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マザーズから東証一部(プライム)に、スッと上がれる会社、時間がかかる会社

 日本の株式市場では、毎年約100社が新たに上場し、その大半が東証マザーズです。上場直後は、株価も跳ね上がりメディアの注目も高いですが、その後2年も経つと株価も注目も停滞してしまうことがあります。一方で着実に市場からの評価を高め、東証一部への指定替えが早期に行われる会社もあります。その差はなんでしょう。
 市場区分変更を踏まえ基準が厳しくなった今でも通じる点を考察します。

① 業績向上

 ひとつは当然のことながら業績です。利益基準をしっかりクリアできればベストです。上場時の期待を着実に上回り、売上・利益とも順調に伸ばせている会社、うらやましいですね。High Growth株なら年率30%以上、そうでなくても新興市場なら二桁成長は目指したいものです。

② 新規事業成功・M&Aの活用

 とはいえ、業種によっては既存事業だけで高成長を果たし続けるのは難しいこともあります。そういう企業でも、新規事業をしっかり育て非連続な成長を果たしているケースも見られます。自社内で早期立ち上げが難しければ、M&A等を活用し「時間を買う」ことも可能です。迅速なM&Aの実行に加え、PMI (Post Merger Integration)と呼ばれる被買収企業の経営取込みが上手な会社は、経営者だけでなくスタッフも優秀なのであろうと思います。

③ IRの量と質

 利益水準でプライム市場への指定替えをクリアできなくても、時価総額基準でクリアするには、株式市場からの評価を確実に得る必要があります。
 スーッと一部に移行した会社は、いずれも積極的なIRを行っています

 まず伝えたいのは、行動量の多さが必要ということです。上場後は、機関投資家に20社会って、1社買ってくれれば御の字です。四半期に10件くらい投資家面談をやって「株価上がりません」とか「手ごたえがない」と思っている経営者(IR担当者)は、数を打ちましょう。

③ー1 量を打つ意味

 でも、当社のIPOロードショーでは20社会って19社から注文がありました、という方へ。公開価格は「IPOディスカウント」がついていて、フェアバリューから何割か安い値段で売られていたことをお忘れではありませんか?日本では公開価格を決定する時点で20~30%ディスカウントと設定することが多いです。ところがふたを開けてみると初値が公開価格の2倍、3倍になることも珍しくありません。つまりマザーズIPOは投資家にとっては50%オフ、70%オフの大セール商品です。一方、上場後はフェアバリューで市場から買うことになります。

 あなたがアパレルショップの店長だとします。50%、70%オフの大セールにはお客さまがたくさん来ますし、かなりの確率で買ってくれます。セールを終え定価に戻したら、お店に訪れる人の多くは見るだけだったり試着で終わったりしますよね?20人来て1人買うかなーという感じかもしれません。店長としてはまず来店者数を増やす施策をめちゃくちゃ考えるはずです。顧客層や天候、周辺のイベント。色々やることはあります。

 上場後の株式はフェアバリューで取引されます。定価ではなく時価ですが、ディスカウントされていないという意味では通常販売のアパレルのようなものです。ただ突っ立っていても売れないのです。 
 そして、来店したお客様には、定価でも買ってくれるよう試着を促したり、商品の特徴を丁寧に伝える接客を店員に指導しますよね?

③ー2 質

 その接客がIRミーティングの質です。単なる質疑応答にとどまらないやりとりができてますか?
 アパレルの店員は「この素材はなんですか?」と聞かれて「ポリエステルです」だけではく「洗濯機で洗えてお手入れ楽です」とか「特殊な繊維で涼しいんです」とかひと言付け加えますよね?

 IRでも「広告宣伝費はいくらですか?」などのシンプルな問いに、「〇〇百万円です」という回答ではなく、マーケティング戦略の問いと受け止めること。過去の数字の説明ではなく、将来の構想を語ってほしいです。この企業の株価はまだ上昇しそうだと思ってもらえることが必要です。(ウソでなくフェアな範囲で)

 そしてアパレルと違う点は、商品(企業)は生き物なので、日々状態が変わること。上場時に練りに練ったエクイティ・ストーリーは1,2年もすると環境変化や内部の事情等で変化があるはずです。その経営戦略の変化の根拠や、今後の展望を語れる、そんなIRが必要になります。

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IR(インベスター・リレーションズ)の経験などに基づいたテーマで記事を書いています。幅広い層のビジネスパーソンにも読んでもらえたら嬉しく思います!