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【コンサート】もしもピアノが人間なら

昨年秋のショパン国際ピアノコンクールで一躍名を馳せられた沢田蒼梧さんが初の東京でのソロコンサートを開かれるというのでチケットを取って行ってきました。発売間も無く予約した甲斐があり前列左側のとても良い席でした。

演奏曲はオールショパン。楽しみで仕方ありませんでした。

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個人的にピアニストは男性が好き。大きな手と長い指から余裕を持って奏でられるフォルテと、見た目では想像もつかない撫でるかのように繊細なピアニッシモにゾクゾクします。肘の使い方や小指の付け根の筋肉の動きまで、うっとりと眺めました。

沢田さんの演奏はどの曲もストーリーが見えて、医学生としての理知的な要素と、饒舌なMCに垣間見られるユーモラスな面と、アンコール曲から感じられた小さい人への愛情のすべてがピアノという楽器と共鳴してこちらに届きました。

名古屋のご出身とのこと、関西人顔負けのお笑いセンスも光り、演奏中はピント張り詰めていた会場の空気が一気に和みます。

ショパンコンクールのYouTube撮影でアップになるから急いで美容院に行ったこと、数年前のコンクールで前の演奏者が汗かきだったことからいつもミズノかプーマのハンカチを持つようになったけどショパンコンクールのときはプレゼントされた五線譜の柄の入ったハンカチを持つと話題になって嬉しかったこと、大学春休みのこの1週間に五つもピアノの本番を入れて修羅場だったこと、ショパン国際ピアノコンクールの前はジョイントコンサートを開いたけど自分の演奏を聴きに来てくれたのは10人だったのに今回はホールに満席になったことなど、書ききれないくらい楽しませていただきました。

コンサートのプログラムを見て驚いたことは、主催者の女性が去年のショパンコンクールで初めて沢田蒼梧さんの演奏をオンラインで聴いて今年3月に紀尾井ホールのコンサートを企画し大成功させられたというその行動力です。私の周りでもショパンコンクールの話題で連日友人たちと盛り上がりましたが、誰一人としてコンサートを主催できるなどと考える人はいませんでした。素晴らしいパワーです。

コンサートの最後は英雄ポロネーズをアンコールで弾いて完璧に締めくくり。ピアノという楽器の一番高い音域から低い音域まで、格調高さからおどけた面まで、激しさと静けさ、険しさと優しさすべて兼ね備えたようなピアニストで、歩くピアノのような人だと感じました。

ショパンコンクールが開かれたワルシャワはポーランドの首都で、ウクライナからも近いところです。ショパンが生きていた時代も侵略されるなど大変な歴史がありますが、今日その隣国で戦争が起こるなどと誰が想像したでしょうか。ヨーロッパに1日も早く平和が訪れますように。

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〈千代田区・紀尾井ホールへの道ぞいの釣堀〉

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