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「火星人が攻めてきた」としても:2021年10月30日(宇宙戦争の日)

大学生の時、4年間テレビ局でアルバイトをしていた。

テレビ局でのアルバイトの内容は、ニュース原稿のコピーや新聞の切り抜き、FAX、電話番などの雑用、放送用のテープのキャプションを書いたり、記者さんたちの食事を手配したりなど、いわゆる「小間使い」というやつだ。

1回の勤務が8~10時間の拘束で、ニュース番組に合わせて準備をする。
夕方4時からの地方情報番組がメインで、昼過ぎから放送終了の夜7時までが一番忙しい時間だった。

その日のニュースの放送内容は報道デスクが昼ごろに決めて、関係各所にコピーして配って回るのだけど、もちろん有名人の訃報や逮捕、逆におめでたいニュースなども緊急性の高いものが入ったときには内容の差し替えが行われる。

緊急での放送内容の差し替え(内容変更)が起こると、空気が一変
今まで喫煙所でのんびりしていた記者さんたちもタクシーに飛び乗って現場へ向かい、報道デスクも関係各所へガンガン電話をかける。

「これすぐに20部コピーして!」
「タクシー呼んで!」
「映像をモニターで受けて!」
などの指示が飛び交う、ドラマで見た光景だ。

そして、アルバイトといえども動作が遅れると、めちゃくちゃ怒られる。
怒られるというか、みんな興奮状態にあるので言葉を選ぶ余裕もなく、とにかく全員が必死だった。

アルバイトに入った初日からこんな調子で仕事を急かされたり、できないと今までに言われたことのないような言葉で怒られたりしていたので、テレビ局のトイレで何回も泣いたし、1日勤務してすぐに辞める人もいた厳しいバイト先。

4年間、本気で他人から仕事のことで怒られ、必死で働くことを覚えた私は社会人1年目の時には拍子抜けをしてしまったり、加減を知らずに働きすぎて体を壊したりと良い面も悪い面もあった。

そして、私が4年間、このアルバイトを続けられたのは、言い方が悪いかもしれないけれど毎日の仕事が単調ではなく、「ニュース」に対しての刺激や興奮を覚えていたのだと思う。

ちょっと大げさに言うと、情報が毎日流れ消費されていく中で、「生きている」ことへの実感を得られていたのかもしれない。

沢山の情報に毎日囲まれることは、私の学生時代とその後の人生を文字通り、良い意味でも悪い意味でも刺激的にしてくれた。


10月30日は宇宙戦争の日(ニュースパニックデー)。アメリカで1938年に放送されていたラジオドラマの中の演出が本物のニュースと勘違いされてパニックを引き起こした日だ。

演出の内容はドラマの中で「火星人が攻めてきた」という臨時ニュースを流したところ、本物のニュースと勘違いし、120万人以上が大パニックになったそうだ。

きっと、本当に火星人が攻めてくるなんてことがあったら、テレビ局は大騒ぎだろうなと思う。

ニュースを伝える立場の人も同じ人だ。
「火星人が攻めてきた」なんてにわかには信じられないことが起きたことに対して、まず自分でもにわかには信じられないことを伝えるべきか、迷うかもしれない。実際に、ニュースには「誤報」も存在する。

もっと言うと、昨日のnoteにも書いたけど、目に見えない電波や光で伝えられる情報に対して、果たして自分が見ているものが正しく、正確なのか?という疑問も湧いてくるだろう。

それは、ニュースを伝える側も「人」なのだから、当然に同じで、受け取る側も受け取る側でそれぞれの「人」だ。

そう考えると、1938年の「火星人が攻めてきた」というニュースも実は演出ではなくて実際に起こっていたかもしれない。
それが見えている人だけには見えていて、火星人が存在する世界に生きる人がいるかもしれない。

もし、「火星人が攻めてきた」としたら、きっと私はいつも通りかもしれないし、その場で消し飛んでも気づかないかもしれない。

なかなかに刺激的だ。


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