Mariage.H(マリアージュ.アッシュ)

未知なるマリアージュの世界へようこそ!わたしの〝超おすすめワイン〟をご紹介します。(イ…

Mariage.H(マリアージュ.アッシュ)

未知なるマリアージュの世界へようこそ!わたしの〝超おすすめワイン〟をご紹介します。(インスタグラム → https://www.instagram.com/mariage_h/

最近の記事

シャンパーニュと美術に共通する「アッサンブラージュ」

「アッサンブラージュ」とは、シャンパーニュの製造過程で異なる品種や畑、収穫年のワインをブレンドする工程を指します。しかし、この「アッサンブラージュ」は単なる混合ではなく、熟練の技によって構築される「作品」です。そして、美術の世界にも同名の「アッサンブラージュ」が存在し、シャンパーニュと美術の双方が持つ創造性と複雑さが興味深く重なります。 美術における「アッサンブラージュ」とは、異素材を組み合わせて立体的な作品を生み出す技法です。「パピエ・コレ」や「コラージュ」も異なる素材を

    • ワインとポテトの起源

      土からコンクリート、木からステンレス。これらはワインの発酵熟成槽の進化を象徴しています。現在は木樽やステンレスタンクが主流ですが、かつては粘土でつくられた素焼きの壺が用いられていたようです。 ワインの発祥地「ジョージア」では、いまでも〝クヴェブリ〟と呼ばれる土製の壺を使い、伝統的な製法でワインがつくられています。とくに特徴的なのは、この壺を地中に埋めること。土のなかで、果皮や果肉、果梗(かこう)、種子、果汁を一緒に発酵熟成させることで、低温でゆっくりと時間をかけて進行する発

      • シンプルさに潜む本質的な価値

        「焼き鳥」は、一見シンプルに見える料理ですが、実際には素材の良さを最大限に引き出すための職人技が随所に凝縮されています。炭火の香りが漂う中、焼き鳥の串を握る職人の手には、長年の経験が宿っています。鶏肉の下処理ひとつとっても、その丁寧さが肉の柔らかさと旨味に大きく影響し、串の打ち方も肉の火の通り方を左右します。火入れの具合が絶妙であれば、外は香ばしく、中はジューシーに仕上がります。このように、シンプルであるがゆえに、食材と技術の本質が問われる料理といえます。シンプルな料理ほど、

        • 日本が誇る発酵調味料

          味噌や醤油とならび、日本が誇る発酵調味料に「魚醤(ぎょしょう)」があります。魚醤とは、魚に塩を加えて発酵させたもので、その深い風味は、日本料理のなかでもとりわけ独特で、他の調味料にはない力強さを持っています。この力強さは、たとえばシンプルな和食の一品に、奥行きと深みを加えることで際立ちます。 この魚醤は、タイの「ナンプラー」に類似していますが、ナンプラーは魚特有の香りが際立つ一方で、魚醤はまろやかな風味をもつ点で異なります。この風味の違いを生みだす最大の要因は、発酵・熟成期

        シャンパーニュと美術に共通する「アッサンブラージュ」

          フェルメールとサッシカイア

          サッシカイアのエチケットを眺めるたびに、『真珠の耳飾りの少女』が思い浮かびます。ヨハネス・フェルメールの代表作。サッシカイアのブルーのキャップシールとロゴ、そしてエチケットの風合いが、〝青いターバンの少女〟の世界観と重なってしまうからかもしれません。 わたしのなかでは、高貴で優雅、洗練されたシンプルさ、時代を超えた美、そして神秘的な魅力を持つ世界観が共通しています。今夜はそんなサッシカイアの「1982ヴィンテージ」を抜栓。カベルネ・ソーヴィニヨンの渋みと酸が、42年の歳月を

          フェルメールとサッシカイア

          「カステヨン」の評価がここ20年で上がった理由

          かつて「カステヨン」は、ボルドー地方の他の著名なワインの産地に比べて、影の薄い存在でした。サン・テミリオンやポムロールなどの名高いワイン地区が注目を集める一方で、カステヨンはその真価を十分に認められていなかったのです。 しかし、この20年でカステヨン・コトー・ド・ボルドーの評価は大きく変わっています。その理由は、地元の生産者たちが伝統を守りつつ、モダンな醸造技術を積極的に取り入れ、ワインの品質向上に取り組んだことにあります。彼らは土壌の特性を深く理解し、それを最大限に活かし

          「カステヨン」の評価がここ20年で上がった理由

          神は細部に宿る

          「神は細部に宿る」とは、ドイツの建築家ミース・ファン・デル・ローエの言葉です。細部にまで妥協せずに仕上げることで、全体の完成度が高まるという意味であり、この考え方は建築にとどまらず、ワインや飲食の世界においても重要です。 たとえば、グラスでオーダーが入ったワインでも、「ボトルを見せて」と依頼されることを想定して、美しく抜栓するのが一流の飲食店の共通点です。とくに、シャンパーニュなどのスパークリングワインの場合、ボトルの先端を覆うシールの切断部分がきれいな直線を描いているかど

          居心地の良い店とは

          家族や友人に紹介したくなるような、居心地の良い店とはどのようなお店でしょうか? わたしはその店が醸し出す雰囲気だと思っています。元気になったり、やさしい気持ちになれたり、いつまでもその場にい続けたくなるような雰囲気。 では、その雰囲気とは、どこからつくりだされるのでしょうか。店舗デザインでしょうか。店内の内装でしょうか。照明でしょうか。料理の器でしょうか。それとも清潔感でしょうか。わたしは、その店で働くスタッフからにじみでてくるものだと思っています。 気持ちの良い挨拶、テキ

          フィナンシェには赤ワインが合う

          「チョコレート」と「赤ワイン」の相性は、よく知られたマリアージュの一例。カカオのほろ苦いコクと、赤ワインの果実味と渋味が絶妙なハーモニーを奏でます。アフタヌーンティーで楽しむのも贅沢な楽しみ方です。 そんな「チョコレート」と並び、赤ワインと相性のよいスイーツが「フィナンシェ」です。アーモンドと焦がしバターの風味が、赤ワインの複雑な香りや深い味わいと見事に調和します。また、フィナンシェの外側のカリッとした食感と、内側のしっとりとした甘さが、赤ワインのタンニンとともに絶妙なバラ

          フィナンシェには赤ワインが合う

          ソーセージの多様性と可能性

          日本では、ソーセージといえば「豚肉」のイメージが強いかもしれません。しかし、世界に目を向けると、ソーセージに使われる肉の種類は実に豊富で多様です。 たとえば、ギリシャや中東では、羊肉を使ったソーセージが一般的であり、特有の風味とスパイスが特徴です。イタリアのトスカーナ地方やフランス南部では、イノシシ肉のソーセージが伝統的な料理として親しまれています。そのワイルドな風味は一度食べると忘れられません。また、スペインではウサギ肉を使ったソーセージがあり、中国の北京料理ではアヒル肉

          ソーセージの多様性と可能性

          繊細なホタテの楽しみ方

          ホタテの魅力を引き出すためには、その繊維構造を理解することが鍵です。ホタテには細やかな繊維があり、その切り方一つで食感や味わいが大きく変わります。 まず、刺身としてホタテを楽しむ際はタテに切ることが推奨されます。タテに切ることで繊維が長く残り、ホタテのぷりぷりとした弾力が際立ちます。しかし、この切り方では旨味がすぐに広がらず、口の中でじっくりとホタテの風味を楽しむことができます。 一方、鮨ダネとしてホタテを使用する場合は、ヨコに切るのが理想的です。繊維を断ち切ることで、ホ

          〝傍流〟同士の意外な組み合わせ

          鮨屋で「えんがわ」といえば、ヒラメもしくはカレイですが、ヒラメを好む人も少なくありません。〝白身の王様〟と呼ばれるヒラメの方が、稀少かつ高級な鮨ダネとして認知されているからです。 一方、フランスのブルゴーニュ地方 「コート・ドール」といえば、北のコート・ド・ニュイと南のコート・ド・ボーヌに二分されます。シャルドネを選択するなら、「コート・ド・ニュイ」よりも「コート・ド・ボーヌ」を選択される人も多いはず。なぜなら、コート・ド・ボーヌは、シャルドネのグランクリュ畑が集中する世界

          〝傍流〟同士の意外な組み合わせ

          フランスワインは、産地名と品種名を紐付ける

          今宵のワインは「シャトー・カノン・ラ・ガフリエール1997」。サンテミリオンの生産者で、2012年の再格付けで〝第一級特別B〟に格上げされた、実力派シャトーです。メルローならではのみずみずしく濃厚な果実味は、ヴィンテージを疑うほどに豊潤で、A5和牛の凝縮感ある旨味と均衡のとれたマリアージュを楽しませてくれます。 一般的にフランスワインは、産地名(たとえば「サンテミリオン」等)はエチケットに記載されていますが、〝メルロー〟などの品種名は記載されていません。ワイン法で使用可能品

          フランスワインは、産地名と品種名を紐付ける

          ピノ・ムニエの魅力を探る

          ピノ・ムニエは、シャンパーニュ地方全域で栽培される、独自の魅力を持つぶどう品種です。その名前はフランス語で「粉屋」を意味し、葉に付く白い粉状のものに由来します。この品種は、シャルドネやピノ・ノワールと共にブレンドされることが多く、その存在感を控えめにすることが一般的です。 ところが、特定の地域ではこの品種が主役として輝きを放つことがあります。その一例がヴァレドラマルヌ地区です。この地区では、ピノ・ムニエを巧みに引き立てる名手が多く、通常のブレンドでは味わえない独特の個性を楽

          ナンバリングの深い意義

          古代文明では、商取引や資産管理のためにナンバリングが使われはじめました。たとえば、古代バビロニアやエジプトでは粘土板やパピルスに記録をつけ、ナンバリングを利用して管理していたようです。 このように、ナンバリングというものは、歴史的意義と技術革新を映し出す鏡のようなものです。数字が与えられることで、モノや情報に意味と秩序が生まれ、それぞれのナンバーがその対象の物語を語りはじめます。 クリュッグといえば、最近はジャクソンやルイ・ロデレール同様、マルチヴィンテージで知られていま

          「地理感」を鍛えよう

          「地理感」を養うことは、ワインの理解を深めることにつながります。「地理感」とは、位置関係やその土地の事情に精通していること。いわば「土地勘」のようなものです。 今夜はピエール・ダモアというつくり手の「フィサン レ・モゴット2017」を抜栓。フィサン村は、南北に長いコート・ド・ニュイ地区に位置し、最北端の村から二村目にあたります。そのため、酸やタンニンが強い傾向があります。北はマルサネ村、南はジュヴレ・シャンベルタン村と隣接していますが、「レ・モゴット」はマルサネ村との境界線