香りのレイヤードを楽しむ
最近、フレグランスの重ねづけ、いわゆる“レイヤード”が流行しています。異なる香りを重ね合わせ、その日の気分や好みに応じたオリジナルの香りを楽しむという手法です。この発想は、実はワインと料理のペアリングでも活かすことができます。
たとえば、「シャンパーニュ キュヴェ・レテルニテ ブリュット エルネスティーヌ・ドゥソー」と「松茸の土瓶蒸し」。土瓶蒸しに添えられたスダチは、香りのバランスを崩さないように絞らず、まずは出汁の奥深い旨味をゆっくりと味わいます。その後、ひと口シャンパーニュを含み、鼻からそっと息を吐きながら松茸の香りとシャンパーニュのフレッシュでフルーティーな香りを重ねます。
この瞬間、スダチを絞るよりも柔らかく、シトラス系の優しい香りが松茸の独特の土っぽさを包み込みます。松茸の芳醇な旨味と微かに感じる苦味が、シャンパーニュの繊細な泡によっていっそう引き立ち、口の中に新たな層をつくり出すのです。
まさに“香りのレイヤード”です。シャンパーニュの酸味と土瓶蒸しの出汁、松茸の風味が複雑に絡み合い、時間が経つにつれて香りや味わいが変化し続けます。この繊細な重なりを意識することで、ワインと料理のペアリングが深く楽しめるのです。
このようにハーブやスパイスがひとつまみ加わるだけでも、驚くほど香りのレイヤードが変化し、まるで調香師のように香りの層を楽しむことができます。ぜひ、ご自身でお気に入りの香りのレイヤードを見つけて、ワインと料理のマリアージュをお楽しみください。