小林正樹Mark

株式会社イルカ創業者/代表取締役。シーンに合わせて4つの形態に姿を変えるモバイル変身自…

小林正樹Mark

株式会社イルカ創業者/代表取締役。シーンに合わせて4つの形態に姿を変えるモバイル変身自転車irukaを販売中。出荷実績15ヶ国。創業メンバーだった上場企業の役員を辞めて業界経験ゼロで折りたたみ自転車メーカーを始めちゃった人。 https://www.iruka.tokyo

最近の記事

iruka、北京を行く

11月、商談のため北京に行くことになった。irukaの試作1号車から3号車までは上海近郊の太倉という街の工場で作っていたため、かつては頻繁に中国を訪れていたが、工場を台湾に変えてからは機会がなく、10年ぶりのメインランドチャイナ訪問となった。 わざわざ「10年ぶりの中国訪問」ではなく「10年ぶりのメインランドチャイナ訪問」と書いたのは理由がある。中国政府は台湾と香港も「ひとつの中国」という見解なので、その定義に従うと台湾と香港を訪れたことも「中国訪問」にカウントされて、10

    • iruka、桜の船路

      東京湾から船で目黒川を遡って水の上から桜を眺めるクルーズツアーがあると知った。 目黒川の桜は、それは見事だ。ゆえに花見の季節には、川沿いの遊歩道は常に人でごった返している。船上から人込みを気にすることなく目黒川の桜を楽しめるとはすばらしいではないか。調べてみると、二日後の13時の便にわずかに空きがあったので予約する。 午前中に文京区某所で所用がある。ブルーのiruka Cで家を出る。京都のコゼバッグさんで作ってもらったカスタムオーダーバッグに荷物を詰め、iruCatchで

      • irukaと故郷に帰る

        一週間ほど、東京を離れて実家に帰ることになった。 僕の故郷の静岡市は、市内の高校生の85%が自転車で通学している。公共交通機関が発達していないかわりに、コンパクトかつ地形がフラットで自転車で移動するのに適しているからだ。僕も、中学・高校時代は自転車でどこへでも行ったものだった。 そこで、irukaを連れて輪行で帰ることにした。 妻も同じ日から出張に出かけるというので、飼い犬のすみれを義母の家に預けに寄ることになった。目白の自宅から文京区の義母宅まではタクシーを使う。今回

        • さよならブラック・サバス 〜 iruka C開発ストーリー(2)

          新モデルiruka C、パーツの納品遅延や納品済み部品の不良などがあって出荷が遅れていましたが、このほど日本の各販売店に到着しました。 発売のプレスリリースはこちら。 iruka C誕生のきっかけを書いた前回に続き、今回はスペック決定の経緯を書いていきます。 -- やや廉価な5速コンフォートスペックのirukaを作りたいという僕のアイデアを、台湾人コーディネーターのMagumと製造パートナーJ社のChen社長は即座に理解してくれた。なにしろMagumとは7年、Chen

        iruka、北京を行く

          なんなら気分は獄門島 〜 iruka C開発ストーリー(1)

          5速コンフォートスペックの新モデル「iruka C」を発売することを発表しました。フレームはそのままに、街乗りの快適性をさらに追求したバリューモデルのirukaです。税別国内価格は179,800円、オリジナル8速モデルより税込で約36,000円お手頃です。自分で言うのもなんですが、自信作です。何回かに分けて、iruka Cが生まれた経緯や特徴を書いていきます。 -- シマノ Alfine 8のリードタイムは12ヶ月、と聞いて僕は耳を疑った。 「12週間の間違いだろう?」

          なんなら気分は獄門島 〜 iruka C開発ストーリー(1)

          コロナ禍下における世界の自転車マーケット動向。そしてirukaは

          irukaの現状を書いた記事で、コロナウイルスの流行によって自転車の需要が世界的に高まっていることに触れた。その結果、パーツの供給が追いつかず、irukaをはじめ多くのメーカーで生産が滞っていることも。 と、コロナ禍下の世界の自転車マーケット動向について体系的にまとめた日本語記事がなかなか見当たらないことに気づいたので、書いてみようと思う。 -- 世界の自転車市場規模は3.1兆円から2027年に3.6兆円へまず、そもそもの自転車のマーケットサイズと成長予測。2020年7

          コロナ禍下における世界の自転車マーケット動向。そしてirukaは

          世界にひとつだけのボルト

          2018年の春、懸案だった折りたたみ時の自立保持機構の目処がたち、僕はiruka試作7号車を連れて販売店や自転車業界の先輩方を回る「お披露目ツアー」に出た。 反応は上々だったが、と同時に、改善すべき点も多く見つかった。そのひとつに、シートポストクランプのボルトがある。 ボルトは世界的に規格が統一された工業製品であり、世の中には既製品としてありとあらゆるサイズと形状のボルトが売られている。通常、自転車メーカーはその中から条件に合ったボルトを仕入れて使えば事足りる。 が、結

          世界にひとつだけのボルト

          立った立った。irukaが立った

          次の写真は、2017年9月にインスタグラムに投稿したものである。irukaの試作6号車とブロンプトンが、折りたたんだ状態で壁際に並んでいる。 なぜ壁際だったのか。 実はこのとき、irukaは自立せず倒れてしまうため、壁にもたせかけて撮影したのだった。 一般的に自転車はチェーンリング、スプロケット、ディレイラーといった駆動機構が右側に付いている。さらにirukaは、ハンドルポストも右に折りたたむ構造である。つまり重量物が右側に集中しているため、irukaは常に右(次の写真

          立った立った。irukaが立った

          1mmの掩壕

          irukaの開発に10年かかったと話すと、フレームが大変だったのですねと言われることが多い。もちろんそれは間違いではないが、フレーム以外の細部の開発と改良も、フレームに劣らず容易ではなかった。その細かすぎてなかなか伝わらないディテールの開発の記録を、いくつかシリーズで書いてみようと思う。 -- irukaの開発を始めるまで僕はよくわかっていなかったが、自転車のブレーキと変速の操作感は、ワイヤーの取り付け方、すなわちワイヤールーティングによって大きく変わる。 つまりフレー

          283、6、46。 irukaは今

          noteを始めます。あ、株式会社イルカの創業者/代表取締役の小林正樹です。irukaという折りたたみ自転車を作って売っています。開発には思いがけず長い時間を要し、10年ほどかかりました。その経緯はこちらをどうぞ。今日は発売から16ヶ月が経過したirukaの現状を「283、6、46」の3つの数字を使って書いておきます。 -- 283 - 延べ出荷台数ひとつめの数字は「283」。irukaはこれまで1ロットあたり150台を2回、計300台を生産し、初期不良を除く283台を出荷

          283、6、46。 irukaは今