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旧態依然とした態勢に風穴を開けるのはいつだって外部の人間なんだなと思った『ショコラ』

【個人的な満足度】

「午前十時の映画祭13」で面白かった順位:15/22
  ストーリー:★★★★☆
 キャラクター:★★★★☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★★☆

【作品情報】

   原題:Chocolat
  製作年:2000年
  製作国:アメリカ
   配給:アスミック・エース、松竹
 上映時間:121分
 ジャンル:ヒューマンドラマ
元ネタなど:小説『Chocolat』(1999)

【あらすじ】

※公式サイトより引用。
フランスの小さな村に赤いマントの女性ヴィアンヌ(ジュリエット・ビノシュ)とその娘が越してきた。伝統と規律を重んじるその村で、母娘はチョコレート・ショップを開店する。その店内は見たこともない美味しそうなチョコで溢れ、村人たちは自分の好みにピタリとあわせて勧められるチョコの虜になっていく。

村の雰囲気も明るく開放的になっていくが、昔からの伝統を守ろうとするレノ伯爵(アルフレッド・モリーナ)の反感を買うことに。

【感想】

2024年最初の「午前十時の映画祭13」にて。2000年のアメリカ映画です。チョコレートをモチーフにしてはいますが、内容としては古いしきたりに抗う人々を描いた、なんだか大人の『チャーリーとチョコレート工場』(2005)のような話でしたね。

<保守派と改革派の軋轢>

自分が長く身を置いているコミュニティに、ある日突然外部の人間がやってきたら、あなたならどう思うでしょうか。神のような優しい心で受け入れられるか、それともすでに出来上がった和を乱すのではと不安視するか。この映画はまさにそんな状況を描いた作品だと思います。

古いしきたりの残る村にやってきた母娘。チョコレート店を開き、村に馴染もうとするんですが、この村は代々村長一族が支配する閉鎖的な空間。表面上は愛想よく振舞う村長ですが、いきなりやってきたどこの馬の骨ともわからぬ母娘を追い出そうと画策します。

村人の多くは古くからのしきたりの中で暮らしていますが、部外者のヴィアンヌには関係のないこと。別に横暴に振る舞うわけではまったくないですが、彼女は彼女のペースで暮らしていきます。ただ、どんなコミュニティの中にもルールに馴染めない人や中立の立場の人はいるもので、そういう人はヴィアンヌの元に寄ってくるんですよね。しかも、ヴィアンヌにはチョコレートという武器があります。ややファンタジックな設定ですが、彼女にはその人が必要としている効果を与えるチョコレートをピタリと当てることができるんですよ。こうして彼女は信頼を得ていきます。

<新たな価値観をもたらすのは外部の人たち>

そんなこんなで、一部の村人たちとは友好的な関係を築いていくものの、相変わらず村長との折は合いません。そんなときにジプシーの一団が船で流れ着きます。ジプシーというのは移動型民族で様々な地域を転々としている人たちのことです。実は、ヴィアンヌ自身もジプシーという括りではありませんが、母親が流れ者の一族で自身もその伝統を守り各地を転々としていました。なので、ジプシーのリーダーであるルー(ジョニー・デップ)とはウマが合うんですよ。ここまでくると、村の伝統を守ろうと躍起になる村長の努力も空しく、閉鎖的な村にはどんどん新しい風が入ってきます。

怒りが頂点に達した村長は非人道的な行為に出るのですが、そこはご自身の目で確かめてください(笑)普通そこまでやるかって思いましたけれども。最終的には、ひょんなことからヴィアンヌのチョコレートを口にした村長もそのおいしさに気づき、彼女らを認める形にはなるものの、映画だとここはだいぶ唐突に感じますね(笑)あんなことまでしておいて、急に手の平返しすぎじゃないかって。

でも、個人的には村長こそが伝統に縛られてきた人なのかなと思います。新しい風が入ってくることを目の当たりにして、変化する必要性を感じつつも、代々続いてきた一族のスタンスを捨て去ることもできず、板挟みになっていたのではなかろうかと。それが、チョコレートをきっかけに吹っ切れたのかも?

結局、ヴィアンヌが村にやって来たことで、この村はそれまでの古いしきたりに固執することから解放されたわけですが、実はヴィアンヌ自身も解放されたことがありました。彼女も子供の頃から母親に連れられて流れ者として生きてきましたが、何だかんだでまわりとうまくやれそうなこの村に腰を据える形で幕を閉じたので、ヴィアンヌも流れゆく身から抜け出せたんだなと。なんか、各地を転々としてその場に新しい風を吹き込んで次の場所へ移るような印象だったので、これは1話完結型のドラマとして成立しそうな設定でもあるなって思いましたね。

<そんなわけで>

新たな価値観をもたらしてくれるのは、外からの人間なんだなっていうのがよくわかる映画でした。これまでの常識が通用しない身だからこそ、良くも悪くもフラットな目で物事を判断できるんでしょう。

それにしても、船でやって来たルーに対して「海賊?」とヴィアンヌの娘が尋ねるシーンがありましたけど、演じたジョニー・デップは後に『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズ(2003-2017)に出ますし、チョコレートつながりで『チャーリーとチョコレート工場』にも出るんですから、すごく運命めいたものを感じました(笑)


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