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「幸せな人生」を捉え直す

本日は、佐渡島庸平・石川善樹・羽賀翔一『感情は、すぐに脳をジャックする』(GOKKEN 2021)のあとがき ”「幸せ」とは何か~あとがきにかえて~”の読書感想文です。久々に長年追究してきた「幸せ」に向き合って、考えてみます。

きっかけはbook cafe

この文章は、株式会社コルク代表取締役社長を務める佐渡島庸平氏が書かれたものです。佐渡島氏は、講談社出身で漫画『ドラゴン桜』や『宇宙兄弟』などを手掛けた敏腕編集者として著名な方です。

この文章の存在は、私が普段愛聴している『荒木博行のbook cafe』の2023/4/7放送分で知りました。この所、週末のWalking中にまとめて聴くことが増えており、この回もそうでした。例によって、荒木氏の解説が抜群の補助線となり、素晴らしい学びになりました。原文にあたりたくなり、本書を購入して読むことにしました。

「幸せの人生とは」

1000字程度のこの短いエッセイは、佐渡島氏がまだ中学生だった頃の家族ドライブ中に、父から言われたという問いかけではじまります。

「幸せな人生って、どんなものだと思う?」

P249

父の答えは以下だったと書かれています。

「気が狂って、何が起きても、自分が世界を統べている王様と思っている人だよ」

P249

また、同じような内容を語った例として、マーク・トウェイン『不思議な少年』の中の文章も引用されています。正気の人間が、「幸せ」を感じることは不可能だ、という発想です。

佐渡島氏は、その考えに異を唱え、「狂う」以外の方法で「幸せ」に到達すると思い至り、本書の共著者である石川氏の

「感情を知ると、人は幸福になれる」

P252

ということばから、「幸せ」とは何かへの探究を進めていきます。

資本主義社会の中で、成長は良いこととされている。経済全体も、会社も、個人にとっても、すべからく成長することが良しとされている。成長するために、人はさまざまなことをしなければならない。そして何者かにならないといけない。「する」を繰り返して「なる」を達成することが成長につながると、多くの人は信じている。

P252-253

この考察には、深く考えさせられました。律儀に成長を追い求めることの虚しさが身に沁みるようになって以来、成長=善と信じこんで、マウントを取り合っている光景を目にするたびに、距離を感じてきました。凡そ「何者」にもなることなく人生を終えるであろう私が言うと、負け惜しみにしかなりませんが、一流の仕事人である佐渡島氏のことばであれば、説得力が段違いです。

人間関係は条件付き… からの可能性

私は、人間関係は、相手からの無条件の肯定はあり得なくて、条件付きでしか成立しないもの、という諦めをもって人生に臨んでいます。自分が、相手から無条件に受け容れられることなんてなくて、相手から自分が、必要な人、便利な人、いい人、という好意的な評価を得るか、無視するとヤバそう、馬鹿にすると後で仕返しされそう、侮っていると陰でボロくそに叩かれそう、と怖れられない限り、関係構築はできないと思っています。

年齢を重ねるうちに、相手の期待に応えて態度や言動を調整し、努力して関係を発見・維持・発展していくことに一抹のしんどさを感じるようになり、社交には距離を置くようになっていました。本稿で言えば、常に「する」が必要な関係です。

その考えを乗り越える為のヒントとして、佐渡島氏は「いる」という絶妙なことばを編み出してくれています。気が楽になりました。

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