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『ひとりをたのしむ 大人の流儀10』を読む

本日は、伊集院静『ひとりをたのしむ 大人の流儀10』(講談社2021)の読書感想文です。

200万部突破している大人の流儀シリーズ

伊集院静(1950/2/7-)氏は、作家・エッセイスト・作詞家として物凄い量の仕事を残している人です。ひっきりなしに仕事が舞い込むということは、社会のニーズがある、社会から求められている人だという証明です。

この『大人の流儀』シリーズは、週刊現代に毎週連載されているエッセイを単行本化したもので、10冊累計200万部を突破しています。2019年9月7日号~2021年2月13日号までを収録した本作でも伊集院節が炸裂しています。

自分の好きなものはとことん偏愛し、嫌いなもの・品性を感じないものには容赦なく鉄槌を下す、という美学が貫かれています。近藤真彦、松山英樹、松井秀喜、梶山静六など贔屓にする人への温かな眼と、小池百合子、孫正義、橋下徹などへの鋭く突き放すような視線は対照的です。

私は、伊集院氏の文体が好きで、大いに影響を受けているという自覚があります。ただ私では、到底お近づきにはなれないだろうな、氏からは認められないだろうな、という予感があります。氏の人間の評価基準は相当厳しいような気がしています。

過去には、男尊女卑的な言動が話題になったりしました。自ら”瞬間湯沸かし器”と認める、短気な人でもあるようです。実生活では、女にとことん優しく、男に徹底的に厳しい、という話もあります。

大病を乗り越えて

2020年1月にはクモ膜下出血に見舞われたものの、後遺症は残らず、奇跡的な回復能力を発揮して5月中旬には仕事に復帰しています。(本書「真っ先に咲く花」より) 

父の口癖の『働かざる者食うべからず』が沁み込まれていると言い、定年を過ぎてやることがないと嘆く人に言うことばが私の心にも刺さります。

「六十五歳を過ぎて何かをしたかったら、それまで経験した苦労、辛さの何倍もの苦節の時間と対峙すべきです。”ひとつのことを成し遂げた自分が今更なぜ、そんな苦労を”という考えではダメです。最後の苦労をするのです。いや最後まで大変なのが仕事です。これまでの勲章を捨ててしまいなさい。それは過去のことであって、今日、明日からの日々の仕事や、生き甲斐とはまったく別のものです。ほんの一年か、一年半、苦労してみるのです。勿論、若い人に叱られることもあるでしょうが、その歳になったら年齢など忘れてしまいなさい。きっと何かを得られます。」(「新しい自分」P23-24)

幸運にもこの世に生を受けた以上、最後まで懸命に生き抜く、新しい自分に向き合い、もがく努力を失ってはいけない、という教えと理解しました。

新社会人へ贈る言葉2021

伊集院氏は、毎年4月1日にサントリーの新聞広告で、新社会人へのメッセージを発表しています。2021年の題名は、『今までにない発想と、君だけの情熱を』。私たちが、企業が、会社が求めているものは『今までにない発想と君だけの情熱』であり、人を、社会を、豊かにするためには品性が必要だと綴っています。

4月は、新しい環境に身を投じる人が増える季節です。社会のカレンダーからは逸れた生き方を選択した私も、ここではない場所へと、半歩でも、一歩でも踏み出していくつもりです。

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