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圧倒的な筆力~『火の路 上』(松本清張)~

*この記事は、2020年6月のブログの記事を再構成したものです。


恐らく私にとって初の、松本清張作品だと思います。



まず驚いたのは、時代性。1973年から翌年にかけて「朝日新聞」に連載していたので、女性への認識が低いのは仕方がないですが、それにしてもすごい。タートルネックにパンツ、ハーフコートで髪の毛を結ばずに下ろしている30過ぎの女性は、若作りで埃っぽいらしいです(^-^;


なお下巻の解題で、ヒロインにはモデルがいたことが判明しました。取材に協力してくれた上、特に外見についてはほぼそのままらしいその女性に対し、あまりに失礼な描写ですよね(-_-;)


まぁ女性一人で国内だけでなく、なんとイランにまで旅しようというのだから、当時としてはだいぶ画期的な女性を描いたつもりなのだとは思います。


そして延々と続く、学問の世界のどろどろぶりの暴露。また、飛鳥時代の石造物に対する松本清張の洞察を、ヒロインの論文という形で盛り込んでいるのですが、内容としては面白いものの、それ、もう少し証拠を盛り込まないと、論文じゃなくて、ただの推測ですから……。


新聞への連載小説なので、大筋はともかく、細部は書きながら展開を決めていったと思われます。論文の引用が延々と続き、読者がダレることを危惧してか、唐突に主人公の過去の恋愛の話が入るところも謎。


でも、なんともいえない魅力を感じ、読んでしまうんだなー。上巻だけで、483ページもあるのに。これが筆力というものでしょう。


見出し画像には、ヒロインにちなんでタートルネックの女性のイラストを使わせていただきました。ヒロインよりずっと、おしゃれな感じですが。





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