📖#3 天皇に身も心もお仕えした乙女の打ち明け話『讃岐典侍日記』
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意識が回復した帝は、部下の大臣を呼び寄せて、父である白河院に伝言を頼みます。
「しなければならないこと」というのは、天皇の位を別の者に譲る=譲位のことです。
明日明後日まで命がもつか分からないので、今夜のうちに譲位に必要なすべてのことを済ませてください。
そして、自分のために尊勝寺(父上である白河院が建てたお寺)で立派な仏教の儀式をしてください。
という、帝の最期のお願いを、こともあろうに、大臣は「仏教の儀式だなんて、大げさじゃないですか?」と申し上げました。
死に際の人、しかも、国のトップである帝に対して、こんなことを言ってしまえる大臣の神経はどうなってるんでしょうか。
このあとに訪れる武士の時代だったら、打ち首ですよ!
イラッときたから、長子ちゃんも大臣のこの発言を覚えていて、日記に書き残しているんでしょうねー。
長子ちゃんの体の上に足を投げ出して苦しそうな帝。
「こんなに苦しい状態なのに誰も心配してくれないなんて、ひどくない!?」
と、長子ちゃんに愚痴ります。
長子ちゃんは悲しすぎて答えられません。
こんな質問、なんて返したらいいか困りますよね。
お返事しない長子ちゃんは賢いです。
長子ちゃんが答えないので、帝は乳母に当たり散らします。
ちなみに、乳母とは、育ての母のような存在で、昔の高貴な女性は自分ではなく、別の女性に授乳から子育てまでお任せしていました。
乳母は「職務怠慢ではありません。私に出来ることがあればやりますよ(帝がこうなってしまっては、お世話出来ることがないんですから、何もしないのは当然ですわ)」と堂々としています。
死に際の人、しかも、国のトップである帝に対して、こんなことを言ってしまえる乳母の神経はどうなってるんでしょうか。
あなたが母乳をあげてお世話したんでしょうが!
このあとに訪れる武士の時代だったら、市中引き回しですよ!
苦しみ続ける帝に自分がしてあげられるのは添い寝だけ。
長子ちゃんは寝ないでお傍にいてあげます。
それがお仕事とはいえ、健気ですよね。
現代ではお医者さんに処方された薬を飲んだり、手術したりしますが、平安時代末期に今のような高度な医療技術はありません。
この時代の重病人への看護は、ただ寄り添って体をさすってあげる文字通りの「手当」でした。
メンタルは落ち着くかもしれませんが、手でさすさすしたところで、病気はよくなるはずもなく……。
続きます。
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