見出し画像

『海のピ』 # 毎週ショートショートnote

都市伝説というものは、都市に限らない。
人の住むところには、その土地だけに伝わる言い伝えがあるものだ。
その言い伝えを見たり、体験したと言う者もあれば、でたらめだと笑い飛ばす者もいる。

ある時、その村を大嵐が襲った。
嵐が去ったあと、海岸に一片の板切れが突き刺さっていた。
見ると、「海のピ」と書かれていて、その先は砂に埋もれてわからない。
子供たちが引き抜こうとすると、長老の一人が止めた。
老人とは、何かを察知するものだ。
その後、その板切れを抜こうと手をかけた者がいたが、彼らは一様に、突然現れた大波に呑み込まれたと言う。

「海のピアノじゃねえか」
「いいや海のピストルだ」
「違う。あれはミシシッピの海。昔は右から書いたんだ」

今ではその板切れも古くなり、文字も消えかかっている。
しかし、その村では誰もそれを引き抜こうとはしない。

ところで、「海のピ」のあとは、いやいや、それはやめておこう。
それと、「海のピ」の検索もやめておきなさい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?