【読書_感想✍️】『モリス商会 装飾における革命』 マイケル・パリー 藤田治彦監訳
19世紀のイギリスの詩人であり、
モダンデザインの父と
呼ばれているウィリアム・モリスが
設立したモリス商会のデザインを
紹介している本。
モリス紹介が興した商品が
どのように世界に影響を
与えたのかを解説しています。
本の装丁がきれいだなと思い、
図書館で借りました。
ウィリアム・モリスという言葉自体、
民芸、柳宗悦、というキーワードの関連で
知っている程度でした。
調べてみると、
彼のアーツアンドクラフツ運動が
フランスのアール・ヌーヴォー、
日本の柳宗悦の民芸運動に
つながったそうです。
この本を読んで感じたことは、
時代を読まないといけないビジネスと
時代に普遍的なアートの両立の難しさです。
19世紀の工業化が進む社会で、
モリスは手仕事の美しさが
失われていくことに
問題意識を持っていました。
またごく一部の富裕層の娯楽になっていた
室内装飾を
一般の人々もその楽しみを
享受するべきである、とも考えていました。
そのため、手仕事で安価な商品を
提供することを
目的としてモリス商店は販売を始めました。
しかし、実際モリス商店の販売していた商品は
後世に残るほど
完成された美しさであったものの
その当時の値段は依然として高価でした。
モリスが生きている間に
目的を達成することはできず、
製造の技術が向上した20世紀後半に
はじめて質高い大量生産の商品が
多くの人々に受けられました。
ウィリアム・モリスの考え方、デザインは
たしかに世界にとって
価値のあるものであった一方で、
その価値に対して
彼の生きた時代は早すぎたように感じました。
宮沢賢治など存命中に評価されず、
後世になって
評価された芸術家の作品に触れた時に
なぜこんなに良い作品なのに、
生きている間に評価されなかったのだろうと
考えることが今まで多かったです。
最近、インスタで
適切な時代に適切な手段で適切な人によって
見つけられないと素晴らしい芸術家に
なれないという記事を思い出しました。
その記事とこの本の内容が
共通する部分があるなと思いました。
個人的に、
アートに対して受動的なイメージが強く、
その一方でビジネスは
能動的なイメージがあります。
今ビジネスの世界にいるからか、
モリス商店のデザインを
そのものの美しさも感じつつ
どうしてもビジネス視点で見てしまったので、
アート視点で見た時、
どういうことを感じるのか
人と話してみたくなりました。
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