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物語のようなもの

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短いお話を思いついた時に書いています。確実に3分以内で読めます。カップ麺のできあがりを待ちながら。
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2024年7月の記事一覧

『海の日をください』 # シロクマ文芸部

『海の日をください』 # シロクマ文芸部

「海の日をください」
その子は、梅雨の明けたある日、突然店にやって来た。
このあたりでは見かけない顔だ。
どこでこの店のことを聞いたのか。
どちらにしろ、そんなものを売るわけにはいかない。
それに、仮に売ったとしても、この幼い子には手に余るだろう。
そこらじゅうに溢れ出して、収拾がつかなくなるに違いない。
そうなれば、こんな子に売ったこちらの責任問題にも発展しかねない。
「海の日はね、大人にならな

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『海のピ』 # 毎週ショートショートnote

『海のピ』 # 毎週ショートショートnote

都市伝説というものは、都市に限らない。
人の住むところには、その土地だけに伝わる言い伝えがあるものだ。
その言い伝えを見たり、体験したと言う者もあれば、でたらめだと笑い飛ばす者もいる。

ある時、その村を大嵐が襲った。
嵐が去ったあと、海岸に一片の板切れが突き刺さっていた。
見ると、「海のピ」と書かれていて、その先は砂に埋もれてわからない。
子供たちが引き抜こうとすると、長老の一人が止めた。
老人

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『夏は夜、だと?』 # シロクマ文芸部

『夏は夜、だと?』 # シロクマ文芸部

夏は夜ってか?
セイショーだか、ナゴンだか、知らねえけどよ。
ああ、ほんとはセイとショウナゴンだ、覚えときな。
でも、馬鹿言ってんじゃねえぜ。
昼間だけじゃなくって、夜の警備だって暑くて暑くてたまんねーよ。
こりゃ、熱帯夜じゃねえ、灼熱夜だぜ。
生きながらにして、焦熱地獄だ。
八大地獄よ。
せめて、あの世では天国でお願いしたいもんだね。
月の頃って、なんだ月の頃って。
そんでもって、真っ暗闇もいい

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