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『酒場天国イギリス』を読む

本日の読書感想文は、小坂剛『酒場天国イギリス 英国文化を味わい尽くす』(中公新書ラクレ2016)です。

英国に魅せられた著者の本

本書は、図書館で借りて読んだら大変面白かったので、じっくり読み直したいと思い、購入して蔵書化することに決めました。

著者の小坂剛氏は、読売新聞メディア局編集部次長という肩書き(2016年時点)の現役新聞記者です。ロンドンに留学し、1年2カ月を過ごした際の経験から、英国の魅力の虜になったようで、まさに

ロンドンに飽きたということは、人生に飽きたということ。ロンドンには人生が与えてくれるすべてがあるのだから。

サミュエル・ジョンソン(Samuel Johnson
作家)

を体現された人です。

本書は三部構成全16章になっていて、3章以降は、英国に所縁のある人々が登場します。酒(パブ、ウイスキー)に文学にロック…… 私自身が大好きで、興味のあるテーマばかりです。

第1部 パブとエールのある風景(第1~5章)
第2部 ロックと文学に浸る(第6~10章)
第3部 シングルモルトとケルトの魂(第11~16章)

テーマ選定がいい

第1部は、パブ(Public House)、第3部はスコットランド文化が軸ですが、第2部は、個別テーマ毎に章が構成になっていて、読み進めていくのが楽しかったです。

第6章=ピーター・バラカン:ラジオ
第7章=東郷かおる子:ブリティッシュ・ロック
第8章=河村幹夫:コナン・ドイル(シャーロック・ホームズ)
第9章=坪松博之:開高健
第10章=河合祥一郎:シェークスピア

第2部 ロックと文学に浸る

ブリティッシュ・ロックやウイスキーには、多少知見があるのでかなり楽しめました。一方で、シャーロック・ホームズや、開高健や、シェークスピアには、本書を読むまでそれほど関心も知識もありませんでした。本書がそれらについてより深く知りたい、というよいきっかけを与えてくれました。

人生をよりよく生きる

私は、過去にアメリカに住む縁を得たので、今もアメリカへの特別な思いがあります。もっとも高校時代に一番憧れていた外国は、英国でした。アメリカンロックよりブリティッシュロックの方を好んで聴いていたし、世界に冠たる大英帝国を築いた風土と蓄積されたしたたかな知見には、今でも敬意の気持ちを抱いています。

一方で、怖ろしく残酷なことを、合理的かつ狡猾にやり遂げてきたのが英国であり、暗黒の歴史を持っていることも知識として知っています。それら黒歴史の部分は取り除き、本書を通じて、英国で発達した庶民文化には改めて興味を持ちました。英国については、政治史や経済史よりも文化史や風俗史を辿るのが面白いと思います。

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