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矛盾はあっても、面白い~『横浜大戦争 明治編 』(蜂須賀敬明)~

*この記事は2020年1月のブログの記事を再構成したものです。


横浜の各区を司る土地神たちが活躍する、『横浜大戦争』の続編を読んでみました。

↑kindle版


今回は保土ケ谷・中・西の3人の土地神が明治時代にタイムスリップし、現代に帰ろうとする過程で事件を解決する話。ちょびっとだけ、ロマンスもあり。文章力も物語の構成力もついたようで、前作より格段に面白いです。ただ相変わらず文法的な間違いは、前作より減ったものの、結構あります。私はハードカバーで読んだのですが、文庫化する時には直さないと、文藝春秋の名が泣くのではと思いました。


あと、1ケ所だけどうしても気になる誤りがあります。本文中に「土地神は人間の行政組織に参加してはいけない」、「公務員に当たる仕事に就くことは禁じられている」という記述があるのですが、神奈川の神は力いっぱい公務員なんですが……。横浜の大神も市役所勤めだし、その矛盾が何かの伏線かと思っていたら、最後までそのままでした。


ま、そんな間違いや矛盾は気にならないくらい(いや、気にしているけど)、面白いです。前作より土地神たちのキャラも立っており、相変わらず人間以上に人間らしく喜怒哀楽を見せています。こんな神様たちに見守られているなら、横浜は大丈夫でしょう。……まぁ時々不安ですが。


今回心に残ったのは、鎌倉の大神の台詞。

人には、あらゆる可能性があるが、誰が、何に適しているかを、一つずつ試していくには、人生はあまりに短い。何かに秀でているはずなのに、つまらぬ罪を重ねたせいで、自分の持ち味に気付けぬまま死んでいくもののなんと多いことか。己を大事にせぬことは、世界への謀反に他ならぬ。

自分に適したことをちゃんと見つけ、それに精進しないとなぁと思いました。


↑文庫版



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