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読書日記*女の性(さが)葛藤と解放

女性が書いた生々しい女性の生態を、以前は嫌いでしかたなかった。それは自己否定するように、どう感じるかということを『女 おんな』という枠に当てはめて、じぶんが拒否をしていたからでしかない。

ここにきてアレルギーだった女性の生態、さがを書いた本を読んだ。ひりひりする感覚のまま、読後の感想を書いてみる。

『あのこは貴族』山内マリコ

東京生まれのお嬢様と地方から上京して東京に浸る女、アラサー2人がひとりの男性を挟んで、じぶんの生き方を見つめる。
この本は……とくに箱入り娘の華子が婚活の末、結婚した相手にカサンドラの心境を抱き、じぶんの生き方を探していく描写が、わたしには生々しかった。
一方、地方から必死で勉強して大学に入り、挫折しつつ都会に馴染んでいる美紀は、男を通して地方も都会も、狭い世界は同じではないのかと気づく。

中学時代からなに一つ変わらない人間関係の物憂い感じ。そこに安住する人たちの狭すぎる行動範囲と行動様式と、親をトレースしたみたいな再生産ぶり。驚くほど保守的な思考。飛び交う噂話、何十年も時間が止まっている暮らし。同じ土地に人が棲みつくことで生まれる、どうしようもない閉塞感と、まったりとした居心地のよさ。ただその場所が、田舎か都会かの違いなだけで、根本的には同じことなのかもしれない。
(中略)
自分は、彼らの世界からあまりにも遠い、辺鄙な場所に生まれ、ただわけもわからず上京してきた、愚かでなにも持たない、まったくの部外者なのだ。
でもそれって、なんて自由なことなんだろう。

『あのこは貴族』P252

だれもが持ってる感情の波。それは男も女も変わらないはずだけれど、女性特有の葛藤。あのこは”貴族”。だれもが貴族願望があって、それが”普通”なのかもしれない。
そもそも普通ってなんだと、わたしは考えるのだけれど、感情や心が求めているものを無視すると心に穴が開く。それに気がついてじぶんでじぶんを肯定していくことは……簡単そうでとても難しいこと。
解説にあった1文。
わたしたちはどうすれば幸せになれるのか。ものすごく普遍的なテーマに挑戦している作品だと思う」

『甘いお菓子は食べません』田中兆子

短編が6編。みんな40代の女性。
結婚、セックスレス、親との関わり、母親としての在り方、無職の独身女の老後、そして女の性欲。
R‐18文学賞大賞受賞作が入る短編集だ。

この本は美容院で雑誌を見ていた時に、あるコラムの中で見つけた。そのコラムを書いた方のお名前は忘れたのだけど、アル中の女性のことを書いてある本だという。
「今までは中島らも著『今夜すべてのバーで』がじぶんのアルコールを飲みすぎない薬の本だったけど、この本の中の『残欠』がそれに加わった」と書いてあった。

酒は、世界との間に立ちふさがっている壁を一瞬で取り払ってくれる魔法だった。これがあれば、世界と和解できる。嫌いなものがすべて好きになれる。

『甘いお菓子は食べません』P209

一瞬で取り払ってくれる魔法は、じつは弱さだろうとわたしは思う。
素顔とか本音を他人に、夫や息子にさえ見せられないと思う弱さ。
かくゆうわたしにも当てはまることで、わたしにとっても『今夜すべてのバーで』と同様の薬本になった。
だけどもう2度と読みたくないという思いもある。
ひりひり。ズキズキ。ゴリゴリ。
頭の中で響き渡る音が、うるさい。

こうやって葛藤する。
それを越えた先に、解放はあるのだろうか。

こころの闇を抱え、誰かに助けてと言うこともなく、息を潜めて、ひきこもる。今日も明日も。

***

他にも何冊もレビューしてない本が積んである。
今はどうしてだか、痛いところに差し込んでくる言葉を読み返したい気分で、ビジネス本や自己啓発本をまったく頭が受け付けない。
立ち向かうべきは、女のさがなのかもしれないとアルコールずぶずぶの頭で考えてる。




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