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ワインとポテトの起源

土からコンクリート、木からステンレス。これらはワインの発酵熟成槽の進化を象徴しています。現在は木樽やステンレスタンクが主流ですが、かつては粘土でつくられた素焼きの壺が用いられていたようです。

ワインの発祥地「ジョージア」では、いまでも〝クヴェブリ〟と呼ばれる土製の壺を使い、伝統的な製法でワインがつくられています。とくに特徴的なのは、この壺を地中に埋めること。土のなかで、果皮や果肉、果梗(かこう)、種子、果汁を一緒に発酵熟成させることで、低温でゆっくりと時間をかけて進行する発酵プロセスがうまれます。この穏やかな環境が、ぶどう本来の風味を活かし、ナチュラルでフレッシュな味わいを生み出すのです。

一般的な白ワインは果汁のみを発酵させますが、ジョージアの白ワインは赤ワインと同様に、果皮や種子も壺の中で一緒に発酵させます。その結果、アンバー色を帯びた「オレンジワイン」が誕生します。たとえば「シャラウリ・ワイン・セラーズ・ルカツィテリ 2019」は、その色合いやタンニン(渋味)から、「白ワインのようでいて、まるで赤ワインを思わせる不思議な味わい」と形容されるでしょう。

この手間と時間を要する製法は、時代とともに影を潜め、現代的な生産方法に取って代わられました。しかし、2013年にジョージアのワイン製法が「ユネスコ無形文化遺産」に登録されたことで、ふたたび世界中の注目を集めています。

紀元前6000年頃まで遡れるジョージアワインの歴史。同じころ、南アメリカ・アンデス地方ではポテト(じゃがいも)の栽培がはじまっていました。今宵は、静寂に包まれた漆黒の空間で、太古の叡智に思いを馳せながら、これらの産物が織り成すマリアージュを心ゆくまで楽しんでいます。

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