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本当のおもてなし

東京オリンピックを誘致するときに一世風靡した言葉は滝川クリステルさんの「お・も・て・な・し」ではなかっただろうか。十分におもてなしをする機会もないままオリンピックが数日後に迫ったことは残念としか言いようがない。

新しく親せきになるお家を訪問した時、これこそ本当のおもてなしとお手本にしたいように迎え入れられたことはなんと幸せなことかと思わずにはいられなかった。タクシーで到着する時間を見計らってお宅の前でご夫婦そろって待ってくださっていたところからそれは始まった。歓待されていることが伝わってそれだけで感涙しそうになった。

心づくしの数々に昔々の夏を思い出した。母の里に帰省するたび、帰るときに親戚勢ぞろいで車を見送ってくれた光景。どちらも同じように山に近い田舎で、どちらも商いに忙しくしている家庭で、そして親せきや人を大切にする人たち。今も娘たちが私の実家に行ったら弟が気持ちよく迎えてくれるのはその時の思い出のおかげだと思う。

大層なごちそうや華やかなケーキがなくてもそこには温かい気持ちがあって、そして私にもそれを感じる心が知らず知らずに育っていたことに思い至った。新しい親戚は我々よりずっと年長で立派でよく言われる「実るほどこうべを垂れる稲穂かな」を思い出す。

人付き合いが疎遠になりがちな世の中だけれども生きていくことの基本は変わらない。縁のある人を大切に、心をこめておつきあいすることが限りある命を豊かにすごすことだと静かに心の奥深くで感じる。人の道は何も難しくなくて当たり前のことを地味にぶれずに高ぶらずに自分を大きく見せずにただそのまま行くこと、それが今思い描く理想かもしれない。

さて東京オリンピック開幕の週、感染が広がらないことと無事選手の皆さんが力を発揮できることをテレビのこちらから祈るばかり。皆さまもどうぞよい一週間のスタートをお過ごしください。

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