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ただのセールスマンが運び屋になる話だけど、ベネディクト・カンバーバッチの体を張った演技に圧倒された『クーリエ:最高機密の運び屋』

【個人的な評価】

2021年日本公開映画で面白かった順位:33/210
   ストーリー:★★★★★
  キャラクター:★★★★★
      映像:★★★★☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★★☆

【以下の要素が気になれば観てもいいかも】

サスペンス
ヒューマンドラマ
キューバ危機
スパイ

【あらすじ】

東西冷戦下、米ソ間の核武装競争が激化。世界中の人々は核戦争の脅威に怯えていた。そんなとき、CIAとMI6のエージェントが1人の英国人に目を付けた。その男、グレヴィル・ウィン(ベネディクト・カンバーバッチ)は東欧諸国に工業製品を卸すセールスマン。

彼が依頼された任務とは、販路拡大と称してモスクワに赴き、GRUのペンコフスキー大佐(メラーブ・ニニッゼ)から受け取ったソ連の機密情報を西側に持ち帰ることだった。あまりに危険なミッションに恐れをなし、ウィンは協力を拒否するが、世界平和のために祖国を裏切ったペンコフスキーに説得され、やむなくモスクワ往復を引き受ける。

だが、政治体制を超えた友情と信頼で結ばれた男たちは、非常な国家の論理に引き裂かれ、過酷な運命をたどることに―。

【感想】

これは想像以上に面白い映画だったので、ぜひオススメしたいですね!ただのセールスマンだった男が突然運び屋を依頼され、最後は捕まってしまう悲劇を描いた映画です。ちなみに、MI6やCIAも出てくるけど、ジェームズ・ボンドもフェリックス・ライターもいません(笑)全然違う職種の人がスパイになる話ではあるものの、コメディやアクションじゃないんですよ!濃厚なサスペンスでありヒューマンドラマで、しかも実話をベースにした話。主人公のグレヴィルを演じたベネディクト・カンバーバッチの演技に脱帽でした!

ネタバレってほどでもないですが、やや物語の内容にも触れている部分があるので、読む際には十分ご注意ください。

<キューバ危機を回避するためのミッション>

舞台は1962年。キューバ危機のときの米ソおよびイギリスがメインですね。キューバ危機というのは、旧ソ連がキューバに核ミサイルを配備し、アメリカと核戦争を起こしかねない一触即発の事態となった出来事です。世界史専攻じゃなくても、名前ぐらいは聞いたことある人も多いかもしれません。

それを回避するために、秘密裏にソ連側の情報をリークするペンコフスキー。そして、その情報を持ち帰るグレヴィル。この2人が本作のカギを握る人たちです。モスクワのツテを失ってしまったMI6とCIAは、一般人ならバレないだろうとグレヴィルに運び屋を依頼するのが、今作の始まりです。

<実話ベースの映画ならざる手に汗握る面白さ>

伝記モノとか歴史モノとか、実話ベースの映画って史実から大きく逸れることができないからか、淡々と進むことが多い印象です。でも、この作品は内容が内容なだけに、常に緊張感を持って観ることができます。いつバレるんじゃないかってヒヤヒヤしますから。しかもですね、そのスリリングな展開だけに終始しないのがこの映画のいいところなんですよ!運び屋を担う上でのグレヴィルの心境の変化、そして、ペンコフスキーとの友情。それらもこの映画の見どころだと思います。

<運び屋に従事するがゆえのストレス>

グレヴィルは仕事も家庭も両方大事にする人で、基本穏やかな性格な人物でした(浮気を1回したことがあるようですがw)。ところが、運び屋を始めてから、徐々に筋トレを始めたり、妻に激しく求めたり、些細なことで子供を叱ったりと、これまでの彼には考えられない行動が目立ち始めます。それだけ、運び屋としての仕事がストレスフルっていうことでしょうね。いつ家族と会えなくなるかわからない危険と隣り合わせで、気を張っているってのがよくわかる描写です。

<国を超えた友情>※ちょっと本編の内容に触れています!

そんなグレヴィルとペンコフスキーの信頼関係から育まれた友情も感動的です。ペンコフスキーはスパイ活動がバレて捕まったしまうんですが、MI6もCIAも彼を見捨てようとします。「プロだからこそ、人は利用するだけ」と。でも、現場で何回もペンコフスキーと交流してきたグレヴィルにとって、それは人ならざる行為。国同士は敵対していても、そこに生きる人々みんなが憎み合っているわけではない。グレヴィルとペンコフスキーはお互いに平和を望み、家族を守りたいという気持ちがあるのをわかっていた。だから、グレヴィルはペンコフスキーを救うために、危険を顧みず、それまで半ば嫌々やっていたスパイ活動を自ら志願します。「今こそ俺を利用しろ!」と。ここのグレヴィルはかっこよかったです!

<ベネディクト・カンバーバッチの役者魂に脱帽>

そして、この映画で一番注目したいのが、収容所に入った後のベネディクト・カンバーバッチの姿です。彼はリアリティを追求し、数シーンのために頭を丸め、体重も10kg減らしたほど。さすがに『マシニスト』(2004)のクリスチャン・ベイルほどではないですが、それに近い雰囲気があって圧倒されましたね。ここまでやるんだと。

<その他>※オチに触れています!

ペンコフスキーが西側にリークした情報は実に5,000以上もあったそうで、史上最大の情報価値と言われているとか。史実なので言ってしまいますが、グレヴィルは後に釈放されるものの、ペンコフスキーは処刑されてしまいます。平和を願ってのこととはいえ、祖国を裏切ったことに変わりはないですからね。。。当時としては仕方ないことかもしれませんが、、、悲しいですね。。。彼のおかげで、多くの人命が救われたかもしれないのに。

ただの素人の運び屋が主人公という、それだけで興味を引く設定ではあるんですが、それ以上のスリリングな展開と国を超えた友情が素晴らしい映画でした。これはぜひ映画館でお楽しみいただきたいです。


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