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反人種差別ミーティング #15

ロックダウンの最中に全世界的に沸き起こったBlack Lives Matter運動は、イギリスに爪痕を残し、ピークはすぎたものの今でもBBCやメディアは必ず人種差別の問題をどこかで取り上げている。

難民支援NPOの新しい理事が、団体内でも反人種差別のアクションを起こすべきだと考えていて、そのリード役を買ってでていると聞いたのは数週間前だ。金曜日の難民メンバーとのzoom上の集まりで、その新しい試みについて発表され、興味があるメンバーがその会議に参加することになった。私も、自分がイギリスに来て初めて、それまで自分が日本で位置していた「マジョリティ側」から「マイノリティ」・「差別される側」に移ったとはっきり感じているから、興味はあったけれど、うちの難民メンバーと問題の出方は違うからな・・と思っていたら、ダイレクターからお誘いの連絡をもらったので参加することにした。

白人イギリス人の母とブラックの父の間に生まれたその若い理事が、このミーティングのグラウンドルール(いろんなバックグラウンドの人を尊重するとか)を説明して、皆でちょっとしたチェックインのアクティビティをやる。要は、どういうことをしたいか、何をゴールにしたいかは全て未定で、全部その場にいるメンバーに委ねられている白紙のキャンバスであるという。理事のリードのもとで、小グループにわかれて、人種差別に対しての自分の意見を述べる。

私は、今年生まれたばかりの赤ちゃんを抱えたSと二人組になった。その1つ前のアクティビティで、「この会議によって何を達成したいか」という理事の質問に対して彼女は「自分がまた人種差別的なものに遭遇した時、どう対応すべきなのか考えたい」と答えていて、一体どんなことに遭遇したのかと思ったら、彼女が初めての裁判(難民ビザを得るために裁判にケースを持ち込むはよくあることだ)で、裁判官が「人種差別主義者そのもの」であったことを話し始めた。恐怖でいっぱいになり、ただただ硬直して、彼女は全然うまく喋れなかったという(裁判の結果はネガティブで、だから彼女は難民ビザを得ていない)。難民になる過程で受けたトラウマのほかに(うちの難民メンバーは皆集団的暴力の被害者である)、この裁判自体もトラウマになったという。

命をかけた裁判で、自分の存在を裁判官に否定される経験は、どんなに辛かったか、私の想像を遥かに超える。

1時間半のミーティングの最後、この会議から得たいポジティブなものと、置いていきたいネガティブなもの、というお題が出されて、みんなそれぞれに述べたあと、1ヶ月後にまた集まることで皆合意する。次回までに[privilege](特権、恩恵)について考えてくることが宿題となる。この言葉をミーティング中使ったのは、スタッフのアナ(イタリア人)である。白人のスタッフ2人・エミリーとアナがこのミーティングに参加しているのも、意味があるだろう。アナは、自分の白人というポジションや特権についても考えていきたいと話していた。

一体このアクティビティがどういう結末を迎えるのか、今ひとつはっきりしないけれど、難民支援NPOとして、反人種差別にアクションを起こすことは必要というダイレクターや理事の考えには賛成だ。そして、この問題に主体的にメンバーが関わっていくことは、癒しにも、エンパワメントにもなるだろう。考えて、声を上げて、小さくても行動を起こすことで、何かを変える力を自分が持っているということ、自分は無力ではないということを感じることができるのだと思う。

ここに参加することで、私自身にどんな変化がもたらされるのかは未知数だけれど、理事の役割をみたり、この会議が難民メンバーにもたらす影響を目撃できるのは貴重な経験だと思っている。

写真は(例によって)内容にあまり関係のない近所のギリシャ料理店。内装が可愛かったから思わず撮ったもの。



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