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ネロの幸せ、ローマ市民の幸せ~『プリニウス 第7巻』(ヤマザキマリ、とり・みき)~

*この記事は、2019年4月のブログの記事を再構成したものです。


『プリニウス』第7巻です。

↑kindle版


今巻はローマの大火とプリニウス一行のピラミッド探検の2つが、主なエピソードです。ローマの家族が心配でたまらないフェリクスに対する、プリニウスの台詞が印象的です。

今更焦ったり悔んだりしても意味はない。起こってしまった現実と向き合うのみだ。今から慌ててローマへ帰ったところで、何ができるというのだ…? 生きている者は生きている。死んでしまった者は生き返らない。それだけだ。


正しいし、プリニウスは心底そう思っているのだろうけど、こう言われたフェリクスさんが怒る気持ちも、もちろん分かります。本当はプリニウス自身、間違いなくローマのことが心配だけど、今自分にできること、なすべきことを冷静に見据えているが故の言葉なのでしょう。


ちなみにこの時フェリクスさんがプリニウスに投げつけたお守りを、帰ってきた後に返してもらったからこそ、8巻でそれが役に立つわけですね。今、最新刊から遡って読むという妙なことをやっているのですが、それだからこそ分かります。遡って読むのは、伏線の存在に気づけるという意味で、時にやってみると面白いです。


それにしても、自分の幸せがローマ市民の幸せだと信じて疑わないネロが、恐ろしいです。帯には、「見よ、私のローマが燃えている。」とありますが、あんたのローマじゃない、と言いたくなります。

加えて、どんどん情緒不安定になっているし。「十三人の刺客」のお殿様もそうだけど、周りの者が、もっと早い段階で止めれば、不幸になる民衆が少しは少なかったはずなのに……。



見出し画像には、恐らくフォロロマーノ(古代ローマの中心部)のものと思われる写真を使わせていただきました。


↑コミック版



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