page 8 Story of 永遠
永遠「突然ですみません。榊永遠と言います。
ピアノ教室を探しているのでお話伺えたらと思いまして」
美月「あ…、次の生徒さんが来るまでの短い時間となりますが、良かったら今レッスン室でお話をしませんか?」
彼女はゆっくりとスリッパを差し出してくれた。
通されたレッスン室は天上が高くなるような構造になっている。
壁と天上が、全て薄いブルーの配色になってるのが瑞々しく目に飛び込む。
室内はまるで一面が青空の空間のようだ。
中央に置かれたグランドピアノとアップライトピアノが晴れた空に浮かんでいるように見える。
美月「こちらにお座り下さい」
ふんわりとした笑顔で落ち着いた対応と、驚いた様子はまるでないこの感じ…
一応、メディアに顔と名前が出ているから
多少「え!観てます!」的な反応を想像していたけどこの反応って
まさか…
これって俺を知らないパターンか?
それともこれがプロの対応なのか?
まぁ、変に騒がれるよりも有り難い。
取り越し苦労だった数分前の自分を少し笑いつつ
勧められた椅子に座った。
美月「どのようなレッスンをご希望ですか?
基礎から学びたいのか、
好きな曲を仕上げたいのか…」
永遠「ピアノは習っていたので弾けるのですが、
仕事で演じる役柄上、ピアノの演奏力を磨きたいと思ってご相談に来ました」
美月「演じる‼︎ 榊さんは俳優さんなんですね!」
やっぱりこの人は俺の事を知らないんだな。
answerとしての活動や、CMもけっこう出ている方だと思っていたので、自分もまだまだなと思って苦笑した。
一応ミュージシャンのくくりだけど、俳優って事にしておいた方が面白そうなので流しておく事にした。
永遠「あ…まぁ、そんな所です。
弾く曲は決まっているので、曲を仕上げて行きたいという感じになると思うのですが、
それには基礎からやる必要が有れば練習曲も取りかかります。
基本的に先生にお任せでお願いしたいです」
美月「分かりました。
申し遅れましたが青井美月といいます。
もしも担当させて頂けるようでしたらこちらにご連絡下さい」
白く細い指で丁寧に渡された紙には連絡先とアドレスが記載されている。
そのブルーの小さな紙が彼女とこのピアノ教室を思わせた。
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