#1 陽の当たらないキッチン
私の実家のキッチンは、全然陽が当たらなかった。
私は、家族は好きだけれど、実家という空間がそんなに好きじゃなかった。実家の中で好きだったのは、畳の部屋の天井が砂壁だったことくらい。部屋を暗くして寝そべり、その砂壁の天井に懐中電灯を当てると、きらきら光る。しゅんっと素早く懐中電灯を動かして「流れ星!」なんて言ったり、きらきらの砂つぶをプラネタリウムみたいにして遊んでいた。その場所くらい。あとは、そんなに好きじゃなかった。
だから私は、20歳の頃に実家を出ている。時効だから