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言葉に宿る深遠な力「言霊」で幸せを掴む方法 ④ 「布瑠の言(ふるのこと)」

「言霊」による、開運法をご紹介しています。

唱えるだけで、言葉にするだけで、道を拓き、自分らしい生き方を選択できる、神道に古来より伝わる言霊のパワーを是非、体験して下さい。


神咒は自由に奉唱すれば良い

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祝詞や、神咒(かじり)に関して言及されている記事の中には、読み方やイントネーションが正しくなければ開運の効果がないばかりか、悪いものを引き寄せると書かれているものがありますが、そんなことはありません。

祝詞や、神咒というものは、一般の方が奏上しても問題ないものだけが公開されています。危険なもの、取り扱いに慎重を要する重要なものは、秘伝とされ表には出て来ることは決してありません。

また、古神道界随一の理論家、友清歓真(1888-1952)は「声の緩急大小は、其の場合と其の人の体質上の便宜に従えば良いのでかれこれ拘泥(気にしてとらわれること)を要しません」と説明しています。

ただ、「言霊」は発声音が重要ですので、言葉を間違っては意味がありません。正しく読み、正しく発声することに慣れれば、次第に自分だけのオリジナルの抑揚が身に付いてきます。

その自分なりの抑揚や、コツに従って、唱えていただければ問題はありません。

布瑠の言

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十種神宝が伝わる石上神宮

今回は、「布瑠の言」と呼ばれる神咒をご紹介しましょう。

前回は「ひふみ神歌」について解説しました。その神咒の中には「ひふみよ いむなや こと」、つまり「一」〜「十」までの数が出て来ました。

これは神道最大の謎にして、秘宝といわれている「十種神宝(とくさのかんだから)」の一つ一つの神宝を表すものだともいわれます(『先代旧事本紀』では「天璽瑞宝十種(あまつしるし みずたから とくさ)」と称される)。

今回の「布瑠の言」に出て来る数も、まさに「十種神宝」を表すものです。

この「十種神宝」について、以前公開致しました「国産みに関わった、夫婦和合の象徴「セキレイ」『神々の意思を伝える動物たち 〜神使・眷属の世界(第二十二回)』」から引用します。

『日本書紀』、『古事記』、『先代旧事本紀(せんだいくじほんぎ)』は、"三部の書"といわれる歴史書です。このうちの『先代旧事本紀』には、このようなことが書かれています。

「邇芸速日命(ニギハヤヒノミコト)」が天照大神の詔を受けて天磐船に乗り、河内の国の河上にある哮峰(いかるがだけ)に天降りました。この時に授けられたのが「十種神宝(とくさのかんだから)」です。

「十種神宝」は、「澳都鏡(おきつかがみ)」、「辺都鏡(へつかがみ)」、「八握剣(やつかのつるぎ)」、「生玉(いくたま)」、「死反玉(まかるがえしのたま)」、「足玉(たるたま)」、「道返玉(ちがえしのたま)」、「蛇比礼(へびのひれ)」、「蜂比礼(はちのひれ)」、「品物比礼(くさぐさのもののひれ)」、の合計十種の鏡、剣、玉、領布(ひれ)のことを指します。

鏡、剣、玉といえば「八咫鏡(やたのかがみ)」、「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」、「八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)」の「三種の神器」がすぐに頭に浮かびますが、領布とは一体何なのでしょうか。

「領布」は「比礼」とも書き、主に奈良時代に用いられた女性の装身具の一種で、肩にかける帯状の薄い布のことです。この領布には呪力があるとされ、振れば災いを祓うことができるといわれていました。

『古事記』には、この領布に関する記述が見られます。

大国主神がまだ「大穴牟遅神(オオナムジノカミ)」という名であった頃、根の国の「須佐之男命(スサノオノミコト)」の家を訪ねました。そこでその娘である「須勢理毘売命(スセリビメノミコト)」と出会い、恋仲となります。

須勢理毘売命は、「とても立派な神が来られました」と大穴牟遅神を家へ招き入れましたが、父である須佐之男命は気に入らない様子。大穴牟遅神の力を試そうと、蛇のいる部屋へ泊まるように言いつけます。

須勢理毘売命は、大穴牟遅神に蛇比礼を手渡し、蛇が噛みつこうとしたら蛇比礼を三度振るように伝えました。言われたとおりにすると蛇は噛みつくことなく静まり難を逃れることが出来ました。

次の日の夜は、ムカデと蜂のいる部屋で寝るようにいわれ、今度は蜂比礼を授けられ、同じように蜂比礼を三度振ると、ムカデや蜂に襲われることなく無事に朝を迎えることが出来たのです。

同じく『先代旧事本紀』によると、「一二三四五六七八九十、布留部 由良由良止 布留部(ひと ふた み よ いつ む なな や ここのたり、ふるべ ゆらゆらと ふるべ)」と唱えて、十種神宝を振り動かせば、死者さえも蘇ると記されています。

布留の言、ひふみ祓詞などと呼ばれる、この祝詞は死者蘇生の言霊であり、ここに "振る" という動作を加えることで、その呪力が増大するのです。

邇芸速日命が天磐船に乗って天降る際に、天照大御神が授けたのが「十種神宝」。

神道最大の謎たる所以は、『古事記』にも『日本書紀』にもその記述がなく、邇芸速日命を祖神にもつ物部氏の伝承の一部が伝わったとされる『旧事本紀』に見出されるのみであり、「三種の神器(*)」のように、その実体を見たことがある人は誰一人としていないという点です。

「十種神宝」及び、関わる神法は邇芸速日命より、その妹の宇摩志麻遅命(ウマシマヂノミコト)に伝わり、宇摩志麻遅命はそれを神武天皇に献上します。

これにより宮中では「十種神宝」と神法を用いて、天皇の御霊を鎮めるとともに、天皇家の長久を祈る祭祀が執り行われるようになりました。

これが現在も続く、新嘗祭の前日に行われる「鎮魂祭(魂振の儀)」の始まりとなりました。

その後、石上神宮(いそのかみじんぐう)に伝えられます。主祭神の布留御魂大神(フルノミタマノオオカミ)は「十種神宝」そのものであるともいわれています。
この「十種神宝」とともに授けられたのが「布瑠の言」。

「布瑠の言」を唱えながら「十種神宝」を振り動かせば、死者を蘇らせる霊験があり、この神宝をもってすれば誰もが神威を発動できるといわれています。

【布瑠の言】

(原文)
一二三四 五六七八 九十 
布瑠部 由良由良止 布瑠部

(読み)
ひふみよ いむなや ここのたり
ふるべ ゆらゆらと ふるべ

「一」から「十」までが、「十種神宝」それぞれに対応しているのです。

それでは、「十種神宝」それぞれには如何なる呪力が備わっていたのでしょうか。

澳都鏡・辺都鏡:姿を写し出し、その栄をもたらすもの
八握剣:凶邪を罰し平らげるもの
生玉:生き生きとした活動をもたらすもの
死反玉:死者を蘇らせる働きをもつもの
足玉:その形体を具足させるもの
道返玉:浮かれゆく魂を返し止めるもの
蛇比礼・蜂比礼:這う虫、飛ぶ虫を祓い、その害を受けたときはそれを癒すもの
品物比礼:さまざまな悪鳥、悪獣のみならず、すべての妖を祓い、邪を退ける働きをもつもの

『神道の本・八百万の神々がつどう秘境的祭祀の世界』学研・ブックスエソテリカより

以上のようなものであるといわれます。

「布瑠の言」の「一」から「十」には、こうした強力な呪力が凝縮しているのです。


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