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『100分de名著 資本論』より

本日は、NHK『100分de名著』の2021年1月のテキストになっているカール・マルクス『資本論』からの学びの抜粋です。


『資本論』を読まずに、資本主義の問題を学びたいという私のニーズを満たすテキスト

社会主義/共産主義思想の源流は、カール・マルクスの『資本論』にあるとされます。『資本論』全三巻の内マルクス自身が著したのは一巻のみで、盟友だったフリードリヒ・エンゲルスが、マルクスが遺した原稿や膨大な研究資料を基に二巻以降を監修しています。

その著述内容や思想は、『資本論』以降の思想家・学者・研究家・政治活動家によって、歪曲されたり、プロパガンダとして利用されたりしながら、世界中に伝播していきました。世間一般に定着している考え方やイメージには、本来のマルクスの主張とは違うものも多いと聞きます。

テキストを監修した斎藤幸平氏(経済思想家、大阪市立大学准教授)は、

『資本論』は、経済学をもとより、哲学、文学、歴史から自然科学まで、幅広い素養が求められる難攻の大著。「150年も前に資本主義を論じた本を、今さら苦労して読んでも…」と躊躇してしまうかもしれません。

P5

と書いています。私が手を出せなかったのもまさにこの難解さが原因で、これから先も『資本論』原典に挑む可能性は低いです。マルクス主義が弱体化し、『資本論』が急速に読まれなくなったこともあり、

資本主義を批判する者がいなくなり、グローバル化が一気に進み、「新自由主義」という名の市場原理主義が世界を席捲、世界全体のあり方を資本主義が大きく変えていった
ー略ー
このまま資本主義に人間の未来を委ねておいて、本当に大丈夫なのでしょうか。様々な問題が、想像を超えるスピードで拡大し、深刻化しているのに、なぜ資本主義にしがみついて、”経済を回し”成長し続けなければならないのでしょうかー。

P5 & P7

という斎藤氏の提起する危機意識は、丁寧な議論と検証が必要とはいえ、かなり共感します。

現代の資本主義は、『資本論』が書かれた当時よりも格段に進化・発展していて、社会福祉制度、労使協定、環境規制など社会主義思想的な制度もある程度組み込まれてはいます。今から昔ながらの社会主義/共産主義を当て嵌めようと叫ぶのは無理があるし、大々的な支持も得られないでしょう。

とはいえ、資本主義がもたらすであろう帰結への違和感、負の側面にもっと真剣に対峙すべき、と考えるようになってきました。資本主義のメカニズムを学ぶために、150年以上前の名著『資本論』を今から学び直す意義は大きいと思います。

どこから読んでも面白い

このテキストは、どこから読んでも面白い内容になっています。斎藤氏の問題の切り取り方が巧みで、挑発的な副題が付けられています。

第1回 「商品」に振り回される私たち
第2回 なぜ過労死はなくならないのか
第3回 イノベーションが「クソどうでもいい仕事」を生む!?
第4回 <コモン>の再生ー晩期マルクスのエコロジーとコミュニズム

目次

本テキストは、無条件に受け容れてしまっている資本主義がもたらす不都合な帰結について、立ち止まって考える為の補助線になるでしょう。

正直に言えば、人生前半戦を何とか泳ぎ切り、人生後半戦をのんびりとやり過ごしたいと考えている私の中には「大洪水よ、我が亡き後に来たれ!」という資本家のスローガンに阿りたい気持ちはあります。これから先、あくせく働かずとも逃げ切れる人生を送りたい、という不埒な心もあります。

<コモン>は私の持つ考えや願望と親和性のある議論です。物質的な豊かさはもう十分です。贅沢品を買ったり、贅沢旅行をしたりする為に、労働量を増やそうという意欲は沸いてきません。社会的地位や名誉や権力は、そこから得られるメリットよりも、デメリットの方が面倒臭そうなので諦めます。人格破壊的な嫌がらせや個人攻撃に晒されない限り、所属するコモンを維持する為に必要な我慢まらするし、積極的に奉仕貢献する準備もあります。

勝った者、強い者が、無限大にのさぼり続けることができてしまう資本主義には、修正を迫りたい思いが強いです。それには対案を論理的に語れるしっかりとした理論が必要です。本書を読んで、『資本論』を今学んでおく意義は非常に大きいと感じました。

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