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福永マリンパークのカヌー乗り場


はじめまして。福永マリカです。

役者をやったり、文章を書いたりしています。これまで、bloggerで「福永マリンパーク」というタイトルで日々記事を更新してきました。

5年前に開設したそこは、フリーランスとして活動していくにあたって始めた場所。

それまで、役者も脚本も音楽も、様々なことを仕事としてやっていながらどのことにも自信が持てなかった私は、ひとりきりになって、自分の手足で色々な人に会いに行き、実感を持って一つ一つ何ができるのか確かめていきたいと思っていました。

そんな体当たり猛ダッシュの時を共にしてきた「福永マリンパーク」は、振り返って読んでみると正直すぎるなあというくらいその時その時に考えていたことが書いてあり、でもきっとその時その時、書くことで安心してきたんだと思います。

「福永マリンパーク」というタイトルは、友人の岩井七世さんがつけてくれたもので、そのときはさほど意味のない単なる言葉遊びだったはずなのですが、続けていくにつれて自分にとって大切な意味のある場所になりました。

いろんなことをやりながら、なんにもできていない自分でも、そのときそのとき、真剣にやってみて、点を打っていけば、いずれときが経って離れて眺めてみたときに、色鮮やかな点描画みたいに、一枚の絵みたいになっていたらいい。今はその全体像のイメージが「福永マリンパーク」です。

そんなことは「世間」や「世界」では関係のないしょうもない言い分だと分かりながら、それでもこの場所くらい、「世間」や「世界」とちがった物差しで、ちがった時間が流れていたっていいじゃん、と思って続けています。だから、自分のための場所です。

でも、そういう自分のための場所を誰かが覗いてくれたときに、その人もまた自分のための時間を過ごせたらいいなあと、ほんの、ほんの少し思っています。

ところで、私は広い公園がとても好きです。

遮られることなく広い空を仰ぐことができて、だけど少し目線を伸ばすと東京のビルが見えるのも、神奈川と東京育ちの私には「よし、帰るぞ」という気持ちになれるのがいい。

散歩の道すがら立ち寄ることもあれば、公園にだけ出かけることも、仕事の帰りにコーヒーを持って出かけることもある。朝も昼も夜も。

何より無料なのが、かなしいかな、倹約生活にはありがたい。倹約は、時々息がつまるんです。それでも無料で広々とした景色を眺め、深々と息が吸い込める。もうちょっとがんばるか、と息をつくには最上の場所です。

ところがある時、友人たちと広い公園に出かけた時、有料のカヌー乗り場が目に入りました。

普段ならば自分には関係がないと思っていたカヌー乗り場が、その時はどうにも輝いて見えて、友人たちと一緒だったこともあり、公園を一周した最後に乗ってみることに。公園の一部に広がった湖を漂えるカヌーは、1時間1人2000円。倹約生活の身には安い金額ではなく、内心ドキドキ。

公園を一周してそろそろ日が暮れるという頃、カヌー乗り場の受付終了に駆け込むように申し込み、1人2000円を渡しました。

防具をつけて、ガイドの方の説明を聞いてカナディアンカヌーに乗り込み、いざ出発。

すると、湖一面、森一面、空一面、全部が自分の方へ覆い被さってくるように、飲み込まれるように大きく感じて、地上と水上では、景色の大きさが全く違って見えました。

湖には滑り込みセーフの私たちのカヌーしか浮かんでおらず、だあれもいないその真ん中で、すいーすいーとここだけの時間が進み、水をぽちゃんぽちゃんと漕ぐ音と鳥の声だけが聞こえて、世界からぐんと切り離されたよう。宇宙遊泳ってこんな風なんだろうか。

「立ち上がったりすると転覆してしまいます」との注意を聞いて、そこにしっかりと座って、すいすい、すいすい、湖に浮かんでいるのは、不安定だけれどとても安定感があり、その寄る辺なさになぜか安堵しました。

誰かと手を繋いだり、抱きしめ合う安堵感でなく、静寂の中に見えない線をたくさん繋いで漂う安堵感。

「ああ、今の私が欲しいのは、きっとこういう安堵感だったのだ」と、心の中でうなずいたとき、2枚の千円札が天使の輪っかと羽をつけて夕日に向かって飛んで行きました(画風はさくらももこ先生でした)。

前置きが長くなりました。このnoteを「福永マリンパークのカヌー乗り場」にしたのは、ほんのちょっとのお金を払うことで、違う景色がのぞめたあのカヌー乗り場みたいにしてみたかったからです。

これまで通り誰でもいつでものぞける公園としての「福永マリンパーク」を開きながら、noteをその「カヌー乗り場」として有料マガジンを更新していきます。

カヌーからの景色ほどのいいものが見れるんかい!!というのはちょっと心もとないところではあるのですが、長めのつぶやきという形とはまた違った、あるテーマに沿って時間をかけて書いてみた文章をマガジン化していこうと思います。

ひとまず最初のテーマは、「料理」。料理への出会いから、今の生活と料理の関係に至るまでを「陽の当たるキッチンに帰るまで」というタイトルで、1冊500円、8回+おまけ2回くらいのwebマガジンにする予定です。

初回更新は8月5日(水)。週に一度のペースでの更新を目指します。週の真ん中のささやか〜な気分転換になれれば嬉しいです。

だからここが「カヌー乗り場」、一個一個のマガジンが「カヌー」、そのなかの記事が「一台のカヌーで見える景色」みたいなイメージです。ふんふん。

気張らず、だれでものぞける公園よりも、もっともっとふかぶかとした場所にしていけたらいいなと思っています。

ちなみに、カヌーとボートの違いは、前に進むか後ろに進むかなのだそうです。知ってるか。どっちでもいいけれど、ひとまず前に進んでみよう。

よかったら「福永マリンパークのカヌー乗り場」、ご利用くださいませ。これからどうぞ、よろしくお願いします。

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写真 DAISUKE HASHIHARA





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