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3月に読んだ本の感想をゆるりと。

職場の近くに、すごくちょうどよい公園を見つけた春です。休憩時間にブラブラと通うようになった。徒歩5分、周囲にはベンチが適度な間隔で配置され、それがほぼいつも空いている。そとで読書ができる適温って、年間5日くらいしかないじゃないですか。(だいたい寒くて暑くて日光がまぶしい)

今回も、そんな休憩時間や隙間時間をパテでうめるように読んだ本たち9冊を、ゆるっと紹介していきます!

オーデュボンの祈り(伊坂幸太郎)

人生何度目かの伊坂幸太郎ブームがきている。せっかくなのでこの流れに乗っかり、これまで読んだことのなかった、デビュー作を読んでみた。

本や音楽に触れるとき、わたしは「初期のころの作品」がすきになる傾向がある。村上春樹なら「風の歌を聴け」だし、ビートルズなら「プリーズプリーズミー」だ。独特の、いい粗さがあって、のどかなかんじがする。何様だよ。でも惹かれるのだからしょうがない。

ところが、この「オーデュボンの祈り」の完成度は半端なくて、これがデビュー作だとは。。。衝撃。少しシュールで不気味な伊坂ワールドが展開されていて、不可解な出来事が多発するんだけど、ぐいぐい引き込まれてしまった。

スイート・ホーム(原田マハ)

この小説の舞台は、阪急沿線の小さな洋菓子店「スイート・ホーム」。緑ゆたかな街並みの様子や、ご近所のあたたかい人間関係も感じられる、甘くやさしい連作短編小説だ。宝塚は行ったことないけれど、ゼッタイ住みよい街にちがいない。登場人物の人懐こい関西弁にも、ほっこり癒される作品だった。

洋菓子店「スイート・ホーム」を営むパティシエの父、接客担当の明るい母と、娘2人。この4人家族を軸に物語が展開されていく。家族の温かみ、実直に仕上げられたスイーツの尊さ、バターの香り。懐かしい。「懐かしい」って思うくらいに、こんなに真っ直ぐな感情を、忘れていたのだと気付く。

洋菓子店で勤務していたこともある関西生まれのわたし。登場人物たちとの共通項も多くて、地元に帰った気持ちで楽しく読めた。おいしいケーキが食べたい。ほんとに、食べたくなるよ。

お茶の時間(益田ミリ)

3月は食欲にとりつかれていたのかもしれない。(いつもだろ)

益田ミリさんのエッセイマンガを読んだ。カフェでのひとときが描かれていて、コーヒーブレイクを愛する民としては必読の1冊。ミリさんの観察眼はすごく鋭くて細やかなのに、ゆるっとクスッと読めるこのバランスが大好きだ。

おなかがいっぱいなのに、ドリンクとスイーツを頼んでしまう。2層のカフェオレは、さきにミルク部分を少し飲みたくなっちゃう。あー、分かる。カフェで「こんなことあるよね」「こうゆう人いるよね」を、ミリさんがゆるっと表現してくれている。仕事をしたり、ぼーっとしたり、人間観察に励んだり。「お茶の時間」は人生を彩ってくれるのだ。ミリさんの感性に触れ、改めてそう思ったのでした。

あと「カフェで打ち合わせ」って、いいなぁと思う。コーヒー片手にケーキを嗜みながら……憧れちゃう。こんな煩悩まで勃発してしまいました。

これでもいいのだ(ジェーン・スー)

アルバイトをしているいまの職場は、同世代か少し年上のひとが多く、それがとても居心地がよくて気に入っている。30代半ばのわたしは「きっと平均年齢を上げる立場なんやろな……」と覚悟して入社したから、うれしい誤算だったのだ。

仕事では、キャリアを積んできた先輩のはなし(30代のころは何の勉強をして、どんな働き方をしていたか、など)が、とても刺激的で勉強になる。少し先を歩く先輩がいてくれることで、「いま自分はなにをするべきかな?」と常に考えさせられるのだ。と、まぁこれはまじめなはなし。一方で、「頭皮はほぐしておいたほうがいい」とか「おすすめのプロテインはこれだよ」とか、日常生活のプチライフハックの信頼感、安定感。いつもありがとうございます!

リアル生活でも頼れる先輩に囲まれているわたしだが、本ではジェーン・スーさんのエッセイを読んで、年齢を重ねる予行練習をしている。いいかんじに肩の力の抜けた、しなやかなオバさんになれたらいいなぁ。うん、きっと大丈夫。そう思わせてくれる1冊だ。

私の生活改善運動(安達茉莉子)

ひとりでごはんを食べるときや、朝のメイク中によく観ている「北欧、暮らしの道具店」さんのYouTube。この動画で文筆家の安達茉莉子さんを知り、本を購入してみました。

お部屋のかんじとか、海の近くに住むライフスタイルがすてきだなぁと。

「私の生活改善運動」は、安達さんが自身の暮らしに少しずつ手を入れ、幸せに生活していくための行動を綴ったエッセイである。本棚や服など身の回りのものから、住む環境や人間関係まで、心地よさを丁寧に選び取ることの尊さが感じられる。

わたしがいま住んでいる部屋は、引っ越してきて2回目の春。収納の奥が未開の地になってきているし、家具も初期の配置のままだ。気になっているアレコレを、アップデートしてみようかな。この本を読んでから、暮らしを楽しむアンテナが、ピンと立ったような気がしている。

まず「制服」にテコ入れしてみたので、そのこともnoteに書いてます。新生活のこの季節には、なおさらピッタリの1冊。

世界観をつくる(山口周・水野学)

今年の1月、クリエイティブディレクター/クリエイティブコンサルタントの水野学さんの本を読んで、すごくよかったんですよね。

山口周さんとの対談本をたまたま見つけ「これは激アツ!」ということで、また夫婦揃って読んでみた。2人の専門分野(ビジネス、経営、デザイン、アートなどなど)が対談によってかけ算され、対話を通して発想が深まっていく様子も読み応え抜群。スピーディにはなしが展開されていくので、読み手としてはついて行くのに必死だったですよ。

いままでの世界の流れを紐解きつつ、これから求められる価値はどんなこと・ものなのか。読むと「自分がいま生きている時代ってどんな?」と俯瞰もできるから、面白い!

何者(朝井リョウ)

去年の8月に「スター」を読んで、べらぼうに面白くて。「ほかの作品もゼッタイ読む!」と決めていた朝井リョウさん。(……ってあれ読んだの去年の8月なのか……とnoteを見返して驚愕しております)

今回読んだ「何者」も、すごかった。登場人物は、就職活動を目前に控えた学生たち。まずページをめくると、登場人物紹介がTwitterのプロフィールのそれなんですよね。これがかなり雄弁。もうここで各人物に既視感というか、なんとなく人となりが分かるというか、著者の言わんとしてることにニマニマしてしまう。

就活らしい就活を経験していないわたしも、その時期特有のヒリついた感情を、ひしひしと体感できた。さいごがね……すごくて。(なんかもうすごいしか書いてない)しばらく頭を離れない系小説でした。

またたび(さくらももこ)

さくらももこさんのエッセイが大好物だ。今回は旅エッセイを読んでみた。ももこさんが編集長の「富士山」という雑誌があったそうで、その中の旅行モノをよりぬいた1冊になっている。

旅先での酸いも甘いも詰め込まれていて、同行者への本音もダダ漏れ(特に石井さんという人物への当たりが激しい、愛があるけど)のエッセイ、いつもながら爆笑で読み終えた。

著名人らしい豪勢な旅から、ちょっとマニアックな辺境まで、おもしろおかしい珍道中!旅がしたくなるのはもちろん、楽しそうなことや欲しいモノに対して、フットワーク軽くありたいと思わせてくれる1冊だ。

自分の時間を取り戻そう(ちきりん)

少しずつ本棚に増殖している、ちきりんさんの本たち。そのどれもが、テーマが明確で分かりやすい。これまで5〜6冊は読んできたけれど、毎回新たな気付きや、考えもしなかったアプローチがあるからすごいのです。頭が凝り固まってきたなと感じたら、よく手に取るのはちきりんさんの本だ。毎日の仕事や家事も、視点を変えるとアイデアの宝庫になったりするから、思考のトレーニングにおすすめ!

この本の冒頭には、サンプルとして4人の人物像が登場する。会社勤めか経営者か、男か女かに関わらず、どんなひとも陥りやすい状況が例に挙げられている。「これ、いまの自分やん!」と。それを改善するための考え方は、たったひとつであるというのが、この本のメインテーマだ。わたしはいま時給で働いているのだけれど、自分の価値を高める方法はいくらでもあるなぁと思った。それが頭にあると、仕事がより楽しくなるのを実感中だ。

3月に読んだ本まとめ

ありがとうございました〜!

夫婦2人で生活していると、新生活も新学期もなにも起こらないわけです。でも、同僚のママさんがこどもたちのプリント類に(おちゃめなかんじで)追われている話を聞いたり、入学式帰りのピカピカなおやこを接客したり。おとなになって多少図太くなったからか、ソワソワするような新しい環境もいいよなぁと思う。

本を読んでそれを行動で取り入れたりして、それもわたしなりの新生活じゃないか!春を楽しんでいきましょ。


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