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政治家と食べ物

ワシントンDCに住んでいた時、家の近所のタイ料理屋さんのウィンドウにこんな内容の雑誌記事の切り抜きが貼ってありました。

トム・ダシュル上院議員の好物はタイ料理。甘い、辛い、しょっぱいなど色々な味が混ざっているのが好き。一方トレント・ロット上院議員は色々な味が混じるのは嫌い。違う味の食べ物同士が触れないよう細心の注意を払う。いわば食べ物隔離主義者(Food segregationist)。

私が住んでいた頃のDCはブッシュ政権。民主党のダシュルさん、共和党のロットさんは上院で自分の党の議員の票をまとめる院内総務、ウィップ(Whip)をそれぞれやっていました。

House of Cardsをご覧の皆さんには、主人公のフランク・アンダーウッドがシリーズ開始当初、この役割を下院でやってたといえばおわかりでしょうか。

(www.wbur.orgより)

与党、野党の院内総務といういわば対極にあったこの2人。食べ物の好みも対極にあり、なんだかそれだけで人柄がわかるようで興味深いなあと思って見てたんですが、当時ロットさん、過去の人種隔離政策を容認するような発言をして物議をかもし、院内総務を辞任する騒ぎになっていたのでした。

以前、私のひいひいじいさんがホワイトハウスの晩餐会に行った話を書いた時、当時大統領だったブキャナン大統領の好物を調べたことがありました。

その時思ったのは、大統領の好物として伝えられているものは半分本当、でも半分は大統領の人柄や功績を揶揄したものだったんじゃないかなーということ。

ロット議員の食べ物隔離主義の話も、ちょっと出来すぎた話に聞こえるし、半分冗談だったのかもしれません。

でも政治家と食、ちょっと興味深い。オバマ大統領は結構健康には気を使っているようで、おやつはフルーツやナッツだったり、晩餐会で炭水化物を断ってる写真なんかもあったり。結構ストイックな食生活は、当初黒人層に受けないんじゃないかという危惧もあったそうです。ミシェルさんは学校給食を健康的なものに変えよう、という取り組みをやったりしています。

そうなると気になるのはやっぱり・・・この2人、何食べてるのか。

トランプの場合

まず手始めにこのおっさん。全てがクラシックな成金風趣味を彷彿とさせるこの人、やっぱり高級ワインとかキャビアとか贅沢三昧なのが好きなんじゃないのー、と勝手に思ってたのですが、

好きなものはマクド。

あとケンタ。

とにかくファストフードが好きらしい、という話ばかり出てきます。

その他に好きなものは、

・朝ごはんは嫌いだが、食べるならベーコンと卵、またはコーンフレーク。

・中までしっかり火が通ったステーキ。皿の上でカチカチになってるのがいい。

・ママのレシピのミートローフを使ったサンドイッチ。

・野菜?なにそれ?

で、特にランチは自分のデスクでものすごい速さでかき込むんだそうです。早い、安い、うまい、実は味はどうでもいい?特に健康には気を使ってない風の、体重107キロのおっさんです(その割に自分のデブを棚に上げて他の人をデブ攻撃したりもしている)。

まあファストフード好きというところで庶民的なところをアピールしている部分も多少あるのかもしれません。マクドで好きなメニューは何か聞かれて「フィッシュ・デライト」と、フィレオフィッシュを間違えて言ったりしてるし。

でもまあ、とにかく食事に時間をかけるのが嫌らしい。

スピードを大事にするビジネスマインドといえばそれまでですが、将来中国首脳が来た場合も、豪華な晩餐会など無し無し、ミーティングのテーブルにビッグマックでも出してちゃっちゃと食べてちゃっちゃと話し合いだ!なんてことを言っていました*

あれだけ敵対的なこと言ってる相手にさらにそんなことしたら、まとまる話もまとまらなそう。

ああいう性格なのも、ファストフード的なものばかり食べていて、栄養に偏りがあるからなんじゃないかという気がしてきます。

ファストフードが好きなのは、早いからだけじゃなくて、彼が人と握手もしたくないほど潔癖症だから*、っていう理由もあるらしい。

全国的なファストフードチェーンは食中毒が出たらそれでビジネスが一巻の終わりになるから、衛生には十分に注意しているに違いない、というロジックらしい(まあ、そうともいえないですけどね・・)。ステーキが硬くなるまで火を通すのもそんな理由から。

以前、ニューヨークでサラ・ペイリンとピザを食べている様子が報道された時も、こいつピザを手じゃなくてフォークとナイフで食べてる!とか(上のKFCもフォークとナイフを使ってる)、1980年以来、このおっさんが手づかみで何か食べているのは目撃されていない、とか彼の変なコダワリが話題になったこともありました。

でも潔癖症な割に、9月には、FDA(アメリカ食品医薬品局)が作った食の安全規制を緩和しちゃる!と発表して、世間をはぁ?と呆れさせてもいます。

2010年、サルモネラやリステリアによる食品汚染が続いたため、農業に使う水の安全性の確認とか、食品加工の衛生に関するトレーニングとか、工場の検査をきちんとしましょう、っていう法ができたんですが、このおっさんはFDAを「フードポリス」と呼び、アメリカの農家が食べ物をどう作るか、ドッグフードの栄養素がどうあるべきかまでガタガタいいやがって!といちゃもんをつけた模様*

でもその後、この案は彼のサイトから削除されたりと、迷走中。

まあ食べ物に興味のある人じゃないのは明らかですね。シンコ・デ・マヨというメキシコのお祭りの日には、「トランプタワーグリルのタコボウルが一番。ヒスパニック大好き!」ってツイートしてこれまた失笑を買っておりました。

失笑の理由は色々あるんですけど(あるはずの野菜の姿が見えないとか、なぜか書類の下に前妻のビキニ写真がチラ見えしているとか)タコボウルって、アメリカ人が考えた、真性メキシコ料理じゃないものを前にヒスパニック大好き!って言ってるところが、何とも・・。

なんだろう、例えばスパゲッティナポリタンとか、食パンの上に溶けるチーズ載せて作ったピザトースト食べながら、イタリア最高!ってドヤ顔で言ってるみたいな気持ち悪さ?

(あと個人的には後ろの引き出しがちょっとあいてるのが気持ち悪い)

また親会社が製造の一部をメキシコでやってるっていうので、オレオ・クッキーは絶対に食べないんだそうです。知るかっ。

そして面白いことに、これだけファストフードラブにも関わらず、マクドや他の食品業界は、従来献金の7割を共和党にしているのに、今回はトランプには献金してないんだそうです*。今回ばかりは勝つ見込みのあるほうにお金をだしてるんじゃないか、という話らしいですが、どうなんでしょう。

ヒラリーの場合

金髪ハゲ隠し野郎のおっさんのほうが色々香ばしくて引っ張ってしまいましたが、一方ヒラリーさんのほうはどうなんでしょうか。

あっちのおっさんほどキーキー食べ物に変なコダワリが無いようで、そこまで色々話題にはなってはいませんが、

・ハンバーガー好き。ホワイトハウス時代は健康に気をつけてBoca Burger(ベジタリアン用のバーガーパテ)を食べていた。

(veganfoodlover.comより)


・ラム好き。

・辛いもの好き。中東系やインド料理も好き。

・上院議員の時は地元ニューヨーク産のリンゴをオフィスに常備

・ダークチョコ

・パンプキンスパイスラテは嫌い*

料理は上手くないけど、やわらかーいスクランブルエッグを作るのは得意なんだそう*。って、彼女のような経歴があっても、やっぱり女性候補だっていうんで、家事の質問が行くところがなんだかなぁという感じではありましたが、ヒラリー、メシマズらしいです。

でもファーストレディの時には、ホワイトハウスでフランス料理ではなく、アメリカの食材を使って、アメリカ人のシェフによるアメリカの伝統料理的なものを出すようにしたりしたそうで、お客様へのオモテナシはバッチリ慣れたもん。

とまあ、なんとなくそこまで面白みのないラインアップではありますが、特筆すべきは辛いものが好きらしいというところ。なんでも唐辛子のカプサイシンが代謝を良くすると聞いてから、もう20年ぐらい、ホットソースを愛用しているらしい。

お気に入りはこれだそうです

オーガニックスーパー、Whole Foodsのオリジナル商品、忍者リスのシラチャソース。なんとこれをかばんに入れて持ち歩いているほど好きらしい!

またホットソースだけじゃなくて、生の唐辛子も毎日バリバリやっちゃったりしているそう…って、おい!

(npr.orgより)

↑ビニール袋の中のものに注目・・・!

でも辛いもののお陰でスタミナがついてるのだとか。そういえばディベートでもトランプのおっさんにスタミナがあるのか疑問だなんて言われてうまいこと切り返してましたが、唐辛子のおかげとは言いませんでしたね…

ここが笑点だったら火が出るような唐辛子食べて大気炎を吐くヒラリーさん、などとうまいこと言ってしまいそうですが、健康に気を使うのは良いんだけど、偽肉のバーガー食べてみたり、辛いものに走ったり、ちょっと極端な方向に行っちゃってると思うのは、私だけ?

(ちなみに夫のビル・クリントンは心臓のバイパス手術をしたりした後、2010年にビーガンに転向してます)

人は歳を取るとどんどん味覚が鈍感になって、濃い味付けに走る傾向にあるとも聞きます。ホットソースばかりかけてたら余計危険な気もしないでもありません。

そう、トランプのオッサンは昭和21年、ヒラリーは22年生まれ…。私の親より歳上だ…!そんな人たちが今後4年間、または8年間、ストレスとプレッシャーいっぱいの仕事につくことになるわけです。

そんな中で御老人がファストフードだ、辛いものだって、聞いてるほうが血管詰まるか頭パチーンなるか胃が痛くなりそう。大丈夫かいな…。

さて、次の候補者ディベートは10月9日日曜日。先週のディベートではトランプの物言いにアレルギー症状を示した地元の友人達は皆一様にテレビを見ながら「酒・・酒・・!」とアルコールに走っていました。

今週火曜日には副大統領候補のディベートもありますよ。こちらも、共和党の候補者マイク・ペンスが美味しいものが山ほどあるニューヨークくんだりで、チェーンのメキシコ料理屋Chilli'sに行っただの、民主党の候補者ティム・ケインの選挙運動中の食べっぷりの良さが話題になったりしております。

どうもフーディーなメディアの人達は民主党に肩入れしてるので、どうしても共和党側の趣味を嘲笑しがちなんですが、ケインさんのメタボ体型もちょっと気になるところ。

投票日まで、あともう数週間。ファストフードか、ホットソースか。食べ物のことだけ考えると、どちらも非常に不安です。苦笑

カバーの写真はWikipediaより。

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