなるのかなと思うと、もう絶対品行方正を貫きたくなりますね(笑)

<裁判という設定がうまい>

この映画、夫婦仲の亀裂をメインに扱っていますが、家庭の内情を暴露する設定ってなかなか難しいですよね。でも、本作のように裁判という状況を利用すれば、ごく自然にすべてを白日の下に晒すことができるので、なかなかうまい設定だなと思いました。

そして、その中で描かれる人間関係における変動性も興味深いです。もともとは愛し合っていた男女が恋人になり、夫婦になり、両親となっても、結局は他人同士だから、相容れない部分はどうしても出てきてしまいますよね。不変の愛なんてないのかなと疑いたくなるほどに。「夫婦は唯一別れられる家族」みたいなセリフを日本のドラマでも聞いたことがある気がしますが、些細なことの積み重ねがいつか夫婦の中に大きな亀裂を入れてしまい、取り返しのつかないことになりかねません。この夫婦の喧嘩シーンを観ると、中には耳が痛い人もいるかも、、、?(笑)まあ、個人的には、男性目線だからかもしれませんが、妻がかなり図太い神経の持ち主だなとは感じました。時間がないという夫に「あなたに何も強制はしてないじゃない」と言い放つんですが、夫がやらなかったらあなたはやるんですかって聞きたくなりました(笑)

<ちょっと気になる法廷シーン>

この映画の7割ぐらいは法廷でのシーンになるんですが、とにかく弁護側も検事側も独断と偏見と憶測での発言が多くて、まったく説得力がない気がしました(笑)自分が裁判員をやった経験があるから余計に気になるのかもしれませんが、本来はもっと淡々と事実のみを述べる場なんですよね(少なくとも僕が参加したものはそうでした)。海外だと日本とはまた違うのかもしれませんが、みんな発言が自由すぎてちょっと笑ってしまいます(笑)

<そんなわけで>

夫婦あるあるを裁判によって紐解いていくちょっと変わった切り口の映画でした。尺が2時間半ととにかく長い上に、セリフ劇がずっと続いてくだけなので、観るなら体調万全のときをオススメします。けっこう体力持っていかれますよ(笑)


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