【ネタバレあり】国を守り国を変えた偉大な国王に心の底から敬意を表したい『ブラックパンサー』
【個人的な満足度】
ストーリー:★★★★★★★★★★
キャラクター:★★★★★★★★★★
映像:★★★★★★★★★★
音楽:★★★★★
映画館で観たい:★★★★★★★★★★
【作品情報】
原題:Black Panther
製作年:2018年
製作国:アメリカ
配給:ディズニー
上映時間:134分
ジャンル:アクション、スーパーヒーロー
元ネタなど:マーベル・シネマティック・ユニバース
【あらすじ】
全世界が、彼を待っていた。アフリカの秘境にありながら、世界の誰もが創造出来ないような最新テクノロジーをもつ<超文明国ワカンダ>。ここには世界を変えてしまうほどのパワーを持つ鉱石<ヴィブラニウム>が存在する…。
突然の父の死によって王位を継いだティ・チャラ(チャドウィック・ボーズマン)は、この国の“秘密”を守る使命を背負うことになる。ヴィブラニウムが悪の手に奪われると、人類に未来はない――。
“秘密”を狙う敵に立ち向かうのは若き国王。漆黒の戦闘スーツをまとい、ブラックパンサーとして戦うティ・チャラは、祖国を……そして世界を守ることができるのか?
【感想】
マーベル・シネマティック・ユニバース第18作目。『ブラックパンサー』シリーズ第1作目。来週上映される『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』に向けてのトリビュート上映として、4年ぶりに映画館で鑑賞しました。いやー、尊い、、、尊すぎますよ、、、ティ・チャラ。。。
<尊敬すべき国王>
この映画で一番魅力的なところは、やっぱり主人公のティ・チャラだと思います。彼はブラックパンサーとして悪と戦うスーパーヒーローであると同時に、国や国民と向き合う一人の若き王でもあります。そんな彼の優しさと強さがよく描かれた映画だなと感じますね。
ティ・チャラってある日急に王になっちゃったんですよ。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)で先代がテロによって急死してしまったので。堂々とした出で立ちが印象的ですが、その裏では自信がなく、まだ父親に頼っていたかったという弱音を吐くシーンもあります。国王というと完璧で近寄りがたいイメージがあるけど、この人間らしい部分に親しみを感じますね。
また、彼にはまわりの意見にも耳を傾けるよさがあります。一番信頼できるのは元カノのナキア(ルピタ・ニョンゴ)なんでしょう。彼女はスパイとして国外にいるので、「残ってほしい」と直に依頼します。でも、世界を見てきた彼女は、外には困っている人が大勢いることを知ります。そんな人たちにワカンダができることは、支援と技術を授けて保護することだと提案します。ワカンダって長らく鎖国状態で、外交が一切ないんですよね。だから、もっと世界に対して開けた環境を彼女は望んでいたんでしょう。一方で、難民を受け入れたら、問題も持ち込まれて平穏が壊されるという親友ウカビ(ダニエル・カルーヤ)の声もあり、ティ・チャラは頭を悩ませます。ただ、自信がないことの裏返しかもしれませんが、こうやって他人に意見を求める姿勢は好感が持てますね。
<いま明かされる先代の秘密>
そんなときに、ヴィヴラニウムがユリシーズ・クロウ(アンディ・サーキス)によって強奪される事件が起きてしまいます。その一味にいたのが、キルモンガー(マイケル・B・ジョーダン)で、今作のヴィラン的な位置づけです。彼、ティ・チャラの実のいとこなんですよ。これが、物語冒頭のシーンとリンクします。ティ・チャラの父親がひた隠しにしていた事実ですね。かつて、意見の食い違いをきっかけとして、父親が自らの弟(ティ・チャラから見たら叔父)を殺害し、その子供であるキルモンガーを置き去りにしたことです。
いくら国のためとはいえ、人として間違った選択をした先代のやり方に、ティ・チャラは強く反発します。そのことが、キルモンガーを憎悪で染め、今回のようにワカンダの武器を世界中にバラまき、今まで黒人が抑圧されてきた反撃を目論むようにさせたんじゃないでしょうか。戦争を仕掛ける国でなかったワカンダが、血で血を争う世界を作ろうとしています。もしかしたら、キルモンガーにはワカンダに対する復讐心もあったのかもしれません。そんなキルモンガーを生んでしまったのはワカンダなのだから、そのけじめをつけようと戦いに身を投じるティ・チャラの姿は、人として正しい在り方を追求する優しさと強さを感じましたね。
<大改革を実行する王の偉大さ>
今回の戦いを通じて、ティ・チャラは大きな決断をします。それは、ワカンダの鎖国を解くこと。ナキアはワカンダの技術力で難民を保護できると言っていましたが、キルモンガーもまた、ワカンダの力で救える人々がいるという考えでした。まあ、彼はそれを武力に求めてしまいましたが、いずれにせよ、世界平和のためにはワカンダができることはたくさんあるということではあります。そこで、ティ・チャラはエンドクレジット後のシーンで、ワカンダの知識と技術を世界に共有する約束をします。長らく鎖国状態にあった国を、ついに世界に開放したんですよ。「危機に瀕したとき、賢者は橋をかけ、愚者は壁を造ります」と。ワカンダは伝統を重んじる国ですが、それはとても保守的であるという見方もできます。今までの方向性を180度変える決断をするティ・チャラにしびれました。。。
<そんなわけで>
これまでの映画の中でトップクラスに黒人をかっこよく描いた作品で、とても面白かったです。かっこいいというのは、ブラックパンサーのフィジカルな強さだけではありません。現実でも虐げられてきた歴史を持つ黒人が、その怒りをぶちまける内容ではなく、まわりに手を差し伸べる作風が特にそうです。虐げられてきたからこそ、他人の痛みがわかるっていうふうにも感じられて素敵だなと思いました。民族音楽全開のBGMも雰囲気があってよかったし、ぜひ観てほしい映画です。この次の『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)でもワカンダは重要ですし!