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#4 秘伝のタレめぐるからだ

 名前もレシピもない料理ばっかり作るくせがある。
 「冷蔵庫のなかのもので適当に作れる人が本当の料理上手ですよ」なんて言う人もいるけれど、適当にしか作れない私は、そうとも限らないぞ?といつもひっそり思っている。

 名前がないと不便なのは、特に、人に食べてもらう時。これはなんだろう…と自分でもわからないものを、誰かに食べてもらうのはひとつ関門が増える感じがする。
 それに、自分一人で食べていたって、時々大きく失敗する。なんじゃこりゃ、全然美味しくないなあ、と思いながら食べることも時々ある。1日3回の楽しみのうち、1回を台無しにすると、結構ショック。

 名前や定義は、目指す地点を定めるのに便利だ。
 「オムライスね」といえば、作る側と食べる側も(作っている時の自分と食べる時の自分も)大きくすれ違うことはないかもしれない。探せばすぐにレシピも出てくる。
 適当に作ることで意外な発見があることや、無駄なく冷蔵庫の中身が消費できることもあるだろう。料理の幅が豊かになることもある。自然に身についていくものに、名前もレシピもいらないかもしれない。

 それでも名前やレシピは、安心につながる。名前のないやり方を重ねたあとに、レシピを見たっていい。言語化されたり、基準がわかると、修正もできるし応用も利くようになる。

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子供の頃にはじめて料理をした時から、今の一人暮らしと料理の関係、そして「陽の当たるキッチンのある家に住む」という夢までの話。毎週水曜日更新…

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