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読書日記

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#読書メモ

読書日記*死にたがりの君に贈る物語

『#読書の秋2021』の課題図書に『死にたがりの君に贈る物語』という本があって読んでみた。 知らないうちに涙が落ち、一気に読み終えた。 最初は何も情報を入れないで、ちょっと斜に構えた感想を書いてみようかと思っていたら、この作者の想いを読んでしまった。 もうただの感想は書けない。 純恋のようにファンレターを書いてみようと思う。 ただ著者が読んでくれればそれでいい。 ※下記、ファンレターですがネタバレを含みます。 綾崎隼さまへ 『死にたがりの君に贈る物語』電子書籍で読ませて

読書日記*ミステリーまとめて5冊。幻想と現実

ミステリーがなぜ好きかって? ゲームのように、原因と結果と過程と仮定が、交差する世界。 「真実はひとつ」と思える展開がたまらない。 答えなんかない、と思う毎日だからこそ、「真実はひとつ」と思いたいのかも。 『間宮宙のスランプ ホーソンの精霊』池田クロエ(著)6巻目であるこの作品は相変わらず、間宮宙の推理が「気持ちいい」 まみちゅうの痛快な推理のあとでも場面転換して、これでもかと伏線を回収し、からまった糸がすーっとほどけるように、謎がとけていく。 ホーソンの精霊はどこ? 伝統

読書日記*まとめて5冊。死ぬために生きること

最近、女性が描く本ばかり読んでる気がする。文章の中の「共感」がほしいんだと思う。わたしのきもち、書いてくれてありがとう。 じゃあ、男性の書く物語は共感できないのか? 中学生の頃、太宰治の『人間失格』を読んで、どうしてこの人はわたしの頭の中がわかったのかと衝撃を受けた。 今は女性であるじぶんをやっと受け入れて「共感」したいんだと思う。醜いところもずるがしこいところも。 人として生きていくことは、死ぬことに向かうことなのかもしれない。そんな生きることを考えた5冊の本のメモ。 た

読書日記*年末年始のおとも。ミステリー3冊

小さい頃からずっと活字中毒で、本を読みながらじゃないと眠れない体質だったけど、スマホの登場により寝る前の活字摂取が滞り、動画を見ながら眠る習慣がついてしまった。 本を読むのは朝起きてすぐの楽しみ。まだ目が覚めきらないうちに物語の世界へ入り30分ほどその世界を味わってから起き上がる。 自己啓発書やビジネス本など現実世界のことが書いてあるものは、夜に読むことにしている。なんとなく眠れるし、現実をなぞりつつ反省やら希望が見えてくるから。 年末年始はゆっくりと本を読むのが毎年の楽し

読書日記*まとめて10冊。もしPOPを書くとしたら?

じぶんで小説やら文章を書くようになって、本を読む感覚が変わった。それまでは「ああおもしろかった」で終わっていたことをアウトプットして初めて記憶に定着するってことを知った。何かの本で読んだけど「アウトプットまでが読書」とあって、今まで読みっぱなしで記憶にない本が多々ある。 小説を読み出してみて「これ読んだことある」と思うものの完全に忘れてる。忘れないために小説だって気になった文章にふせんを貼るようにした。図書館員としては本にふせんを貼るのは本を傷めるからあまりしたくないのだけ

読書日記*短編集(アンソロジー)おすすめの2冊

読んでいる本で、わたしのまわりの空気が変わる気がする。 たぶんその本の世界の空気が流れていたまま、時間を過ごしてしまうからじゃないかと思う。 続けて読んだ2冊は作家さんも作品も変わり、いろんな空気が流れてた。 チーズと塩と豆と4人の直木賞作家がヨーロッパの国々を訪れて描く、味と味覚のアンソロジー。 ごはんを食べることは生きていくこと。だけどそれは楽しいことだったり、悲しんだり義務だったり、希望だったりする。 4人の作家さんの個性が出て、コース料理だけど、それぞれのお皿が旨

読書日記*時空を超える物語『楽園のカンヴァス』原田マハ

わたしは物語の中にしかない時間を、これほどまでに美しく描いている作品にあったことがない。 キュレーターふたりの目線と伝説のコレクターバイラーの目線、絵の中のヤドヴィカとそして巨匠ルソーとピカソの想い。 この物語は巨匠ルソーの名作『夢』に酷似した絵の真贋判定をめぐって時間が流れる。「正しく真贋判定をした者に絵を譲る」と伝説のコレクターが選んだキュレーターに告げ、物語が展開していく。 交差する時間の中に、すっと入っていける。 作中の真贋を図る『夢をみた』という作品が、ほんと

読書日記*HSP『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』若林正恭 著

オードリーの若林正恭さんを、わたしは姉弟のような目線で見てしまう。たまに会うと笑って話せるんだけど、なんとなく似た者同士だし、でもあぶなっかしくて見てられないというかなんだか落ち着かない、みたいな。 その繊細なこころでよくお笑いという世界を選んだねー、と姉はすごく尊敬する。 お笑いがわからないわたしは、この本を読みながら、笑いのツボはわかったし、それがとてもうれしかった。もし一緒にその場面にいたら、同じことを考えて笑ったかなと。 この本のレビューを見ていると、みなさん「

読書日記*闇とは光とは何か『教団X』中村文則

この世界に闇はある?光はある?と、物理的なことじゃなく考えてる。人はだれも自分の中に闇があって、光を求めて生きている。光だと思って安心していると突然、闇の中へ放りこまれ、また光を探してさまよい歩く。 光があっても、それが当然になり、暗さが欲しくなり闇が忍び寄ることに、ぞくぞくする感覚を覚えてしまう。 こどもの頃、大人になりたいと願ったのは、闇を持った大人たちを真似したいからだろう。 失敗しない(負けない)ゲームは、おもしろくないから、不幸は少しずつ心に入り込み、やがてそれが

読書日記*言葉の力を知る『本日は、お日柄もよく』原田マハ

言葉は、その場の空気を一変させる。 この本は、伝説のスピーチライターの祝辞に衝撃を受けた主人公が、スピーチライターという道を選んで悩みながらも進んでいく、お仕事小説。 わたしはこの本を読んで、ますます言葉というものの力を知った。 言葉にはチカラがあって、人を感動させ、勇気を与え、生きるチカラになる。 最近のわたしは、こうやって毎日、書いている。 言葉を、組み合わせて、伝えることが難しくて、勇気がいって、でも、誰かのこころに響いてくれているかもしれないと、書く。 たぶん

読書日記*恋の終わりは人を強くするのか『白いしるし』西加奈子

”女32歳、独身。誰かにのめりこんで傷つくことを恐れ、恋を遠ざけていた”主人公の恋物語。 今回もネタバレなしですが、もやもやとした人への気もちに向き合うことを、とっても考えた本です。 職業柄、絵を描く人間や、音楽を扱う人間に会うことが多いが、それは、そういう人間によくある特徴だった。自分のもやもやとした、でも確実にある「思い」を、ぴたりと言い当てる「言葉」を考えつかない。無理に言い表すと、そこに僅かでも齟齬がうまれるから、言葉を使うことを手放し、それを絵画や、音楽で表現する

読書日記*ああ面白かったと感じることが夢『ひとりずもう』さくらももこ

さくらももこさんの本は、笑いながら泣けてしまうことがある。 繊細すぎる感性で、イタく感じてしまったりかわいいと笑ってしまったり。お亡くなりになるまで、まる子ちゃんそのままのような、こどもの感性の人だったみたい。 この本はさくらさんが漫画家になるまでを書いた自伝エッセイ…なんだけどまるでまる子ちゃんが話しているような世界。笑ってしまうけれど、まっすぐでやさしい。 片想いの終わりと共に、自分自身への挑戦がやってきた。もうくだらない夢を見ている場合じゃない。まずは明日、紙とペン

読書日記*HSPおすすめ本。オタクにささげる『ハケンアニメ!』辻村深月

この本を読んでわたしは泣いた。いろんな想いが変わった。 心の奥で認められた喜びと、もっと前を向こうと思う気持ち。そしてアニメの見かたが180度ぐらい変わった。 アニメは『画面の中に流れる、音と絵の連動。主人公の表情、コスチューム、セリフ、圧倒的な視覚で”魅せる”ということ。』と辻村深月さんはいう。 ぼーっと眺めていたアニメがそこまで丁寧につくられていたなんて考えていなかった。そしてそれをつくる人のこころも考えてなかった。 ここからいつもより引用多めですが、ネタバレなしです。

読書日記*生きることは恥ずかしいこと『小泉今日子 書評集』

とつぜん告白してもなにも変わりませんが、わたしは小泉今日子さんをずっと尊敬しています。リアルタイムでずっと見てきてわたしの理想だと思える女性は、樹木希林さんと小泉今日子さん。(別格で山田詠美さま。詠美さまは神です) 共通する項目は”オトコマエ” そこらへんの男子よりずっとオトコマエでw、潔くて、 そしてなにより”じぶんを生きてる” わたしの”オトコマエ”の定義は 『だいじなものを知っていて、守る。 だいじなもののために命をかけて戦える。 だいじなもののために広い視野をもっ