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邦画ミステリーの大傑作!!150年に渡る悲運の連鎖を断ち切る壮大な物語に引き込まれ、親の愛に涙した『ミステリと言う勿れ』

【個人的な満足度】

2023年日本公開映画で面白かった順位:21/130
  ストーリー:★★★★★★★★★★
 キャラクター:★★★★★★★★★★
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★★★
映画館で観たい:★★★★★★★★★★

【作品情報】

   原題:-
  製作年:2023年
  製作国:日本
   配給:東宝
 上映時間:128分
 ジャンル:ミステリー
元ネタなど:漫画『ミステリと言う勿れ』(2016-)
      テレビドラマ『ミステリと言う勿れ』(2022-)

【あらすじ】

天然パーマでおしゃべりな大学生・久能整(菅田将暉)は、美術展のために広島を訪れていた。そこで、犬堂我路(永山瑛太)の知り合いだという一人の女子高生・狩集汐路(原菜乃華)と出会う。

「バイトしませんか。お金と命がかかっている。マジです。」

そう言って汐路は、とあるバイトを整に持ちかける。それは、狩集家の莫大な遺産相続を巡るものだった。当主の孫にあたる、汐路、狩集理紀之助(町田啓太)、波々壁新音(萩原利久)、赤峰ゆら(柴咲コウ)の4人の相続候補者たちと狩集家の顧問弁護士の孫・車坂朝晴(松下洸平)は、遺言書に書かれた「それぞれの蔵においてあるべきものをあるべき所へ過不足なくせよ」というお題に従い、遺産を手にすべく、謎を解いていく。

ただし、先祖代々続くこの遺産相続はいわくつきで、その度に死人が出ている。汐路の父親も8年前に、他の候補者たちと自動車事故で死亡していたのだった…。

次第に紐解かれていく遺産相続に隠された<真実>。そして、そこには世代を超えて受け継がれる一族の<闇と秘密>があった――― 。

【感想】

あの人気漫画が2022年にテレビドラマ化し、ついには映画化まで!今回は、原作漫画の2~4巻で展開される通称「広島編」が映像化されています。テレビドラマ版が好きだったので期待していたのですが、いやはや期待以上に面白い作品でしたね。ストーリー的には独立した話になるので、漫画ドラマも知らなくても楽しめるかと思います!

<とにもかくにも久能整のキャラクターが最高すぎる>

僕は原作漫画は読んでおらず、テレビドラマ版しか観ていないのですが、この作品はやっぱり主人公である久能整の独特さで成り立っているんですよ。鋭い洞察力で、相手のちょっとした仕草やリアクションから知られざる心理や事実をピタリと言い当て、世間で常識すぎて誰も疑問を持たないようなことにさえ疑問を持ち、つらつらと持論を述べるあのマイペースな性格が痛快です。さらに、基本的にシリアスな世界観な本作の中で、唯一彼だけが笑える要素を提供できるのも注目です。そういう役まわりって脇役が担うようなイメージがありますけど、この作品に関しては、笑いも真面目さも全部整が持っていくので、いやホント、主人公にすべての武器を持たせてるなって感じます。

<従来のミステリーとは一味違った構成>

今回の映画では、整が遺産相続で揉める一族のもとに無理矢理連れてこられ、ひょうひょうとしながらも謎解きに挑むんですが、そこがこの映画の面白いところなんですよ。ミステリーでよくあるような流れって、誰かが死んで、トリックを紐解き、真犯人を暴くみたいな感じじゃないですか。昨日観た『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』(2023)なんかがまさにそうですが。でも、今回の映画はそういうのとは少し違って、各地に散らばったヒントを集めて謎を解き、ゴールを目指すRPGのような側面があって、先の展開がとても気になる作りになっていました。

でも、この映画の魅力は謎解きだけじゃありません。確かに物語の前半は、汐路に危害を加える人物の特定ということで、従来のミステリー映画における殺人事件のような様相を呈していましたけど、後半からガラッと変わるんですよ。4人の孫が協力して遺産相続のためのお題に取り組むようになるんですが、その過程でこの一族に隠された150年にわたる闇と秘密があることがわかり、汐路の父親の死の真相が徐々に明らかになるという壮大な設定が見えてきて、さらに面白みが増すんです!この悲運の連鎖に恐怖し、親の愛に涙するっていう、人間ドラマとしてすごく面白い作りだと感じました。ちょっと突拍子もない部分もあるんですが、それを大真面目に調査・推理して真相にたどり着こうとする整がかっこいいんですよね~。

<整の名言はメモしておきたいほど>

マイペースで自分の言いたいことはハッキリ言う整ですが、そんな性格だからこそ、彼のセリフはよく聞いていただきたいです。彼、実にいいこと言うんですよね。僕が今回の映画で気に入ったところが2つあります。まずひとつめは、「子供って乾く前のセメントみたいなんですって。落としたものの形がそのまま跡になって残るんですよ。だから子供をスパイにしちゃダメです」というセリフです。つまり、子供はまわりの環境によって人格が形成されてしまうから、大人も言動には気をつけないといけないってことですね。子を持つ身としては沁みるセリフでした。

もうひとつは、ゆらとその父親に対して言ったセリフです。長くてうろ覚えなんですが、父親がゆらに「おまえは働かないで、家でゆっくりしながら家事と育児さえしていればいいんだ」みたいなことを言うんですけど、それに対して整が反論するんです。「それが幸せであるというのは誰が決めたんでしょうか?」、「女の幸せは~とか、女は愛嬌だ~とかっていうのは、(世の中の)おじさんの好みと都合によって生み出された言葉ですよね」みたいに。女性の様々な生き方を肯定するようなセリフでとても好感が持てました。

<そんなわけで>

謎解きRPGみたいな新感覚ミステリーという感じで、個人的には歴代の邦画ミステリーの中でもトップクラスに面白い映画でした。久能整のキャラがあまりにも濃すぎるため、この作品は彼でもっているような印象も受けますが、整を演じた菅田将暉さんをはじめ、出演している他のキャストさんもみんな演技力が高く、特にラストの真犯人含めたやり取りは鳥肌立つぐらいのクライマックスだったので、これはぜひ映画館で観てほしい作品です。ドラマもシーズン2があったらうれしいなあ~。


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