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『嫌われる勇気』を読む【第一夜】

本日の読書感想文は、岸見一郎・古賀史健『嫌われる勇気』です。

原点に立ち返りたい気分なので

本書は2014年に発売されて大ベストセラーになりました。私も初読時に感銘を受け、何度目かの再読になります。

本書に書かれたモノの考え方を自分自身の世界の捉え方の指針にしよう、と決意したことを覚えています。この本を読み込まなければ、自分自身が他者からの承認欲求が強く、他者評価で自分を規定するタイプであることに気付かなかったかもしれません。アドラー心理学(哲学)は割ととっつき易い概念ではあるけれど、日々の行動に反映して実践するのがすこぶる難しいという感触を持っています。

今回、読書ノートを作りながら、少しづつ丁寧に読み進めたいと思います。

新鮮だった目的論

本書は、人生に問題を抱える(ように見える)青年と京都の哲人との対話による物語風で進んでいきます。哲人の専門がギリシア哲学ということもあり、対話形式で物語が展開するスタイルが採用されています。

冒頭で青年が、『世界はシンプルであり、人生もまたシンプルである』と言い切る哲人に対して、言い放つ以下の内容はなかなかライブ感があります。

大人になるにつれ、世界はその本性を現わしていきます。「お前はその程度の人間なのだ」という現実を嫌というほど見せつけられ、人生に待ち受けていたはずのあらゆる可能性が”不可能性”へと反転する。幸福なロマンティシズムの季節は終わり、残酷なリアリズムの時代がやってくるわけです。(P4)

この青年の固定観念化している世界観を哲人が論破する理論は実に鮮やかです。過去の原因が結果を支配するのだという原因論を否定し、今の目的で考える目的論を説明します。

自分の経験によって決定されるのではなく、経験に与える意味によって自らを決定するのである。(P30)

他にも例題が幾つか示される中で、この目的論の考え方の有効性が非常にクリアに伝わってきて、共感できるものではないでしょうか。

過去に支配されない生き方

人は感情にも過去にも支配されない、というアドラー心理学の教えはなかなか強力で、あくまでも自分自身の抱える問題は、勇気の有無の問題だと迫ってきます。

静かだけれど、心に強く響いてくることばが用意されています。

答えとは、誰かに教えてもらうものではなく、自らの手で導き出していくべきものです。(P40)
大切なのはなにが与えられているかではなく、与えられたものをどう使うかである。(P44)

ライフスタイルを変えること

現状を変えたいと願うならば、アドラー心理学のいう「ライフスタイル」(人生における思考や行動の傾向)を変えないといけない。本書では「ライフスタイルを選び直す」という表現が使用されています。

厳しい教え‥

青年が口にするように、アドラー心理学の教えをそのまま実践すると、厳しい現実、好ましくない現実を突きつけられる怖さ、信じていたい自分のプライドを木っ端微塵にされる怖さがあります。どんな結果になっても、全て『自己責任』という結論に行き着くのは優しくない気もするのです。

客観的に見て、明らかに不幸な境遇に押し込められている人達が、アドラー心理学の説明する目的論によって「それは自ら招いたものである」「足るを知れ」と洗脳されてしまうのは危険だなあと感じるのです。支配層がアドラー心理学を、抑圧の正当化の道具に使わないか、という疑念があるのです。

自らの労働と献身で、特定の誰かや社会を支え続けても、経済的、社会的に十分に報われないまま生涯を終わる人が少なからずいます。本人がそれでいいのなら、他人がどうこう言う話ではない、で済ませていいのかなぁ、と素朴に思う部分があります。

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