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小説「リレキショ」

中村航さんの、恋愛小説ではない小説です。

最初から最後まで、主人公の男の子がなぜそこで暮らしているのか、なぜリレキショを書くことになり、バイトを始めることになったのか、などという背景が書かれていませんでした。
でも読み終わってから、それは必要のない設定だったから書かなかったのかも、と思いました。帯にも書いてありますが、大切なことは、名前でも、今までの生きてきた人とのつながりでもない。自分でどうしたいか考え、勇気を出して動くことだ。これを読んで、帯の言葉がすとんと落ちてきました。

この物語には、ぼく、ねえさん、ねえさんの友達の山崎さん、そしてウルシバラという謎の少女の4人が登場します。

「ぼく」以外の3人は、さまざまな面でとても個性あふれる、ステキな女性です。ぼくだけがなんだか薄い感じ。末っ子の男の子というか、現代っ子なイメージです。
「ぼく」はなんらかの理由でねえさんの家にお世話になり始め、バイトを始めます。それが「ぼく」にとっての勇気を出した行動。そこへ、勇気を出して「ぼく」にラブレターを渡しに、ウルシバラが登場するのです。
ねえさんと山崎さんは、楽しそうに成り行きを根掘り葉掘り。

いつもと同じ仕事、同じ風景でも、勇気を出して一歩踏み出せば、全く違った世界が現れることを、この物語で思い出した気がしました。

日常のような出来事を切り取ったような、パンの耳がないようなお話ですが、わたしはそのざっくりした感じが大好きです。


リレキショ
中村 航 著

2014/7/12 読了

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