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シリーズ1作目から64年前。あのスノー大統領がなぜ闇堕ちしたのかが描かれた『ハンガー・ゲーム0』

【個人的な満足度】

2023年日本公開映画で面白かった順位:97/175
  ストーリー:★★★★☆
 キャラクター:★★★★☆
     映像:★★★★☆
     音楽:★★★★☆
映画館で観たい:★★★★☆

【作品情報】

   原題:The Hunger Games: The Ballad of Songbirds and Snakes
  製作年:2023年
  製作国:アメリカ
   配給:KADOKAWA
 上映時間:157分
 ジャンル:アクション
元ネタなど:小説『The Ballad of Songbirds and Snakes』(2020)
      映画『ハンガー・ゲーム』シリーズ(2012-)

【あらすじ】

※公式サイトより引用。
記念すべき第10回ハンガー・ゲームの新しい試みとして、プレイヤーの教育係に任命された18歳の若き少年スノー(トム・ブライス)は、貧しい境遇から抜け出す為、優勝を心に決める。

だが、彼が担当する事になったのは、第12地区のひ弱な少女ルーシー・グレイ(レイチェル・ゼグラー)だった。

そして、彼女の唯一の武器は歌だった――。

【感想】

ハンガー・ゲーム』シリーズ最新作にして前日譚。あの悪の親玉のようだったスノー大統領(ドナルド・サザーランド)の若き日を描いた作品です。原作小説を読んでいないため、ややわかりづらい部分はありましたが、なんだか切ない気持ちになるお話でした。

<主催者側の視点で語られる>

今回の舞台は第10回の記念大会。過去作でカットニス(ジェニファー・ローレンス)が初めて参加したのが第74回大会だったので、64年も昔のことになります。これまでのシリーズは、1作目2作目が各地区から選ばれた代表者たちが生き残りをかけて殺し合うことがメインで、3作目4作目がスノー大統領をぶっ倒しに行く話で、どちらかと言えばハンガー・ゲームのプレイヤー視点で語られていました。

それに対して今作は、主催者側からの視点がメインかつ、教育係とプレイヤーがバディを組んでの戦いを描いていて、まったく新しい視点でしたね。もちろん、教育係も善意でやっているわけではなく、優勝したプレイヤーの教育係に賞と賞金が与えられるから、みんな躍起になるわけですけど。

<スノーの闇堕ちの理由とは>

スノーはあの手この手でルーシーを手助けして勝利へと導いていきます。ここまででもけっこうボリューミーだったので、ハンガー・ゲームが終わって一件落着かと思いきや、この時点で尺が半分近く残っていたんですよね。「この後に何を描くのか」と思ったら、実は後半こそスノーが人格を変えてしまう重要なパートだったんですよ。スノーとルーシーは戦いを通じて、いつの間にかお互いにかけがえのない存在になっていました(それでいうと、お互い初対面のときからビビビッときている節はあったんですけどw)。ハンガー・ゲームが終わってルーシーが故郷へ帰った後、スノーも第12地区へ向かいます。これ、先に書いた「あの手この手」ってのがポイントでして。その中に不正行為とされるものも含まれており、その責任としてスノーは左遷されちゃうんですよ。でも、当初の飛び先が第8区だったのを、自らの意志で第12地区にしてもらったのは、ルーシーに会いに行くためです。

そこでスノーは治安維持部隊の兵士として過ごしながらも、やがては全部捨ててルーシーといっしょに生きて行こうと思っていた矢先、とある事件をきっかけにそれが破綻してしまいます。まあ、その事件も元をたどればスノーもルーシーも悪くなくて、スノーといっしょに第12地区に来た友達に責任があると思うんですけどね。。。スノーも変に首を突っ込まなければよかったのにって。

そこからですよ、「愛よりも信頼が大事」と言っていたルーシーが、その信頼をスノーと築けなくなってしまったのは。スノーは相当ショックだったと思います。愛した人に裏切られたような形になって。ただ、ここがけっこう唐突というか、「人が変わるほどのこと?」って思っちゃったのもまた事実。それぐらいやや急ぎ足な展開で。原作小説だとスノーの心理変化がもっと丁寧に描かれているっぽいので、それを読んでいた人の方がここらへんは楽しめるかもしれません。

<スノーがカットニスに執着していた理由が垣間見える>

映画ではあまり明言はされていませんが、ここでの出来事が後にスノーが大統領となったときにカットニスに執着した理由かもしれないんですよね。今回の映画でも第12地区には、後の作品で大きな意味を持つマネシカケスやカットニスという言葉が出てきます。スノーからしたら、第12地区って苦い思い出の地ですよね。それが64年経った後もトラウマのように残っていたんじゃないでしょうか。だから、同じ第12地区出身で、マネシカケスのブローチをして、カットニスなんて名前の女性が現れたら、嫌でもルーシーと重なってしまって、並々ならぬ想いがあったんじゃないかなーって。3作目のスノー大統領のセリフに「人を最も夢中にさせるものが、人を壊すのだよ」っていうのがあって、これは「愛」を指していると思いますが、スノー本人が若いときに実際に経験していたんだなって思うと切なくなりましたね。

<そんなわけで>

アクションとしての派手さは少なかったものの、過去シリーズのヴィランを深掘りした作品で面白かったです。もう少しスノーの心理変化を細かく知りたくはありましたけど。シリーズを追っている人なら楽しめると思いますが、そうじゃないとマジで意味わかんないと思います(笑)てか、ポスターの作りから主題が全然伝わってこないので、もっとスノー感出してもよかった気がします。


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