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アート界の知られざる闇が垣間見える『ダ・ヴィンチは誰に微笑む』

【個人的な評価】

2021年日本公開映画で面白かった順位:207/260
   ストーリー:★★★☆☆
  キャラクター:★★★☆☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★☆☆☆

【要素】

ドキュメンタリー
サスペンス
アート
レオナルド・ダ・ヴィンチ

【元になった出来事や原作・過去作など】

・絵画
 レオナルド・ダ・ヴィンチ『サルバトール・ムンディ』

【あらすじ】

2017年、アート界に激震が走った。1枚の絵画がオークションで、史上最高額となる510億円で落札されたのだ。それは、レオナルド・ダ・ヴィンチの最後の絵画とされる『サルバトール・ムンディ』。「男性版モナ・リザ」とも呼ばれているものだ。

誰が購入したのか?ダ・ヴィンチによる真作だと証明されたのか?全世界の関心を集め、今なお謎めいているこの名画。その秘密を紐解いていくと同時に、知られざるアート界の生々しいからくりも暴いていく。

【感想】

アート界ってこんなにもプレイヤーが多いんだっていうのがわかるだけでも有意義な映画でした。僕はアートにはあまり興味がないというか、何がすごいのかよくわからないっていうタチなんですけど、それでも充分に楽しめる内容ですよ。

<サスペンス映画っぽい作り>

本作はドキュメンタリー映画です。ですが、『サルバトール・ムンディ』を巡る謎を紐解いていくという流れやBGMの使い方から、妙にサスペンス映画っぽい雰囲気を感じるんですよね。なので、ドキュメンタリーが苦手っていう人でも、いつもとは違う形で楽しめると思います。

<13万円から始まった絵画が510億円に>

先ほど、僕はアートはよくわからないと書きましたが、それでもレオナルド・ダ・ヴィンチはわかりますし、彼に限らず、昔の絵画がとんでもない金額で取引されていることも知っています。

今回、話題になっている『サルバトール・ムンディ』ですが、もともとは一般家庭で見つかったそうです。そこから、名も無き競売会社のカタログに載っていたのを見つけたニューヨークの美術商が13万円で落札したのが始まりです。そこから、専門家が集められていろいろ検証をするんですが、これがダ・ヴィンチ本人が描いたものかどうかは、いまだに議論が分かれているみたいですね。ダ・ヴィンチが描いたに違いないと言う人もいれば、弟子が描いたと主張する人もいます。もう答えは出ないんじゃないかともいますけどね。。。何か証拠があるわけじゃないですし。

とはいえ、ダ・ヴィンチが関わった幻の絵画であることに違いはなく、それだけでアート界隈では注目の的ですよ。クリスティーズのオークションでも、300億円近い値段からのスタートです。そこから最終的に510億円ですからね。。。美術品って恐ろしい。。。

<莫大な金額が動くところに人は寄ってくる>

そんな値段がつくぐらいですから、いろんな連中が寄ってくるんですよ。不当に高額な手数料をふっかける仲介人や、大衆向けマーケティングプランを考えてPVを作る者も。そこにはあのレオナルド・ディカプリオも利用されているんです。さらには、この絵を使って国力を高めようとするサウジアラビアの皇太子までもが出てくる始末。本当に、たった1枚の絵画になぜここまで人が群がり、金額が跳ね上がるのかが不思議でなりません。

<すべては"雰囲気">

僕が思うに「雰囲気」が大事なんだと思うんですよ。前に誰かから「商売は雰囲気」って聞いたことあるんですが、まさにそれかなって。本当にすごいかどうかはもはや大事ではないんですよ。「すごそう」っていう雰囲気が金を生むんだと。大しておいしくもないスイーツでも、「ハリウッドセレブの間で大流行」つって、表参道に店を構えるだけで、それっぽく見えるのと同じかもしれません。もちろん、レオナルド・ダ・ヴィンチはすごい芸術家だとは思いますよ。でも、モノ自体に価値があるのではなく、それに価値があると信じる人たちが、モノの価値を決めているんじゃないかと。いいモノが必ずしも売れるわけではない。大したことがなくても売れるモノはある。ましてや絵画という、機能性が一切ない嗜好品であればなおさら、いかに欲しいと思う人を増やすかが、そのモノの価値を高める秘訣なのかなと。それでも510億円はやりすぎだと思いますけどね。とにかく、そんなバカげた金額がついた絵画を巡るすったもんだが本作のメインストリームです。

<美術の講義を聴いているかのような気分>

ただ、このドキュメンタリー、答えもゴールもなく、美術商、専門家、研究者、美術館といったいろんな人たちのインタビューを交えながら、ああでもないこうでもないと話しているだけなので、ちょっと退屈に感じる部分はあるんですよ。まさに美術の講義を受けているかのような。それに、美術品が高値で取引されているっていうのは、みんな何となく知っているとは思うので、そこまで目新しさがあるわけではないと思います。そうは言っても、アート界の闇と、モノの価値って何だろうっていうことを考えさせられる映画ではあるんですけどね。

<その他>

ちなみに、芸術家として有名なダ・ヴィンチですが、ネット(ウィキペディア)で調べたら彼が業績を残した分野は以下の35個だそうです。天は二物を与えないんじゃなかったのか。。。。

鏡文字、音楽、建築、料理、数学、幾何学、生理学、組織学、解剖学、美術解剖学、人体解剖学、動物解剖学、植物解剖学、博物学、動物学、植物学、鉱物学、天文学、気象学、地質学、地理学、物理学、化学、光学、力学、工学、飛行力学、飛行機の安定、航空力学、航空工学、自動車工学、材料工学、土木工学、軍事工学、潜水服。


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