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HSP*おすすめの本『うつくしい人』西加奈子

他人の目を気にして、びくびくと生きている主人公が生きてる世界は、きっとわたしが感じていた世界そのままだけど、なぜかやさしい。
西加奈子さんは、画家で小説家な、繊細なこころで、言葉にならない言葉を、カタチにしてくれる人だ。

彼女たちから目を逸らそうと努力したのは、彼女たちに腹を立てている人たちの苛立ちを感じたくなかったためだ。それが自分に向けられたものでなくても、人の苛立ちを見ると、体の奥がぎゅう、と縮こまるような感覚を覚える。そして、苛立たれいる当人、ほとんどの場合彼らはそんなことに頓着していないのだが、彼らを恨めしく思う。どうしてあなたたちに向けられた苛立ちや非難を私が感じて、気詰まりな思いをしなければならないのか。(P15)

冒頭、些細なことで会社を辞め、ひとりで旅行に行く飛行機の中での描写から、こころが動いてしまう。

主人公は、人の目を気にして生きてきた。そしてそれに疲れて、ひとりになるために旅に出た。

旅行先のリゾートホテルで、きれいな外国人の青年とホテルのバーのカウンターで働いているふたりの、生きづらい男性と時間を共有する。
その時間が、主人公の、じぶんを取り戻す時間になる。

私の行動の基本は、全て恐怖から来ているように思う。「社会」から取り残される不安、それは、個人にとっての全世界だ。(P39)

題名の「うつくしい人」である姉を、避けている。姉はこころのままに生きて高校を中退して35歳。家に引きこもっている。うつくしい人。

でも、心のどこかでは、いつも「これで合っているのか?間違ってないか?」と思っているマティアス。誰かに答えを聞かないと、不安になる。合っている?間違ってない?(P166)

『まわりのするように、浮かないように、社会からはみ出ないように「普通」の生活を送る』努力をすること。じぶんでそれがわかっていても、恐怖から努力がやめられない。

そして主人公は、生きづらい人と、時間を過ごすことで、気がついた。
美しい、とは、何なのだろう。

姉のように、ただ「自分」であり続け、その「自分」の欲望に従って生きること、それが美しさなのだろうか。ならば、私はその美しさを持つことは、永遠に出来ない。
私はきっと、姉になりたかったのだ。(P214)

私が読んだ文庫版のあとがきに『「随分面倒な精神状態にあったのやなこの作者」と思いました。それ私。』と書かれていて、登場人物の生きづらい男子ふたりに、お礼を言っている、作者の西加奈子さんが大好きだ。

些細なことが気になり、それによって生きづらくなる繊細な人々。少しずつでいいから、自分らしく、生きていけると思えるような、そんな本に出会えたことに、こころから感謝を贈りたい。
ありがとうございました。

いまわたしは自分の欲望に従って生きることに、努力をしています。
それは恐怖から動くこととは違うけれど、難しくてときどきくじけそうになります。
ひとつずつ、じぶんにこたえていきたいと思っています。


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