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人生最高の食事

今までの人生で一番美味しかった料理は何ですか?

時々そんな話題になることがあると思います。答えは「お母さんの作ったカレー」だったり、「久しぶりに日本に帰って食べたお寿司」だったり、「急に吹雪に襲われ、体が冷えきった中ようやくたどり着いた店で食べたラーメン」だったり、「長く苦しい断食修行の後振る舞ってもらった乳粥」だったり・・。

料理そのものだけ、というよりも、その料理にありつくまでの過程や作ってくれた人、それを食べた時の状況っていうのもすごく加味されていると思われます。

私が今まででああ良かったなあ、と今でも楽しく思い返す人生最高、究極の料理は、断然旅や結婚式のものが多いかも。

旅という非日常の場で巡りあう異国の食べ物はそれだけでもテンションあがりますし、友人の結婚という幸せで感動的な状況で、とっても美味しいものをみんなとワイワイ食べるのは、空腹は最高のスパイスなんていう状況を作らずとも、全てが総合的に幸せな状態でやはり最高の思い出になるんでしょうかね。

そんな中で、全ての幸せ条件が最高に揃った、人生最高の食事として一番最初に思い出すのは、ミラノ在住のイタリア人の親友Bちゃんに呼ばれていった、イタリアでの結婚式の食事かも。

学生時代、ニューヨークでのインターンシップで知り合ったBちゃん。一緒にいた時間はすごく短かかったのに、双子と言われるほと気が合ってベッタリいつも一緒だった友の結婚だったこと、

付き合い始めたころ、その経緯を10ページの手紙に書いて送ってくれた相手と付き合って10年でとうとう結婚のはこびとなり、双子としては感慨もひとしお、

式はミラノではなく、トッレペリーチェという山の中の小さな村にある、イタリアでは珍しいプロテスタント系である彼女の教会で行われたため旅のスペシャル感満載、

さらに式では私は音楽担当として、彼女の幼なじみが弾くパイプオルガンと一緒にフルートを演奏、それに合わせて友人がバージンロードを歩き、演奏するほうも歩くほうも涙目、

と式自体も夢のような状況だった上に、その後の披露宴のために行ったレストランが、追い打ちをかけるように、この村があるピエモンテ地方の料理を出す恐ろしく素晴らしいところでありました。

まずは入り口近辺にぎゅうぎゅう詰めになって、みんなでワーキャーとオードブルを頂いております。

食べ物にたどり着く間にも、老若男女、何人もの人から声をかけていただきました。「あなたが日本人の友達のまりちゃんね!Bからもう色んな話を聞いてるよ」「フルート良かったよ」と本当にびっくりするぐらい、色んな人が私のことを知っていて、驚きました。でもそれだけ、普段から友人が私のことを周囲の人にわーわー言ってたんだな、と思うとすごく嬉しかったです。

そして、もうすんばらしいお食事のオンパレードです。ちゃーんとメニューを持って帰ってきたので、後で詳細を調べられたぞ!

Insalata di Erbe di Campo, Mele Golden, Funghi Porcini all’Olio di Noci

野生のハーブ、りんご、ポルチーニ茸のサラダ、くるみオイル

Sformatino di Erbe di Campo e Petali di Topinanbour alla Fonduta Dolce di Toma d’Alpeggio

いわゆる「フラン」です。中はハーブ、かな。ちなみに上に載ってるスライスは、「キクイモ」です。

Cipolla Cotta nel Sale Farcita ai Tre Arrosti ed Amaretti

この玉葱が・・・・今回の料理のなかでも、このシンプルなやつが、うおーーーー!という位深くて美味しかったです。アマレッティというクッキーを砕いたやつがまぶしてあります。アマレッティは良くカボチャをラビオリにする時にも粉にしていれますが、これが風味を増している・・・!

Raviolini di Guinca e Punte di Ortica al Timo Serpillo di Montagna

ラビオリのちっちゃいの。中に入ってるのは、メニューがイタリア語なので、もちろん何だかよくわからない。周囲の人に聞いても、「イタリア語でもよくわからない」・・でも突然だれかが、これは英語で「Poison Ivy」だよきっと!とな。えー!!山の中で、間違って触っちゃうとかぶれたり痒くなったりするアレですか!

実際は、Poison Ivyじゃなくて、Stinging nettle(イラクサ)のようです。でもこれも、ヘタに皮膚にさわると痛くなったりして大変らしい!触って毒になるものも、料理しちゃえば美味しいのね。タイムも入ってます。Guincaはたぶん何かのお肉なんだけど、なんだろう。

Cosciotto di Agnello cotto el Fieno Maggengo 

Patate arrostite alla Cenere

羊さんの足を牧草で包んで焼いたもの。野性味たっぷりなお味です。でもこのお肉が来るころにはお腹がいっぱいで、最後まで食べきれなかった。

でも最後の最後にこれです!どーん!

ピエモンテ産のチーズプレート!!!!!テーブルいっぱいに並べられたチーズの数々。新郎君のお父さんがチーズ大好きで、披露宴のディナーにはぜったいチーズ欲しい!というリクエストを出したんだそうです。新郎パパ、ありがとう!!!!

なんですかこのワラみたいな、草みたいなのに包まれたのは!

どれが何の種類なんだかはよくわからないまま全部いただいちゃいましたが、臭いのあり、強いのあり、優しいのあり。強すぎるのは、はちみつで中和していただきます。

いただいたワインはこちら。

この他に、Moscato d’Asti Az. Agr. Mustela 2008, Brut Arturo Bersano Riserva 2007

ウェディングケーキはミルフィーユ!後で聞いたところによると、実はこのケーキ、注文とは違うものだったんだそうですが、いや奥さん、今まで行った結婚式で食べたケーキの中で、一番美味しかった!!お腹いっぱいだったのに、おかわりしたい位。

そして新郎新婦がテーブルをまわって、砂糖がけのアーモンドを配ります。

もうこの時点でお腹ぱんぱん。最後にまた出てきたこんなデザート・・・一個も食べられませんでした。もう何年もたっているのに、今でもこれを見るたび後悔します(苦笑)

そして、披露宴で座ったテーブルで一番輝いていた(?!)のは一緒に行った旦那かも。よく喋るし、背はそこらへんのイタリア人より高いし、声はでかいし、ジェスチャーはイタリア人以上に大げさだし、そして酒にも強い。

そして歴史オタクなので、ヨーロッパの歴史にそれはそれは詳しく、さらに映画オタクなのでイタリア映画にも詳しく、話は盛り上がりまくる。

イタリア人にとっても、旦那はイタリア人が想像するアジア人のステレオタイプから完全にかけ離れているものだから、面白かったみたい。なんだかみんなの注目の的、話題の中心になってました(苦笑)。

学生時代にも思ったのだけれど、イタリア人と話していると、結構歴史とか政治の話が普通に出てくるような気がする。といって、知識をひけらかすためという感じの話し方ではなくて、本当にさらっと普通に当たり前に出てくる。そしてその話が面白い。

歴史が長いだけ、それが普通の知識としてあったり、そしてその存在がもっと近いのかも。披露宴のテーブルでは、ずっとそんな話が繰り広げられていました。

宴もたけなわ。ダンスも何もない披露宴ではありましたが、最後には新郎新婦からみんなへ感謝の言葉あり、それを皮切りに色んな人がかってに演説をはじめ、「バーチョ!バーチョ!(キスしろ!)」の大合唱あり、みんなワインでほろ酔い気分で、楽しくあったかく、そしてなにより美味しかった披露宴でした。お客さんが帰り始めた頃にはとっぷり日も暮れ。ようやくBと話し込む時間もでき。

最後の最後にお開きになった後には、お疲れの新郎新婦はそっとしておいて、若いもんでまた飲みにいきました。あれだけ飲んだ後で、さらに1リットルのビールを空けた旦那。さらにみんなから面白がられていました。

自分が生きてきた時間の中で出会ってきた人達が一同に会することなんて、まず結婚式と葬式ぐらいしかないと思いますが(笑)、その中でも結婚式という幸せな状況をこんな素敵な異国の地の、暖かい人達と一緒に、暖かい気持ちで迎えられただけで、美味しいご飯がさらにうまくなる。

後で調べたら、このレストランはリストランテ・フリポーというミシュラン2つ星獲得のレストランだったようです。でもあの状況なくして、同じところにいって同じものを食べても、きっとあの時と同じ感動は無いかもなあ。

実際、このレストランはまだトッレペリーチェにあるようですが、シェフが燃え尽きてしまったらしく、違う人の手に移ってしまったようです。というわけで、行った所でもう同じ味には会えないんだな。今はもう、全てが美しい記憶の中に。

って、単なる美味しいもの食べた自慢(しかも子供が生まれる前、随分昔に!)みたいになっちゃいましたが、ちょいと自慢でした(苦笑)。

でもこの経験は、今年の夏、素人ながら、高級レストランの厨房に潜入してみたい、という夢が始まるすごく小さな小さな導入部にもなったものでした。ということで、そんな話の続きはまた今度。

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